第7話 ついに! ルシアちゃんと会話ができる!

 ベルナルドは、モンスターテイムというスキルを持っており、その関係でモンスターの言葉もわかるらしい。思念にMPを乗せて相手に伝わるように念じればこのように頭の中に直接話しかけることもできるらしく、ある程度知性のあるモンスターと闘う際に必須の能力だから覚えたほうが良いと教えてくれた。


『――≪リージェ≫がスキル≪念話≫Lv.1を取得しました――』

「よっしゃぁぁ!」


 これで! ついに! ルシアちゃんと会話ができる!

 思念にMPを乗せるというのがよくわからなくてなかなか苦労したが、言われるままスキルを使ってみたりしてMPを消費する感覚を掴んでからはあっと言う間だった。

 ルシアちゃんと会話できるようにしてくれたお礼に、特別に先生と呼んでやろう!


『凄いね、まさかこんな早く習得するとは』

『先生の教え方が上手いからだよ』


 実践して見せてくれたしな。驚くベルナルド先生にそう返すと、嬉しそうにそうかと笑った。

 久々の会話、すっげぇ楽しい。

 最初は相手が根暗そうなおっちゃんなのがちょっと残念って思ったけど、笑った顔を見たら印象変わった。感謝の気持ちからかもしれんけど。

 なんつーの? 今にも死にそう? 消えそう? 薄幸そうっつーの?

 仕方ないから、俺が守ってやんよ! もちろんルシアちゃんの方が優先だけど!

 


『ところで、最初の話に戻るが』

『最初の話?』


 何だっけ?


『暗黒破壊神が結界で守られた王都にたやすく侵入できたって話』

『ああ! そういやそんな話してたな』


 完全に忘れていた俺にベルナルドが苦笑する。


『暗黒破壊神も元は女神様と同列の神様だからね。聖女様が他の結界に干渉できるのと一緒だよ。暗黒破壊神も結界に干渉できるのさ』

『えっ! じゃあ、結界なんて意味ないじゃん!』


 俺なら、即行結界を解除するよ。

 んでもって、下僕にしたモンスターに襲わせつつ、同時に俺も大暴れして力を見せつける。

 あれ? でも、偽暗黒破壊神は結界壊すだけ壊してすぐ逃げたんだっけ?


『そうだね、暗黒破壊神には結界そのものは意味がないが、結界があると聖女や勇者がいることを警戒するらしくてね、今回のように街中へ突然現れてもすぐに去ってしまうのだよ』

『へぇー』


 聖女や勇者を恐れて戦わずに逃げる? やはり偽物だな。

 これなら、案外俺が真の暗黒破壊神となる日は近いかもしれん。 


『で、話を戻すけど、君は王都に現れた暗黒破壊神を偽物だと言ったね。何でだい?』


 ベルナルド先生が聞きたいのは、何故偽物だと断言したかってことかな?

 そりゃ、暗黒破壊神たる俺様がここにいるんだから、今いる暗黒破壊神は偽物に決まってるだろう。

 けど、ここでそれをいう訳にはいかない。今ここにいる全員を敵に回してしまう。勝ち目のない内は悪手だ。


『そりゃ、わざわざ結界を潜り抜けて王都に来たって言うのにすぐ逃げ出すとか、小物臭が物凄いからさ。復活したばかりだと聞いたし、影を送り込んで本体はどこかにいるって考えるのが普通じゃないか?』


 苦しいか? と思ったがベルナルド先生は納得してくれた。




「今日はここまでにしよう」


 先頭を歩いていたアルベルトがそう言って立ち止まる。手には紫色に光るカカオ豆のような実が。うぇ、何あの毒々しい色の実。食べるの?


『時告げの実だよ』


 なるほど、時計か! ベルナルドがこっそり教えてくれた話だと、オレンジ→黄色→緑→青→紫→赤→オレンジの順に一日一巡、毎日同じ間隔で色が変わるのだと。一色で四時間って所か。

 更に追加情報で一日は6オーラ。オーラって言うのが時間の単位なんだって。時間っていう概念はあっても何分っていう概念はなかった。まぁ、時計がなくてこんな不思議植物に頼っているようじゃそりゃあ細かな時間設定はないか。細かく時間を決めたい時でも、緑4分の1オーラとか、或いは2と4分の1オーラって感じで指定するんだってさ。

ってことは、今は全体が紫になっているから、大体夕方の4時頃か。


 ここまで来る間に、ベルナルド先生はたくさんの事を教えてくれた。レベルの事、スキルのこと。ほとんどの人はレベル99がMaxで、それを突破して強くなれるのは勇者や聖女、聖竜だけなのだそうだ。逆に言えば、暗黒破壊神はレベル100以上じゃなければ倒せないって事か。

 話を聞いた感じじゃ、そんな強そうに思えないんだけどな。

 レベルの差を覆す重要な要素がスキルなわけだけど、スキルレベルの上限は10でこれは勇者や聖女、聖竜であっても変わらないらしい。


「今は大体どの辺りなんでしょう?」


 ルシアちゃんが野営準備をしているアルベルトに尋ねる。

 アルベルトは手を止めるでもなく、この階層は四十七階層だと答えた。


「えっ!? 私たち、寝所を出てからかなり階層を登ってきていますけど……」


 ルシアちゃんの話だとここは五十層のダンジョン。その最下層から正確には七階層登ってきたから、四十三階層のはずなのだが。


「ここはダンジョンですよ。コアを破壊しない限り、成長し続けるんです。年々深くなっていますよ」


 アルベルトの言葉を肯定するようにベルナルド先生が言う。ならば間違いないのだろう。嘘を吐く理由がないものな。

 ルシアちゃんはショックを受けているようだが、確かルシアちゃんが最下層に潜ったのは五年も前だ。五年も経てばそりゃ育つだろう。

 ダンジョンコア……もしかして、女神様が眠っているとかいうあの水晶か?


 叩き壊してやりゃ良かった、と思いつつ夕食の牛肉串に舌鼓を打つのだった。お肉マジ最高!

 ってあれ? せっかく会話できるようになったってのに、俺、まだルシアちゃんと会話してなくね?

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