第79話 神に逆らう反逆の徒 4

<天界への侵攻が開始されました>

<天界を守護する砦が出現しました>


俺達の砦がアジトから切り離され、ワールドマップに出現する。正面以外は進行不可だ。


トキ、レイ、サクラ、ユウタは、ルシファーの情報を求めて離散。


俺は最初は遊撃しないが、見張り台には立たず、ルシファーの情報が入り次第出撃する予定になっている。当ても無いのに探すのはリスクがあるので、情報が集まるまで待機した方がいいと言う結論になったのだ。もう一つの理由としては、侵攻軍にルシファーが混じっている可能性が高い。それで迎撃に参加するのは流石に攻撃側の予定が狂うだろうから、ただ待機。カード遊びでもしてようかなあ。


横にはアルテミスが浮いている。ルシファーの気配を探してくれるらしい。精霊同士なら気配を探れるとのことだ。


向かってくる敵は・・・何?!


〔敵・・・要塞級1隻、戦艦級6隻、重巡級30隻、軽巡級120隻。歩兵が5万人といった所ですか。元文明の遺産を掘り起こしたり、知識を取り戻した人や、現代の技師達の成果でしょうね。恐らく上空の機体に乗っているのは、ほとんどがこの世界の人でしょう〕


空を覆い尽くす、戦闘兵器の群。これは・・・もうエレノアに待避して貰った方がいいかも知れない。何これ、攻城戦とかそういうレベルじゃない。気のせいか、下を歩いているプレイヤー達も唖然としている。


ドゥッ


敵要塞の主砲が放たれる。同時に、他戦闘艇からも主砲が斉射される。狙いは正確で、砦は・・・無事だ。周囲の地面はえぐれているし、一部プレイヤー勢も被害を受けたようだ。


〔被害・・・深刻です。バリアの70%が消耗しました!〕


エレノアの報告。


〔いや、一度耐えただけでも凄いよ。次受けたら終わりか。とりあえず脱出した方が良さそうだな〕


敵が再度チャージを始めた。数秒か、数十秒か、次にチャージが終わった時がこちらの最後だろう。まさか砲撃だけで終わるとは思ってもいなかった。


〔まだです・・・バリアを次の砲撃までに回復できれば・・・現在、946%まで回復しました〕


ん?


〔こちらも反撃します。主砲、エネルギー充填・・・完了、砲撃!〕


ゴウッ


光の柱が、敵要塞級と戦艦数隻を飲み込む。


〔敵戦力、損耗率30%、損害軽微!〕


エレノアの報告。


〔いや、30%というか、指揮艦っぽい要塞と、戦艦が2隻程、跡形もないんだけど〕


〈シルビア、ルシファーの消失を確認しました。現在再生中のようです。とりあえずこちらに引き寄せよせます〉


アルテミスからの報告。要塞に乗ってたのかあ。


プレイヤーの一部が我に返ったようにどよめいている。まあ、妙に闘争心刺激されてた感あったし、ある程度の思考誘導はされてたんだろうな。


〔バリア現在値1000%、主砲もエネルギー溜まっています〕


エレノアの報告。


〔エレノア、主砲次のを撃つのはちょっと待て〕


上空の敵もちょっと混乱しているからね。降伏してくれる可能性がある。


〔了解しました。副砲発射!〕


無数に副砲が展開され、連続斉射。一撃が1機を撃ち落とす。戦艦級すら。


〔や、違くて〕


上空に飛んでいた機体を全て撃ち落とすのに、数分とかからなかった。


〔ああ・・・〕


・・・生き残りいるといいなあ。まあ、さっきの主砲よりははるかに生存率高そうだ。


プレイヤーが我に返り、こちらに攻めてくる。いや、何でさ。


〔機械兵団、突撃〕


数千体の機械兵団が出現。ビームサーベルやビームライフルで応戦する。かなり強いらしく、結構なプレイヤーが犠牲になっていく。無双して機械兵を散らしているのもいるけど。


〔二陣、突撃〕


再び数千体の機械兵団が出現。プレイヤー達に向かっていく。おーい。


〔副砲、構え〕


おおい?!


〔まてエレノア、攻撃、待て〕


〔えっ?!〕


とりあえず引き寄せられたルシファーを掴んでぷらぷら揺らす。


「おい、ルシファー、聞こえるか」


「く・・・殺せ」


「ん、殺して良いのか?」


〈殺さないで下さい〉


アルテミスが止める。


「ルシファー、我がマスターならお前を殺せます。ちゃんと真面目に話をした方がいい」


「何だと?!というかお前はアルテミス!何でここに」


「私はシルビアに魅せられ、従属精霊となりました。ここに貴方を引き寄せたのは私です。シルビアに逆らえば容赦しません」


「馬鹿な・・・我々旧神が人に屈する等あってはならぬ!」


「シルビアの魂の輝きは美しい。私はそれに魅せられ、見守る事にしたのです」


いや、お前食欲と安全とぐーたらを求めて来ただけだよな。


「・・・それで人の子よ、何の用だ。分かっているのだろう?あの女神を倒さねば、次に滅ぼされるのは人間だぞ?というか、十数年前、一度滅ぼされかけたのだ。お前は知らんだろうがな」


