第39話 トキ1

〔ますたあああ〕


トキが話しかけてくる。久々に話す気がする。いや、時々ギルドチャット流し読みはしてたのだけど。


〔今時間良いですか、会って話したいにゃあああああ〕


鬼気迫る感じが伝わってくる。用事が何かは見当もつかない。


〔構わないが・・・何処で落ち合おう?〕


〔アジトの月夜の海岸亭で〕


何処だ。


アジトに入ると、月花に呼び止められる。


〔シルビア様、設備ポイントが足りません。クラウンを納入して下さい〕


この前散々補充したのにもう?!


〔分かった、全部出す〕


ドチャッ


真結晶3、塊140、欠片1830。


〔あがりはこれだけですか。しけてますね。まあいいでしょう〕


えええ・・・これ結構な量だよ?


〔月夜の海岸亭って何処?〕


俺の質問に、月花が反応する。


〔私が案内しましょう〕


自分のいた場所に光の精霊を代理で配置すると、先導を始めた。10分程歩いたところで、ポツンと置かれた扉を指し示す。


〔あそこです〕


待って待って待って、広くなりすぎてない?!これ、アジト内にワープ施設いるよね?


扉を開けると、異空間になっていた。綺麗な星空の下、切り立った崖の上、テラスがある。心地良い波の音が絶えない。いい場所だ。


〔マスター、遅いにゃ!〕


トキが怒る。


〔いや、そうは言っても、移動が大変で〕


〔何でにゃ!ミニマップから施設名タップで転移できるよね!〕


えっ、何それ。


〔月花・・・?〕


〔マスター、女の子待たせるとか、相変わらず鬼畜ですね。尊敬します〕


引くわ、的な態度を見せる月花。く・・・


〔と、とにかく、話って何かな?〕


月花が俺の所持金を引き出すと、ショップに行き、人数分の飲料を買ってくる。テーブルに置き、椅子を引いて、座るように促す。


トキからPT申請が来たので受ける。他に聞かせたくない話だろうか。


《サクラの件、それから、その後の騎士団の件、聞きました。サクラの話はレイと本人から、アーサーからは調査不要、との結論だけ共有されました》


じっとトキがこちらを見て。


《私はこのギルドが好きです。このギルドの話・・・サクラの話を、六英雄達に流したりはしません。向こうも、シルビアさんの不興を買うような真似、敢えてしません》


《私が色々調べていたのは知ってましたよね?ギルドチャットでレイと話してましたから。今後こう言う話があれば、私にだけは教えて貰えませんか?今回の件だって、裏から手を回してもっと穏便に済ませられました・・・私も寝不足になりませんでしたし》


《六英雄の活動内容はシンプルです。このゲームがまたデスゲームとなって、人の命を奪わないか、監視する事。それさえなければ、後は各自好きに遊んでいるだけなのです》


知ってましたよね、と言われても・・・


《いや、狩りをしてるとログが凄い速度で流れるから、休憩中くらいしかログ見れないぞ?》


トキが、真顔になる。怖いって。


《・・・ログ、フィルターかけて絞ったりしてないのですか?》


何その便利機能。


《ギルドチャット、オープンチャット、パーティチャットとかに加え、システムログ・・・詳細設定では、システムログの種類も細かく設定。レベルアップとか、経験値入手とか、アイテム入手とか。アイテム入手も、レア度に応じて表示非表示選択可能》


《うお・・・これは便利。すまないな、ずっとソロメインだったので、詳しく知らないんだ》


設定したら一気にログが減って、会話やレア入手が見やすくなった。


トキはがっくりすると。


《事情は分かりました。とりあえず、今後は私に情報を下さい。必要な情報だけ流して、裏で手を回します》


《今回の件は、呪いのステータス異常は危ない事を広め、犯罪は犯さないことを再度周知、武器の情報はよく見てから装備する事、今回犯罪を行った男を告発、と対応しました。尚、サクラが刀を取り返した部分は記憶にないようです》


トキがすっとこちらの目を見て、


《何処まで情報を話すか迷う可能性が有りますよね。私が何者か、に関して話しておきます。と言っても、別に特別な存在ではないのですが。勿論、六英雄ではありません、が、近い存在です》


《貴方のかつての恋人、その妹、と言えば私が誰か分かりますか?》

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