第2話 天使ですか? 天使ですね。わかります。
チャプン、と温かい液体がかけられる。
「ふぁぁぁぁ、気持ちいいぃぃぃ」
気の抜けるような快楽。
熱すぎず、ぬるすぎず心地好い温度のお湯。鼻孔をくすぐる甘い花の香り。
背中に触れるぽよんとした程好い弾力……ぽよん?
「んなっ?!」
開いたら目に飛び込んできたのは、美少女のドアップ。
唇に触れてしまいそうなほど近くに……いや、正確には抱き抱えられるようにして、風呂に入れられていた。
そーっと視線を下に移すと、そこには形の良い双丘が。
――プッ
自分の顔面から赤い液体が噴出するのを視界に写しながら、俺の意識は再び飛んだ。
「………はっ!」
気が付くと、白いもこもこした布に包まれていた。温い。
何だ、先ほどのは夢か。そうだよな。
いやしかし、何だかとても良いものを見たような。
そんなことを考えていると、布がもそもそと動く。
俺の身体をやわやわと撫でるように。
顔を覆っていた布がずれると、そこには優しく微笑む美少女がいた。
濡れたように輝くプラチナブロンドの髪。
白いゆったりとした布を巻きつけたような、古代ローマ人を思わせるデザインの服。
俺と視線を合わせるように屈んだ少女は、体型に似合わないたわわなメロンが丸見えで。
天使ですか? 天使ですね。わかります。
生まれて初めて見る母親以外の女性の裸体。しかも美少女。
これ何のご褒美ですか?
懸命に俺の身体を拭く度に揺れる、綺麗な双丘。
ガン見せずにはいられないよね。うん、俺は悪くない。
タラ、と鼻から何かが垂れる感触がするけど、魅惑のメロンから目が離せない。
「аХωφωπЁЛρ?!」
は? 何て?
外見からして外国人だろうなぁ、とは思ったけど少女の言葉がさっぱりわからない。
慌てた様子で俺の顔に布を押し当てるもんだから、至福のメロンは隠されてしまった。
グゥゥゥゥゥゥ……
メロンが隠されてしまった途端、俺の腹が盛大に鳴る。
そういや、起きてから何も食べてないなぁ。
胃液まで全部吐いてしまったし。
と、先ほどの紫色の芋虫が思い出してまた胃液が逆流してくる。
もはや軽くトラウマレベルである。
「!! ШЭРПФΨΚΚヱζ!」
メロンちゃん、もとい天使は慌てた様子でパタパタとどこかへ行ってしまった。
急に一人になってしまったことに寂しさを覚えながら、しつこくグキュルルルと主張するこの空腹をどうするかとぼんやり考えていると。
蓋付きの木の器を抱えた天使がパタパタと戻ってきた。
菜箸のような二本の長い棒も持っている。
「おおっ!? 俺様の食事を用意してくれたのか。なかなか殊勝な心がけである」
俺の目の前に器を置くと、天使が器の中身を箸で掴み上げる。
「え、ちょ、まさか、それを食べろとか言わないよね?」
「?? ……ЭРПФΨ♪」
ニコニコと天使が俺の口元に持ってきた物。
それはどう見ても――
ごきげんよう、
おひさしぶりね。
できればお会いしたくなかったわ……――
意識が遠のきかける俺の口に、わさわさと動くそれ――口にするのもおぞましい――を口元に運ぼうとする天使。
「や、やめぬか! それは断じて食べ物ではない!」
だから、それを俺の口に入れようとするのをやめてくれ!
「ЭРПФΨ♪」
だんだん近づくそれが口の中に入らないよう口を慌てて閉じる。
意地でも食うか!
「? ЭРПФΨ?」
「ええい、やめんか!」
こちらが全力で拒否して首を振っているのに、俺の動きに合わせて口元に持ってこようとするものだから。
バシッ、とそれを叩き落としてしまった。
転がる箸。
驚いた顔で俺を見る美少女。
わさわさと俺に向かってくるそれ。
「ひぇぇぇぇぇぇ!!!」
来るな! 来るな!
追い払うつもりでバシバシとそれの進路をそらすように床を叩くうちに……
グチャッ
と素手で叩き潰してしまった。
「きぃぃぃぃああぁぁぁぁぁ!」
えんがちょ! えんがちょ!
『――≪名もなき仔竜≫がスカラファッジオを倒しました。経験値5を倒しました――』
『――≪名もなき仔竜≫のレベルが2に上がりました――』
何かが聞こえた気がするけれど、それどころじゃない。
手の平についたそれの体液を、泣きながら布でゴシゴシ拭い去るのに必死だったからだ。
相変わらず人外なその腕をゴシゴシ布になすりつけていると、ぼんやりと半透明な板が腕の上に浮かび上がる。
「は? 何だこれ?」
よくよく見ると、何やら文字が書いてある。
それには、こんな風に書かれていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ステータス】
名前 : ――
レベル : 2
EXP : 0/20
HP : 50/55
MP : 6/6
Atk : 22
Def : 11
スキル : ――
称号 : 中二病(笑)
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