第22話 シルビア教室

「冷ややかなる輝き、浮き上がれ、ライト」


エレノアが灯りの魔法を発動し、光の球が浮かび上がる。


《落ち着いてゆっくり行こう。レイさんとサクラさん先行して。後続との距離に常に注意して》


《はーい、小まめに振り返りながら行くね》


《振り返る必要もないかな。気配を感じて、距離を測る。勿論過信は駄目だけどね。気配消すスキルや、敵の妨害もあるから。まあ、妨害するような敵はこのあたりには出ないので》


《気配・・・?うん、やってみる》


広間の端、次の広間まで、橋がかかっている。恐らく、遠回りしながらぐるっと回って階段に行く感じかな。


《シルビアさんー、ここ水渡れないのかあ?》


サクラが水路に行き、指差す。


《侵入不可じゃないのか?あ、行けますね。でも、濡れるのも嫌だし、何が流れてるか分からないし、やめたほうが》


侵入不可に設定しないとか、不具合だろうに。濡れて構わないならショートカットできそうだ。


「凍れ凍れ、命ある者よ。止まれ、そのうねりよ。フリーズ」


エレノアが、浮いてた木切れに氷結の魔法をかける。壁に着いた状態で凍りつく。繰り返し、簡易な橋を作った。


《これで行けますね》


お、おう。


別の陸地に着くと、魔物が押し寄せてきた。強そうなのも混じってたのでそれは倒し、甲虫とラット数体だけ残す。


サクラとレイとトキが先行。敵を固めつつ、挑発、誘導・・・後衛に敵が行かないようにかきまわす。エレノアが大型詠唱に入る。ユウタが短い詠唱の火炎矢で牽制したり、攻撃を受けたタイミングダイエットで回復を放つ。


《行きます!》


エレノアが叫ぶ。


《燃やし尽くせ、バーンアウト!!》


エレノアの声を聞いて前衛がすっと避ける。炎が敵を包み込んだ。


《着実に連携が上手くなってきてるね》


なかなかの才能だ。


レイが、サクラをじっと見て、


《ねーねー、サクラさん。攻撃がババッってなってたの何?》


《あれはクリティカルと言って、攻撃を上手く当てるとダメージが増えるらしい。シルビアさんの攻撃が凄く光ってるでしょ。アレの下位バージョン?シルビアさんに教えて貰ったんだ》


《ふむむ・・・狙って見るー》


それを見ていたユウタが、


《シルビアさん、私にも何かアドバイス欲しいです!》


ええ?!無茶振り過ぎる。回復職の動き何て知らんぞ・・・


《そうだなあ・・・昔知り合いのプリーストに教えて貰ったんだが・・・プリーストはPTの生命線だから、一歩引いた位置で全体の流れを把握しつつ、攻撃受けた人に回復をかける、自分は攻撃が届かない位置に立つ、後衛攻撃職は脆いから特に注意しつつ、必要に応じて後衛攻撃職を誘導。後衛攻撃職から敵のタゲ奪って、前衛にタゲ移す、常に魔力は切らさない、だったかな》


《た・・・大変ですね》


《更に、ステータスを向上させる祝福や、気力魔力移動速度を上げる羽といった補助スキルもあって、廃狩りになると常に切らさないらしい。これらは詠唱と、スキル使用後のクールタイムが長いので、できればまとめてかけたいが・・・戦闘中は支援、戦闘後は前衛がさっさと動き出して散開とかすると、泣きたくなるらしい。俗に言う、前衛に羽は付けられない、って奴だね》


《あああ・・・》


ユウタが青くなってる。


《と言うのを、1人でやるのはブラック職場過ぎるので、回復職2人にして分担するのがいいよ。後、前衛はちゃんと支援、バフを受ける。逃げない》


》》


《僕には何かありますか?》


エレノアがわくわくしながら聞いてくる。知らないって?!


《これも昔知り合いに聞いた話だけど・・・前衛はアタッカー、安定してダメージを与える。魔法職は、一気に形勢逆転させるメイン火力になる。何処でどれだけ、何処に火力を投入するか、判断する必要がある。大火力が必要でない状況なら、牽制や、前衛から遠い敵を一撃で葬ったり。敵が来ない位置取りを気をつけて、敵が来たら、前衛とかの頑丈な人にタゲを移すようにする。前衛がタゲ取ろうとしてるのに前衛から逃げたりしたら駄目。後は・・・魔法を使う時のイメージを覚えて、直接イメージを発動させれば詠唱短縮や無詠唱に繋がる。イメージを改変して効果変えたり、組み合わせて新しい魔法作ったり。一般スキルにも補助スキルあるのでそれも取って。相性のいい属性があるならそれを伸ばした方が良かったり。後は装備品で属性値上げるとか・・・こんなところでいいかな?》


《ありがとうございます!》


横でユウタもこくこく頷いてる。咀嚼しているらしい。


《私も聞きたいにゃ!》


トキがぬっと出てくる。・・・盗賊の動きでいいのかなあ。


《シーフとしては、周りを警戒して不意打ち防ぐとか、仲間に警告するとか。後は前衛と同じで、タゲとったり後衛守ったり。完全な前衛職よりは柔いので、他の頑丈な前衛に敵を運んだほうがいいかな。トラップの存在知らせたり、解除したり。鍵の解錠も。マップを見る役目をおったりもする。暗視も使えるね。まあ、今はこの辺全部俺がやっているので、トキさんは前衛の補助と後衛の護衛で。商人としては、荷物運びと収集品の採取だね》


《ありがとうにゃ!ところで、何でシルビアさんは盗賊スキルっぽいことできてるにゃ?》


く・・・こいつ・・・


《一般スキルの組み合わせと工夫、だね》


ごまかせた。

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