「・・・何を言ってるんだ?俺は当時の当事者だぞ。魔王を滅ぼし、神に望みを叶えて貰ったあの場にいた。望みは叶えて貰えなかったがな」


「何?!」

「えっ?!」


ルシファーが驚くのはいいけど、何でアルテミスまで驚いているんだ。


「シルビア、の名前は知られてないのかな。名前変えてないんだけどな」


「いや・・・まさか・・・本人・・・だと?!」

「あー、そういえば、一部の名前って本人以外は使えないんだっけ。六英雄とシルビアは」


気づけよ。


「・・・して何の用だ、人の子よ」


「とりあえず洗脳、思考誘導?とかはするな。住民煽るのはまあお前等の本質だから仕方ないのかもしれないが、プレイヤーには手を出すな。後、イベントの時、微妙に誘導して、相互不信とか、雰囲気悪くしたりとか、そういった事をしただろう?」


「人々の怒り、疑心、そういった感情が我の糧となるのでな。ちょうど我に都合のいいイベントが連続したり、噂が出たので、暗躍して程度を大きくしたのは事実だ」


多分、ルシファー活性化させる為にあれらのイベントやったんだろうなー。


「そういった事も辞めて貰おう。プレイヤーへの直接干渉は禁止だ」


「貴様に禁止される筋合いはない」


どうしたもんかなー。多分滅ぼすのはまずいんだよなあ。


「アルテミス、こいつどうすればいいんだ?ほっといたら再生してまた悪さするみたいだけど」


「んー、力奪ったら再度回復するのは時間かかるのですが・・・ルシファーって回復早いんですよね。あ、ルシファー、私と貴方が戦って、私が勝ったら、シルビアの言うことに従うっていうのはどうですか?」


「貴様が?その条件なら良かろう」


「ん?じゃあ、俺もそれでいいぞ。アルテミス頑張れ」


「頑張りましょう」


「ぐふふ・・・人の子よ、良い事を教えてやろう。そいつは旧神とは言え、神に力を奪われて以降、力の回復手段を持たぬのだよ。ただの精霊となっていて、神としては一切力を震えぬ・・・そして・・・我は力の大半を外部に出しておったので、余裕があるのだ」


プレイヤーから、住民から、闇の力が集まり、ルシファーの力となる。


「月精霊よ、先程止めてくれた礼に、命までは奪わぬ。だが、千年は活動できぬと知れ」


ルシファーが魔力を手に溜める。一方、アルテミスは、


ゴウッ


光を纏い、女神の姿に戻る。


「なっ」


ルシファーの言葉はそこで止まった。そう、止まった。時間停止だ。


ゆっくりと光の矢を番え、放つ。光の奔流がルシファーを貫いた。


時間が動き出す、口から血を吐き、膝をつくルシファー。


〈殺してはいないですよ、大丈夫です〉


「ごぼっ・・・馬鹿・・・な・・・何故・・・」


ルシファーが苦しそうに呻く。


「確かに・・・両方とも同じ条件なら、10回戦えば、8回勝つのは貴方でしょう。しかし・・・貴方は力がかなり消耗していて、全盛期の3割にも満たない・・・」


「ぐ・・・」


「そして私は、全盛期の数倍の力がある。この差が勝敗を分けたのです」


「何故そんなにあるんだあああああ?!」


瀕死なのも忘れ全力ツッコミするルシファー。アルテミス・・・やっぱりお前過剰に食べてたな。


「負けは負けです、約束を守りなさい」


「く・・・分かった・・・流石に神同士の約束は、我を縛る。今後はプレイヤーに直接干渉は行わないと約束しよう」


先程ルシファーが力を回収したせいだろう。住民達はもはや機体が何かすら分からない様子で、おろおろしている。プレイヤー達も、記憶の不整合に混乱しているようだ。あー、これ、また六英雄がゲームの危険性とか言い出すパターンじゃないかな。


〔どうなったにゃー?〕


トキが聞いてくる。


〔あ、すまん。とりあえずルシファーは捉えた。義勇軍も戦意を喪失した。後は時間切れでイベント終了させよう。エレノア、一応向かってくる奴がいたら迎撃してくれ〕


そう、これで終了だ。結局、女神様としては退屈しのぎがしたかったのだろう。だが、プレイヤーに精神干渉は困る。月花を通じて、旧神への禁止通達を出して貰うかな・・・不満がある奴がいるなら、捉えるしかない。


エレノアの魔改造した砦、強すぎるんじゃないかな。六英雄達が、スペックが桁違いに大きいから誤記とか言ってたけど、多分正しかったんだな。まあ、ああいうスペックって小さめに書いておく事は良くありそうだけど。安全範囲、と、全力は、やっぱり違うから。


アルテミス、改めて強すぎる気がしました。

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