第43話

「御子さん、今日はやめましょう! ここはいつもの俺のアパートの部屋じゃないんですから!」


「えぇ~じゃあ、私はどうすれば良いのよ~折角スイッチ入ったのにぃ~」


「そんなの知りません! とにかく、俺は下に行きます」


 俺はそう言って、御子さんを押しのけ立ち上がる。

 すると、御子さんはまたしても不満そうに頬を膨らませ俺に言う。


「ぶー……だから帰ってきたく無かったのにぃ……」


 俺はそんな御子さんをスルーし一階のリビングに戻る。


「御子は寝ただろうか?」


「はい、ぐっすりです」


 本当はまだまだ元気そうだけど……。


「そうか、岬君ももう眠るかい? 疲れたうえに酔いも回ってきただろう」


「そうですね、自分は何所で寝れば良いでしょうか?」


「あぁ、それなら御子の部屋に布団を敷かせてあるから、そこで寝てくれ。元々同棲しているのだから、問題は無いだろう?」


 マジか……。

 いや、あの状態の御子さんが居る部屋で眠れと?!

 いやいや、絶対に襲われるじゃないですか!

 勘弁してくれよ!

 てか、布団なんて敷かれて無かったぞ!!

 俺がそんな事を考えていると、御子さんの両親は何やら外出の準備を始める。


「お出かけですか?」


「あぁ、初詣にね。すまないが御子をお願いできるかい?」


「は、はい大丈夫です。お、お気を付けて……」


「ありがとう、歩いて行ってくるから、帰りは少し遅いかもしれない。明日は午後から出かけよう、観光地でも案内するよ」


「あ、ありがとうございます」


 そう言って御子さんの両親は、家を後にした。

 御子さんの両親が家を出た瞬間、俺はなんだか悪寒のようなものを感じ、ブルッと身震いをする。


「こ、これは……非常にまずい……」


 とりあえず、俺はシャワーを借りる事にした。

 さっぱりした後で、この後の事を考えようと俺は風呂場に向かい、シャワーを浴びる。

 御子さんはもう寝ただろうか?

 そうであれば、こちらも落ち着いて眠れるのだが……。

 今日は移動したり、御子さんの両親と対面したりと、色々と疲れてしまった。

 正直このまま眠りたい。

 俺はそんな事を考えながら、着替えをし、恐る恐る御子さんの部屋に向かい、ドアを開ける。


「み、御子さ~ん?」


「………」


 良かった、布団を被ってぐっすり眠っている。

 よく見ると、俺の布団らしき物が、部屋の隅に積んであった。

 俺は布団をベッドの下に敷き、布団に入る。

 今日はゆっくり眠りたいのだ、御子さんの相手なんてとても……。

 なんて考えていると、布団の上に何かが乗ってきた。

 嫌な予感がした俺は、寝たふりを決行する。


「ん~、何寝たふりしてるのよ~」


「ぐーぐー」


「寝てる人は、そんなハッキリぐーぐー言いません~」


「いや、マジで勘弁して下さいよ……俺は今日は疲れてるんですから……」


「じゃあ、次郎君は寝てれば良いから~」


「そう言う意味では無く……はぁ……なんか御子さん、最近求めすぎじゃないですか?」


「嫌?」


「いや……そう言う訳では無いですけど……」


「じゃあ、良いじゃ無い……」


 御子さんはそう言って、俺の布団に潜り混む。

 俺の背中に手を回し、体に抱きつき、何やらもぞもぞやっている。


「あ、制服着てあげようか?」


「……お願いします……」


「ウフフ、次郎君のエッチ……」


「うるさいですよ」


 最近俺と御子さんは、こんなんばっかりな気がする。

 そう思いながら、俺は御子さんと体を重ねる。

 他のカップルは知らないが、俺と御子さんは色々とやり過ぎな気がする……。





 翌日、俺は十時頃に目が覚めた。

 隣では御子さんがいつものように、気持ちよさそうな寝息を立てて眠っている。

 しかし、いつもと違う事もある。

 ここが御子さんの実家だと言う事だ。

 俺は目を覚まし、御子さんを起こす。


「御子さん、起きて下さい」


「ん……もう…朝?」


「はい、いい加減起きましょう」


「ん~……おはようの……」


「はいはい」


 俺は御子さんの言いたい事を察し、先手を打つ。

 すると御子さんは、冷水でも顔にかけられたように驚き、目を見開く。


「あれ? 違いました?」


「……ちがくない……」


「じゃあ、起きて下さい」


 御子さんは顔を真っ赤にし、俺をジーッと見つめる。


「何ですか?」


「……なんか負けた気がする…」


 そんあ御子さんの髪を撫で、俺は布団から立ち上がる。


「あ……そう言えばなんて言って、制服洗って貰おう……」


「あ……」


 御子さんは昨日の夜着た、高校時代の制服を見ながら呟く。

 確かに何に使ったかなんて言えない……。

 

「あ、そう言えば御子さん」


「ん? どうかした?」


「あけましておめでとうございます」


「あ、そう言えば年明けたのね、うんあけおめ」


「随分あっさりした新年の挨拶ですね」


 俺と御子さんは着替えを済ませ、一階のリビングに下りていく。

 リビングでは、御子さんの両親が優雅にソファーに座っておせち料理を食べていた。


「やぁ、おはよう。昨日はぐっすり眠れたかい?」


「は、はい」


 まぁ、ぐっすりと言えばぐっすり寝れただろう……。

 俺は昨日の夜の事を思い出しながら、歯切れ悪くそう答える。


「あ、そういえば、明けましておめでとうございます」


「うむ、おめでとう」


 新年の挨拶もすませ、俺もソファーに座る。

 御子さんはも俺の隣に座る。


「はい、口に合えば良いけど」


「いえ、こんな立派なおせち始めてです。ごちそうになります」


 俺は御子さんのお母さんがつくってくれたおせちを食べる。

 どこかで買ってきたのかと言うほど、先輩のお母さんのおせちは美味しかった。

 俺がおせちに夢中になっていると、御子さんのお母さんが御子さんに何やら耳打ちをして隣の部屋に連れて行く。


「ところで、岬君は初詣に行くのかい?」


「はい、午前中のうちに行ってきたいと思ってます。御子さんとも話してました」


「そうか……ならこの近くの神社に行くと良い。出店も出ていて賑やかだよ。午後からは観光地を案内しよう」


「はい、ありがとうございます。コレを食べたら行ってきます」


 俺が御子さんのお父さんとそんな話しをしていると、隣の部屋から御子さんと御子さんのお母さんが戻ってきた。

 

「あ、御子さん、コレを食べたら初詣……」


 俺は言いながら御子さんを見て驚いた。

 そこには着物姿の綺麗な御子さんがいた。

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