第85話 あの時のあの言葉が
「ますたぁ、ちょっといいかにゃあ?」
釣りをしていると、トキに話しかけられる。
「どうした?」
「ちょっとPTを」
「ん?分かった」
《ちょっとリアルの事で聞きたいのにゃ。ますたぁの家の最寄り駅の前にショッピングモール?ぽいのを作ってるにゃ?》
確かに最近、駅前の広い土地で工事をしている。何が出来るのかは知らないが、ショッピングモールという噂がある。ちょっと土地の買収に強引な所があったという噂はあるが、巨額の金がばらまかれて土地が空けられたらしい。採算とれないと思うのだけど・・・でも、個人的には便利になるので楽しみではある。
《あるな。あれがどうかしたのか?》
《うにゅ。あそこにせっかくだから私も店を出そうと思ったのだけど。何処が工事してるのかも、何処に申し込んだら良いかも、何故か情報が掴めないのにゃ。ますたぁ地元なら何かしらないにゃか?》
だから田舎にトキの高級な店を出しても採算とれないと思うぞ?!
《うーむ・・・すまないが何も知らないんだよな。ちょっと待ってくれ》
俺は自室を出ると、サクラの部屋をノックする。
「入っていい」
中からサクラの声がする。扉を開けると、複数ディスプレイを展開し、キーボードを叩くサクラがいた。どの画面も凄い速度で情報が流れている。よく見れるなアレ。
「サクラ、ちょっと聞きたいんだけど」
「何?」
くるっと椅子を回転し、サクラがこっちを向く。最初会った時より血色は良くなっている。前はどんな食事をしていたのやら。
「この近くにショッピングモール?みたいなのがあるだろ?何か知ってるか?」
「ぎく」
ぎく?
「何か知ってるのか?」
「申し訳ない、パパ。私は貴方に提供出来る情報を持っていない」
知らないのか。
「いや、な。トキがあのショッピングモール?に店を出したいそうなんだが、どこに連絡したらいいか分からないから何か知らないかと聞かれてな」
「不適。トキの経営する店は高級店であり、ここの土地には馴染まない。出店は正しくない行為」
「だよなあ、俺もそう思うよ」
スマホを取り出し、メッセージを打つ。
《やっぱり分からないな。ただ、トキの店は高級店だからこの土地には向かないってさ》
《何で伝聞系にゃ?!》
《娘に聞いた》
《既婚者だったにゃ?!》
《いや、えっと、娘だけ居る》
《・・・そっか、複雑なのにゃ・・・》
《うん・・・帰宅途中に捕まってね。そのまま養子に迎えたんだ》
《何があったにゃ?!と言うかそれは事実にゃ?!》
《とりあえず、それはどうでもいいとして、出店は諦めた方がいいと思うぞ》
《にゅー・・・分かったにゃあ・・・》
PTを解散する。
「パパー」
サクラが部屋を覗きながら声をかけてくる。
「どうしたサクラ?」
問い返すと、
「エレノアが相談があるって」
ん?
「ああ、とりあえずゲームに入るか」
「不正。駅前に作って貰ってる家の事で」
エレノアがかんでたのか。いつの間に。
「いつの間にエレノアと・・・まあ分かった。でどうするんだ?」
「駅前に行くー」
出かける支度をして、駅前に行く。サクラが作っている家だ。結構大きい。
「あ、サクラさん、ますたぁ、こんばんはですー」
エレノアがぺこり、と挨拶する。こちらも挨拶を返す。
「エレノア、建築とかするのか?」
「えっと・・・ちょっと・・・設備の事で相談受けてて、一部担当したんです。で、どうしようか悩んでて、確認しようかと」
「設備・・・?」
DVDシアターとか作ってたからあれかなあ?
「はい。最初はレールガン設置しようと思ったのですが、周辺の電気供給能力では安定運用に不安があって。高性能のソーラーパネルは付けるのですが、曇りが続くと防衛能力に不安が生じます。波動砲や反重力砲も然り。そうなると、機関銃程度の防備しか備えられないのですが、それでいいかと」
「武器はいらん?!というか冗談だよな?!」
冗談だよな・・・?
「いえ、それだと敵に攻められたときに困るので・・・実際この前だって、砦に武器をつけていたおかげで善戦出来ましたし」
「日本で敵は攻めてこないし、後この前は善戦ってレベルじゃなく一方的に虐殺してた!」
どこの世界にレールガンで身を守る民家がある、というか、現代の技術力で実現可能な武装じゃないぞ?
「パパ、今フラグ建てたよ?このままだと命の危険が」
「ここは現実だし日本だ。絶対に大丈夫だ!」
「ますたぁ、絶対という言葉は使わない方が」
「絶対大丈夫だ!」
ゲームとリアルは違うんだ。というかエレノア、リアルでゲーム内の兵器再現するのか。
「まあ、エレノア、こっちは仮設住宅だし、武装なしで御願いします」
「分かりました・・・高出力精密レーザーくらいにしておきます」
「うん」
何かおかしい気がするが・・・突っ込まないぞ。
「それでエレノア、ここの完成度はどのくらい?」
「レールガンとかいらないなら、もうほとんど出来ているよ」
「じゃあ週末には引っ越せそうだね。有り難う」
「こちらも技術を試すいい機会ですし」
何か分からないが、今週末にまた引っ越すらしい。家としてはそれなりに大きい方。今のマンションでも過剰に大きいのだが、それよりも更に大きくなるな。
「何かエレノア、世話になっているようだな。有り難う」
「いえ、御礼は全部終わってからにして下さい」
エレノアがにこっと笑った。
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