第40話 トキ2
じっと見るトキ。いや、俺、年齢=彼女いない年数なのですが。
《彼女いた事、ないよ?俺凄い非モテだぜ?》
そのまま固まるトキ。波の音だけが聞こえる。綺麗だなあ。
《えと、えと、どういう事、です・・・?えと・・・フェル、魔導王フェルの事はご存知・・・ですか?》
《ああ、フェルの。そう言えば、妹がいると聞いた事あったな》
魔導王フェル、六英雄、ではない。元の、現魔導王曰く本物の、魔導王。六勇者、原初にして至高の存在。魔王の罠で命を、落とした。
フェルは、六勇者は、大切な親友達、だった。彼らに託されてなければ、俺は最後の戦いには関わらなかった。
《えと、えと・・・シルビアさんは姉とは恋人で・・・》
《いや、違うけど?》
《えと・・・海に幻獣を見に行って、そこで・・・その・・・キスして》
《幻獣ウォリプスを2人で見に行ったのは事実だけど、キスとかしてないよ?そういう雰囲気になった事もないよ?》
《えと・・・リアルで今度会おうって約束を》
《当時の俺は完全な引き篭もりだぞ。自慢じゃないが部屋から出るのすら怖かったし、家の外出るとか、ましてや他人と会うとか出来るはずなかろう。親とすら顔合わせて無かったんだからな?》
全くもって自慢じゃない。
トキがまたフリーズする。波の音、本当に心地良い。このアーティファクト手に入れたの誰だろう?
《えと・・・つまり・・・お姉ちゃんとシルビアさん、恋人じゃない?》
《うん。何でそんな事言ったかは見当つかないけど》
謎。
トキはこほん、と咳をすると、
《とにかく、私はフェルの妹です。姉が生きている頃から、資料整理や計算、仮説建てたりして手伝ってました。その縁で、六英雄とも関わりあったので・・・姉がいなくなったあとも、手伝ってたんです》
《感覚に生きてる感じのフェルが、妙に理論的な事言ってたのは、そのせいかー》
衝撃の事実。
《今回私が始めるのが遅かったのは、何かあった時に全滅を避けたかったから。なので、私はゲームの外でサポートしてたの。安全そうだって結論出たので、私も始めたって訳》
《成る程。分かったよ。次に何かあれば、君に相談しよう》
《ありがとうございます》
トキが嬉しそうに言う。
《もう一つ言えば、シルビアさんの事、もう一つ想像がついてます》
トキが、またこちらに顔を向けて言う。
《ハーミット、ですよね。シルビアさんのアルカナスキル》
アルカナスキル?スキルもバレてるのか。フールもあるけど。
《この世界のごく一部のプレイヤーには、アルカナスキルと言うユニークスキルが備わっている事が分かっています。その人の魂の形に相応しい物が選ばれるようです。その特徴は、どれも規格外の効果があり・・・物によっては、現実世界にまで影響を及ぼすそうです》
そう言えば、フールに寝なくていいとか書いてあるな。寝るの好きだし寝てるけど。
《シルビアさんがハーミットを所持してる、と言うのは勘です。女神様が、シルビアさんにアルカナスキルを持たせない訳がないと思ったので》
そこまで重要視はされてないと思うけどなあ。
《他にアルカナスキル?を持ってる人はいるの?》
《騎士王がエンペラー、魔導王がムーン、聖王がジャスティス、闇王が死神、剣王がストレングス、賢王がテンペランス・・・で、私がホイールオブフォーチュンですね》
《成る程・・・》
前回関係者と所持者に相関性あるのか。
《あ、それと、現魔導王、ポラリスがシルビアさんに会いたがってましたよ?この施設のアーティファクトも、ポラリスがギルド結成祝いにくれた物です》
ちょっ。
《あ、別に私がばらした訳じゃないですからね?アーサーが私の所属ギルド見て、シルビアさんと同じだと気づいただけです》
《ポラリスかあ・・・苦手なんだよなあ・・・何故か調子狂うんだよ》
《好かれてますよねえ》
《好かれてる訳でもないと思うんだけど、何なんだろうねえ》
《こうやってLRクラスのアイテムをぽんとくれましたしね》
LR?!
《返してきなさい》
《やです、気に入りました》
ぷい、っとトキが顔を背ける。
《とにかく、顔見せてあげてください。しつこくて困るんです》
・・・むぅ・・・仕方ない。今度顔見せるか。
《どの口が非モテなんて言うんですかね》
モテた事ないって。
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