第82話 後の祭

「ますたぁー」


アジトの池でのんびり釣りをしていると、エレノアに話しかけられた。


「エレノア、どうした?」


「うちの大学で大学祭やるんだけど・・・一緒に回る人が居ないんです。ますたぁ、一緒に行きませんか?」


何で?!


「いや、俺はほいほい他人にリアルで会う程のコミュ力はなくてだな」


「でも・・・トキとは会ってましたよね?」


ぐふっ。


「あれは・・・仕方ない状況だったのだ。後、地味にこう・・・そう、兄妹のような存在らしい」


「じゃあお兄さんって呼ぶので御願いします!一度行ってみたいけど、1人で行くのはコミュ障には致命的なんです!」


違う、そうじゃない。


「うー・・・あ、そうだ。あれですよ、あの有名なアイドルがステージに出るらしいですよ?」


「アイドル?」


「はい、えっと・・・音夢鞠愛、通称まりりん、だったかな」


誰だ。


「知らないなあ・・・」


「凄いんですよ、確か国内2位のトップアイドル、人気未だに上昇中らしいです。凄く可愛いそうです。出した音楽アルバムの販売総数も、1位のアイドルを除けばダントツ1位らしいです!」


むしろ1位の人に興味沸くなぁっ!


「その1位の人も知らないからなあ・・・」


エレノアがじーっと上目遣いに見てくる。


「駄目ですかあ・・・?ますたぁしか頼る人居ないんですよお・・・」


く・・・


「分かった、付き合おう」


押し負け、大学祭見学に付き合う約束をした。


・・・で、当日。エレノアは、大人しい感じのちょっと可愛い系の男子。まあそれはいい。で、隣にいる超絶イケメンリア充は誰だ。


「ますたぁ、初めまして、エレノアです」


ぺこり、とエレノアが頭を下げる。


「初めまして、シルビアだ。見ての通りしょぼくれたおっさんだ・・・で隣の人は誰かな?」


「初めましてマスター、ユウタです」


そっかあ、ユウタかあ。


「ますたぁを誘った後、ユウタが同じ大学だって分かったんです。それで一緒に回る事になりました!」


じゃあ俺いらないじゃん?!


「マスターにも会いたかったので嬉しいです」


キラリ爽やかなスマイル。こいつアイドルでもやればかなり良い所行くんじゃ無いかなあ?!


「あ、僕の事は龍多で御願いします。大学では芸名で登録しているので」


芸能人関係者かっ!


「そ、そうか・・・」


これ、ユウタがいるから俺いらないだろーで逃げる訳にはいかない雰囲気だよなあ。


「あ、僕も将で御願いします。僕のは本名ですね」


エレノアも主張する。


「お、おう」


2人に連れられて大学に着く。やたらとでかいし、妙にハイテクだ。東郷大学、という所らしい。有名な所なのかも知らんが、そういった物には疎い。子供もいないしな。自分も高卒だしなあ。


屋台やら、サークルの出し物やら、色々ある。


「このたこ焼き美味しいな」


「素材からこだわった本格派らしいですね。レベルが高い模擬店が多いので、楽しいです」


俺の言葉に、ユウタが反応する。


「僕も何か模擬店出せばよかったかなあ。戦艦とか売れるかな」


多分プラモか何かだよな。流石にリアルに空中戦艦とか作ってないよな。


「今また戦艦ブーム来てるから、売れたかも知れないですね」


ユウタが反応している。


「やっほー、龍多」


向こうから女の子が駆けてくる。と言うか凄く可愛い娘だな?!


「ああ、鞠愛、お久しぶり」


ユウタが手を挙げて挨拶する。


「あ、ますたぁ、この方が鞠愛さん。今日ステージに出演するゲストで、龍多さんの彼女さんです」


やっぱり超リア充だった。


「初めまして・・・えっと、ますたぁさん?」


鞠愛がきょとんとする。


「ああ、2人とはネットゲームの知り合いなんだ。俺の事は・・・」


本名でもいいし、ネットの名前でもいいが・・・まあ名前でいいかな。


「俺はシルビアと呼んでくれたらいいよ」


「ああ、貴方がシルビアさん!龍多から時々話は聞きます!」


そっかあ、聞いているのかあ。


「私もNLJOやってるんですよ!今度龍多、将さんと一緒に、冒険したいです!」


4人で大学祭を見て回る。特にボスも出ないし、雑魚すら出ない。宝箱もなければ、鍵がかかった扉もないし、トラップもない。出店は美味しかった。


鞠愛さんのステージも大成功に終わった。と言うか、ユウタの方は男性ではダントツ1位の人気なアイドルらしい。ユウタもステージに上がっていた。凄く盛り上がっていた。


それなりには楽しかった。ユウタも、エレノアも、満足したようだ。鞠愛さんもはしゃいでいた。散々遊び、解散した。でも家に帰ったらどっと疲れた。ぼっちってそんな物。

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