第4話 ふおおおぉ! 俺様、格好良いではないか!
天使ちゃんに連れていかれた場所は、風呂。
あれ? デジャヴ……?
床をくり抜いたような形の風呂だ。広さは一般家庭の浴槽くらい。
湯舟に降ろされる時に、水面にはっきり俺の姿が反射して映る。
「ふおおおおぉ! 俺様、格好良いではないか!」
興奮して思わずバタバタ両足を動かしてしまった。
だって、そこに映った俺の姿、見てよ! ドラゴンだよ、ドラゴン!
体はミニマムだけど、白銀の姿に青い瞳。背にはちっちゃいけど立派な白銀の翼が!
暗黒破壊神の俺としては、体色は漆黒が良かったのだけれど。
見惚れていると、またぼんやりと半透明な板が浮かび上がる。
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【ステータス】
名前 : ――
レベル : 2
EXP : 0/20
HP : 50/55
MP : 6/6
Atk : 22
Def : 11
スキル : ――
称号 : 中二病(笑)
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ああ、やっぱり異世界来ちゃったんだなー……って、何じゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!
名無しは分かるよ? 生まれたばかりだしね!
でもさ、俺、ドラゴンでしょ? ステータス低すぎじゃね?!
つーか称号! 「中二病(笑)」って何だ、(笑)ってぇぇぇぇぇ!!
「むぅ、これは地道にレベリングするしかないのか……」
できるのか? さっきメロンにすら食われそうになってたのに?
チラっと天使ちゃんを見る。
あっさりとメロンの化け物を倒してみせた天使ちゃん。彼女に手伝ってもらえば、より安全にレベリングできるんじゃ?
「?」
目の合った天使ちゃんはニコリと笑うと恭しく俺の身体を洗い始める。
「うむ、殊勝な心がけである。それでこそ俺様の下僕」
「ЦотоЫЁΠΧΡθλξαη?」
うん、さっぱり通じん。冒険についてきてもらうなら、せめて名前くらいわからんかな……。
「俺様はルッスクーリタ! 暗黒破壊神だ! 下僕、貴様の名は?」
言葉が通じないならジェスチャーだ!
俺は自分の胸をポンポンと叩きながら名乗りを上げる。名を聞きたいなら自分からってね。
その後、天使ちゃんの胸をポンポンする。あ、触っちゃった。や~らか~い。
「ЦЁΠΧルシアΡθλξαη」
!! 今ルシアって聞こえた!
『――≪名もなき仔竜≫がスキル≪タリ―語≫を取得しました――』
名もなき仔竜って何だ! ルッスクーリタだって言ってんだろ!
「湯加減はいかがでしょうか? ディオ・リジェロ様?」
スキルとやらの恩恵なのだろうか、天使ちゃん、もといルシアちゃんの言葉が突然はっきりわかるようになった。
「何だ? そのディオ・リジェロって。俺様はルッスクーリタだ」
「?」
あ、ダメだ。ルシアちゃんの言葉はわかるのに、俺の言葉がルシアちゃんに伝わってない。
腕をバタバタ、何とかジェスチャーで伝えようとしているのだが、困ったような笑顔で首を傾げられてしまった。
「あ、もしかして、名前ですか?」
そう! 察しが良いな!
コクコクと頷いて見せると、何やら悩んだような顔で考え込む。
「……う~ん……わたくしごときが勝手に名付けて良いのかしら……いえいえ、ディオ・リジェロ様が望んでおられるのですから……」
ブツブツ言っているルシアちゃん。
悩む顔も可愛い。
ワタクシ、ですって。お嬢様か、この子?
「では、僭越ながら……≪リージェ≫」
ルシアちゃんがそう言った途端、ブワッと体に衝撃が走ったような感覚がした。
「あいにくとわたくしはセンスがなくて……一生もののお名前がこんな安直で申し訳ありません……ですが、とっても素敵なお名前だと思いますわ」
ルシアちゃんはニッコリと微笑むと、俺の身体を湯舟から出し、恭しくふかふかなタオルで拭き始める。
うん、きっと俺の言葉が通じないのは、俺がドラゴンでルシアちゃんが人間だからだな。そうに違いない。
となると、ラノベでお約束の念話とか欲しいなぁ。
それとも、ルシアちゃんとお別れしてドラゴン仲間を探しに行く?
いやいや、ラノベだとドラゴンって言ったら気性が荒いバトルジャンキーなんでしょ?
無理無理無理無理! 俺喧嘩ですらまともにしたことないもん!
出逢って一秒でバトル! なんて言われても瞬殺される未来しか見えないよ?
やっぱなしだな。うん。
当面はここでルシアちゃんのお世話になりつつ、自分の身を守れる程度にはレベル上げしよう。
……幸い、あのバカでっかい芋虫とかゴキとかでもレベル上げ出来るってわかってるからな。
自分で目標を立てておいてなんだけど、またアレと対峙しなきゃいけないのか、と思うと溜息しかでないよ。トホホ。
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