第37話 レイ1

〔おはよ〜〕


ログインすると、


〔おはよ!マスタマスタマスタ!〕


レイが話しかけて来た。


〔レイさん、どうした?〕


〔サクラの武器見たよ!!私もああいうの欲しい!!〕


刀?他に有るのかなあ・・・武器作成とかでできるかも知れないけど。


〔れじぇんどれあってのが欲しい!!〕


〔無理だ〕


俺だって1つしかないし、昔のゲームでも3桁行ってなかったんだぞ。


〔あれは、狙って手に入る物じゃない。自分の行為の積み重ねにより、出会う物なんだ。何年もプレイしても、1つ手に入るか怪しいくらいだ〕


〔むー・・・〕


不満そうだ。俺だって手に入るなら欲しい。


〔ウルトラレアを目標にすると良い。URなら、現実的な確率で手に入るし、十分強い〕


〔むー・・・分かりました。じゃあ、ダンサー転職手伝って!!〕


ダンサー転職?レベル上げかな。まあ数時間でできる事はたかが知れてるが。


〔じゃあ、合流しようか。宿舎前で〕


ギルドアジトに向かい歩き出した。特定のアーティストを納めると、各場所にポータル設置して、ギルドメンバーは相互移動できるらしい。城へショートカットとか。欲しい気はするが、そうそう出るものでもないし、市場で購入する程でもない。尚、街の移動に関しては、冒険者ギルドがある場所なら、一度登録すれば出口として選択可能だ。一応、幾つか登録済。


ギルドアジトに入る。広さは拡張され、オブジェクトは増えている。みんなが適当に入手しては置いていくのだ。スタジオだかコンサート会場って感じの音響機器が並んでる区画もある。家具の種類増えたなあ。


映画館、のような施設もある。各自撮影した写真をコメント付きで登録、閲覧できる。各種珍しいダンジョン、モンスター、NPC、景色等が登録されている。俺もせがまれて、大陸ダンジョンのボスを撮影して回った。最後のボスだけ、ポーズ決めてる。本人の要望で何パターンか。リヴァイアサン複数召喚の瞬間とか戦慄した。


そう言えば、大陸ダンジョンだが、クリアする度に基準レベル上がるらしい。クリアボーナスは適当なUR武器だったので、初回ボーナスだけ豪華。後はただのチャレンジとレベル上げかな。


〔マスター、遅いよ〜〕


こっちの姿を見つけたレイが駆け寄ってくる。呼びかけられた場所が遠かったから仕方ない。


〔悪いな。で、レベル上げの手伝いだっけ?〕


〔違うよ?!ダンサー転職手伝って欲しいの!街に行くよ!〕


街に?


街に出た。ここ数日、騎士団が忙しく駆け回っている。あちらこちらで聞き込みを行っているが、関わっていないので内容は分からない。


《あー、また騎士団だ。一時的な意識不明者が出たとかでピリピリしてるらしいね。引退してた前団長が一時復帰して号令かけてるらしいよ》


《詳しいな》


《トキから聞いたんだ〜。トキと前団長が知り合いらしくて、手伝わされてるらしいよ〜》


トキの知り合い、大物なのかあ。レベルの上がりが早いはずだ。


「君達、ちょっといいかな」


騎士団の一人がこっちに向かってくる。良くないなあ。


「すみません、急いでいるので」


俺が断ると、後から偉いさんが・・・あ、見た事ある。


「君、確か勇敢な少女と一緒にいた。すまない、時間は取らせないから、少しだけ質問に答えて欲しい」


やだなあ。何か嫌な予感がする。


《知り合い?》


《サクラの件でちょっとね。サクラが正宗を入手したイベントで、狼藉者をサクラが止めた時、騎士団に見られたんだ》


《知り合い見つけたから話聞いてみようって感じかなぁ?》


《それもあるだろうけど、多分意識不明者って正宗関連じゃないかなあ。あれを盗んだ人、怨霊に取り憑かれてたけど、多分精神かなりやられたはず。ちょっと心配だったけど無事目覚めてたみたいだね。良かった。まあ、武器屋でもめてた、あたりまで情報あったから、その辺りもあって声かけたんじゃない?藁にもすがる的な》


レイがきょとん、とした目でこっちを見ている。レイの素の顔って珍しいなあ。


《え?だってこれゲーム・・・意識不明?え?怨霊?》


《まあこの前身のゲームでは何万といった死者が出たしね。騎士団、まあ、多分裏にいるのは6英雄なんだけど、警戒してるんじゃない?》


ガッ、っとレイが服を掴み、顔を近づけてくる。近い近い、可愛い、可愛い。


《な、ななな、ななな???!!?!》


《落ち着いて。どうしたの?》


《ゲームで意識不明ってどういう事ですか?落ち武者の件はサクラから聞いてましたが、その間プレイヤーは操作不能とかログイン不可になる感じですよね?何で意識失うんですか?ゲームで死者ってどういう事ですか?》


むう・・・ここはサクラの名前出して。


《落ち着いて、ほら、あの騎士に目をつけられるとサクラに迷惑が》


そう言うと、レイがはっとして離れた。騎士の目がじっとこちらを見ている。


「何かご存知なのですか?申し訳ありませんが本部に来ていただけないでしょうか?」


《あう・・・遅かった。ごめんなさい》


レイが責任感じてるなあ。仕方ない、面倒だがやるしかない。


「分かった。確かに情報は持っている。だが、直接トップに話したい。騎士団に行こう」


「了解した。ついてきてくれ」


騎士についていく。レイがおろおろしている。レイの肩を叩き、


《大丈夫だよ。騎士団のトップやりそうな人物には心当たりがある。話はつけられると思う。俺を信じて》


《・・・はい》


ぎゅ、とレイが腕に抱きついてきた。おっちゃんには刺激が強いが、顔は平静を保つ。


騎士団本部につく。街に建物を建てるシステムはないはずなので、国から特別に貸与された形なのだろう。


ここまで先導してきた騎士が言う。


「確かに私の上には、騎士団創設者にして顧問の方がおられ、現在は復帰されて直接指揮を取っておられる。だが、普段は私がトップを任されている。忙しい方なので、私が先に聞いても良いだろうか?」


「それでは困る」


こんなイケメンエリートっぽいのとまともに話せるほど強い心臓は持ってない。


「六英雄、騎士王アーサーと直接話がしたい」


騎士がおやっと言う顔をする。


「アーサー様をご存知なのか。古参のプレイヤーか、内部関係者しか知らないのだが」


《六英雄!凄いプレイヤーなんだよね!》


《ああ、凄いぞ。文句なく最強のプレイヤーだ。騎士王、魔導王、聖王、闇王、剣王、賢王。騎士団なんて作るのは騎士王だと予想はついた》


「だが、アーサー様は忙しい、お会いになるかは難しいと思う。貴方の目、嘘はついてないと思うので、努力はしてみるが・・・」


「いや、シルビアが来たと言えば多分飛んでくると思うぞ?」


騎士が怪訝な顔をする。


「分かった。少し待ってて欲しい」


騎士が奥の部屋に入っていく。他の騎士は、どよどよ話し合ってるが、意識をこちらに割いている。軽い監視だ。

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