第24話
入学式の後は大変だった。
色々なサークルの勧誘を受け、校門を出るのにかなり時間が掛かった。
大学は高校なんかと違って、友人を作るのも大変そうだ。
やっぱりサークルなんかに入って、その中で友達を作りたい。
しかしながら、どのサークルが良いかなんて、俺にはわからない。
とりあえずビラを大量に貰っては来たが、正直書いている内容に大差は無い。
「明るく楽しい!」だの「みんな仲良し」だのと楽しげなフレーズがそこには色々と書いてあった。
「はぁ~どうすっかな~」
まぁ、まだ入学したばっかりだし、そこまで不安になる心配も無いかな?
別にコミュ障という訳でもないが、そこまで積極的に話し掛けに行くタイプでも無い俺は、とりあえずは大学生活と一人暮らしに慣れるようにしようと決めた。
想像通り、友人なんてものは直ぐ出来た。
まぁ、運も良かったのかも知れない。
偶々、校内で教室の場所を聞かれ、俺と行く教室が同じだったから、流れで一緒に行き仲良くなった。
友人が出来ると、後は連鎖的に友人は自然に増えていった。
最初に出来た友人は、俺と違ってまさに大学生と言った感じだった。
髪は茶髪に、耳にはピアス。
顔立ちも整っていて、そのうえ中々に性格が良いと来た。
そんな友人の安岡博男(やすおかひろお)と、俺はなんだかんだで大学では一緒に居る事がほとんどになった。
「んで、次郎はサークル何所入るか決めたの?」
「んあ? まだだけど」
食堂で飯を食いながら、俺と博男はサークルの話しをしていた。
入る入らない自由だが、勉強だけのキャンパスライフと言うのもつまらない。
「そう言う、博男は勧誘されまくりだろ? イケメンだし、イケメンだし……あぁ、死ねば良い」
「出会って間もないのに、そこまで言うか? まぁ、でも確かにコンパだけでもって言われたとこは多いな~」
「ほらな」
「でも、お前も込みでって言われたとこも多かったぞ?」
「は? なんでだよ?」
「お前もそれなりの顔って事だろ?」
「いやいや博男さん、冗談でも笑え無いっす」
そんな話しをしながら、二人揃って昼食を食べていると一人の女性が俺と博男の席にやってきた。
女性は恐らく俺たちよりも年上だろう、髪は茶色で化粧はバッチリ、おまけに結構な美人ときたら、食堂の人間の視線は自然と彼女に向く。
「ねぇ、そこのホモのお二人さん」
「開口一番から失礼ですね……」
「次郎、知り合いか?」
「こんな口の悪い人と知り合った記憶は無い」
第一声から失礼な人だ。
正直第一印象はあまり好ましくない。
こんな人が一体俺たちに何の用だろうか?
「あはは、ごめんごめん。私は三年の片岡優(かたおかゆう)よ。君たち勧誘に来たのよ」
「はぁ……勧誘ってサークルですか?」
「そうよ! 喜べこのホモ共! お前らはこの大学でも一番人気のサークル、温泉
サークルの入会が認められた選ばれた人間だぁ!」
「博男、食い終わったなら早くこの人から離れよう、危ない人だ」
「だな」
「あ! ちょっと待ってよ! 先輩の話は最後まで聞きなさい!」
「初対面の相手をいきなりホモ扱いしてくる先輩とは、仲良く出来そうにありません」
「同意」
そう言って、俺と博男は先輩から逃げるように次の授業の教室に向かった。
「お、覚えてなさいよぉぉ!」
後ろでそう叫ぶ先輩に、俺は思わず悪役かよと思ってしまった。
「なんだったんだろうな?」
「さぁ? んなことより、早く行こうぜ」
俺たちは次の授業に向かった。
その授業には、他の友人もちらほら居たので、話しの種に食堂での出来事を話した。
「はぁ?! 温泉サークル! お前らのとこに!?」
「あぁ、なんか変な先輩だった」
「だよなぁ~、次郎の言うとおり変な人だったわ」
「いやいや! お前ら、なんで入らないんだよ!」
「「は?」」
友人の言葉に、俺と博男は思わず間抜けな声を出す。
友人は友人で、なんだか興奮しながら説明を始めた。
「良いか! 温泉サークルって言えば、この学校の美女が多く入会していると言われるサークルなんだぞ! しかも、男の方もかなりのイケメンしか入会を許されないんだ! その勧誘をお前らは……なんてもったいない!」
そうは言われても、俺と博男はそんなサークルに興味は無い。
正直普通にサークル活動が出来ればそれで良い。
「そうは言ってもなぁ~、博男は興味あるか?」
「うーん、温泉なら好きだな」
「まぁ、俺もそうだな」
「でも、あんな変人っぽい先輩の居るサークルは遠慮したい」
「同感」
俺と博男は、そんな話し授業中も続けていた。
温泉自体は俺も博男も好きだが、開口一番で人をホモ扱いしてくるような人とは、サークル活動をしたくない。
今後はあの人を見かけても逃げるようにしよう。
そう話しながら、教室を出て帰宅しようとしていた時だった。
「確保!」
「「了解!!」」
校内を歩いていた、俺と博男を四人の男女が襲った。
「な、なんだぁ!?」
「いて! おい! 離せ!!」
俺と博男は、袋に入れられそのままどこかに運ばれた。
男女の風貌は普通の学生だったので、別に何か犯罪的な物では無いだろうと思っていたのだが、それでも急に拉致られたのだ、普通に恐い。
数分後、俺と博男はどこかの部屋に連れてこられた。
そして、そこには昼間のあの可笑しな先輩、片岡優先輩がパイプ椅子に座って腕を組んでいた。
「昼間は良くも逃げてくれたわね~」
「だからってここまでします?」
「本当だよ……」
俺と博男が呆れて居る中、俺と博男をここまで連れて来た男女四人は、笑いながら俺たちを見ていた。
「諦めな、新入生。片岡に目を付けられたら最後、地獄のそこまで追いかけてくるぞ?」
「そうよ、諦めてサークルに入る事をお勧めするわ。悪いようにはしないし」
「にしても、どっちも可愛いわね~、お姉さんと混浴しない?」
「やめろアホ」
恐らく全員サークルのメンバーなのだろう、確かに三人はイケメンに美女なのだが、最後の人は何というか……俺と同じく普通な感じの人だった。
「君、今俺の事だけこの中で浮いてるって思ったろ?」
この人はエスパーか?!
「い、いえ…そんな事は……」
「わかってるんだよぉ!! 俺は、こいつらと一緒に居なければ、普通の大学生なんだ! なのに……なのに!! こいつらみたいな無駄にイケメン、無駄に美女な奴らと一緒に居るから浮くんだよ! 俺だって知ってるよ! 自分がイケメンじゃないって! でも、やめろよ! そのなんでお前はここに居るの? 見たいな不思議な視線!!」
普通の先輩も色々と大変なようだ。
後で、ちゃんと謝ろう……。
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