第2-2話「ヴァンパイア」




『いいか、魂魄融合とはテメェ自身を魂魄化することを指す』


 スターウルフに変身したユウは人気のない山奥に篭もって訓練を開始した。

 ウォルフの解説を頭で直接聞き、実践していくことで戦い方、魂魄融合した自分の身体の使い方を理解していく。


『本来なら魂魄だけの状態になった人間はテメェの夢の中のような姿になっちまう。だがオレがテメェの魂魄を固定してるから人の姿でいられる』


 魂魄とは本来固定されない姿で異空間を彷徨う不安定なものだ。それを魂魄として安定しているアグレッサーと魂魄融合をすることで人間としての形を成り立たせる。

 そしてアグレッサーと魂魄融合することで、人間としては有り得ないほどの地力を生み出す。それは走っただけで時速80kmで走る車を追い抜き、少し跳躍しただけで高層ビルを飛び越えたり、大型のトラックを持ち上げることができるようになる。

 それ以上にアグレッサーと魂魄融合をすることには意味がある。


『テメェの付けてるグローブやブーツはオレの肉体だ。テメェが武器や道具をイメージすることでオレが具現化させてやる』


 魂魄融合をすることはアグレッサーと完全に融合したことを意味する。つまりユウが考えていることをウォルフは受け取ることが出来る。宇宙遠足のとき、ユウのブーツがジェット機になったのもその力を使ったものだ。


『さぁ、何か武器をイメージしろ』

「武器って言っても……、んー、そうだなぁ……」


 ユウは言われて何か武器をイメージしてみる。

 小学生としてのユウにとって、武器とはかっこよさだ。スタイリッシュに、スピーディな武器。刀や拳銃、ライフルと色々イメージできるが、ユウがやってみたいと思う武器は一つだ。


『ちなみに一個武器を作ればそれは解除できねぇ。そして今はその武器しか使えねぇ』

「え!?」


 ユウが武器をイメージし終えた頃にウォルフが唐突にいう。

 もう既に武器はユウのイメージした武器に変化していた。


「ちょっ、もうちょっと早く言わない? もうこれで固定ってことでしょ?」

『テメェが早すぎんだよ、実行が。人の話を最後まで聞かねぇからそうなる』

「いつもはウォルフが急かすのに早すぎるって言われた……」


 立場が逆転するこの事態を若干落ち込みながら自分がイメージした通りの武器が変化してるのを確認する。

 アニメやドラマでこういう武器で敵を相殺する。そんなイメージで作った《それ》だったが、満足な出来だろう。


「それってさ、ブーツの変化もできないってこと?」

『そうだ。前にジェット機で固定されてる』

「まああの時は必要だったから仕方ないけど……、なんか釈然としないなぁ……。でもって言ったよね」


 ユウはウォルフの放った僅かな言葉を拾って問いかけてみる。

 ウォルフはその問に応えようとしたその時であった。突如背後からドサッという鈍い音が響き、ユウはこたえを聞く前に視線を背後に向けた。

 そこには黒いゴスロリの衣装を纏った、赤い瞳の白銀の長い髪の少女が立っていた。その少女は外見の特徴に加えて、何か視線を引く不思議な力を持っている。ユウも不思議とその姿に見とれていた。


「主はまだ弱すぎるのじゃ」


 少女は見た目とは相反する言葉遣いで告げた。


「君は……」

『ヴァンパイア。アグレッサーの総統だ』

「ヴァンパイア!?」


 ユウが少女に問いかけようと口にした言葉に、頭の中のウォルフがそう答えた。目を丸くしてユウは少女を見つめる。

 ヴァンパイアといえば有名なモンスター、吸血鬼で知られている名前だ。まさかそれが実在していたなどとは思わないが、同じ名前で何か不気味さを感じずにはいられない。


「総統といっても、ワシが一番長寿で頼られるだけなのじゃがな。それに、アグレッサーの本当の意味で総統と名付けるなら《あやつ》じゃろう」

『だが《あの方》と交信できるのはテメェだけだ』

「あの方って?」


 ユウはもう何がなんだか分からないといった表情でヴァンパイアを見つめて回答を求める。ウォルフであれば答えることに渋り出しているところだ。しかし、目の前のヴァンパイアは渋る様子もなく答えていく。


「ウォルフを含むアグレッサーが《あの方》と呼ぶ存在は、ワシらアグレッサーの神と崇める龍王のことじゃ」


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