新人作家と担当編集

9.新人作家登戸、お友達相互クラスタ議論

19:だから、あいつの作品はいっつもカテエラしてんだって。

20:あれがラブコメとか、冗談やめてくれ。ジャンルをミスリードさせるために使うのは、反則に思うな。ホラーじゃねぇか。

21:そうか? 俺は別にアリだと思うぞ。web小説の自由度をうまいこと使ってる。

22:コンテストでそりゃアウトに決まってんだろ。あと、スレ間違えてんぞ。

23:カテゴリは作者が独断で決めるもん(独断)

24:カテエラなら受賞しねぇだろ。てか、どこがミスリードなんだ。ホラー要素あろうが、ラブコメがメインならラブコメだろ。感情論すぎて草

 26:>>24 あいつはクラスタだろ。評価者見てみろよ。お友達相互とか星爆どうにかならんのかなぁ

27:読者選考だから、星多いのが通るのは当たり前だろ。そこから受賞するかしないかって、編集部が判断するんだから、面白くなかったら落ちるだろ。

28:いや、落ちる落ちねぇ以前に、星稼げねぇ弱小に勝ち目ないのはどうなんですかね。

 29:>>28 星少なくて面白いのも確かにあるが、ノベノベのコンテストは、星が多くてかつ面白い作品を求めてるんだから、そこに文句いうのはお門違いだろ。公募行ってどうぞ。

33:てか、俺の作品のほうが、フォロワー数多いんだが。星つかねぇけど。


35:速報速報 詐欺書籍化だっさ。

36:遅ぇよ。もう結構経ってんぞ。

37:遅速じゃねぇか。

 42:>>35 なぁ、詐欺って何の略だ?

  46:>>42 俺がオレになんたら→俺オレ→オレオレ詐欺→詐欺

   52:>>46 thx

53:補足すると、ラブコメカテのくせに異世界転移する意味で、詐欺でもある。


54:ノベノベ書籍化多くねぇか。もうそろ軍資金、尽きると思うぞ

 56:>>54 同館

59:書籍化っつっても、実際に本出てるのってどんくらいだっけ?

62:星爆、クラスタ、複垢の問題を野放しにしてるからな。売っても仕方ねぇ作品って気づいても、後の祭りだな。コンテスト人口が減っちまうし。

63:くろうに完敗しててワロタ!

64:ノベノベ人口少なスギィ!読者選考の意味皆無っ

 65:>>62 実際クラスタって実在するんか。レビュー見ればちゃんと読んでるって分かるだろ。運営もくろうより厳しいし、不正は即消されるぞ。ノベノベは。

  67:>>65 運営さん、ちーっす。

   68:>>67  運営来るわけねだろww

  69:>>65 火消し、乙です。クラスタの方ですか?

   70:>>69 いや、本人かもww乙www

74:レビューでちゃんと読んでるとか、そんなんは問題じゃねぇんだよ。読みあいしてるってのが問題だ。

76:読みあいが問題って意味が分からんのだが……俺はここにいていいのか。

 77:>>76 帰って、クラスタの星舐めてろよ。

  78:>>77 ぼくちんも舐めたいんだが

82:身内で読んでんなら、なんで星までつけるんだって話だよ。そりゃ、ほかの小説が埋もれる訳だわ。


84:今日も元気にノベノベだべ!

 85:>>84 そうだべ!


86:気になったんだが、詐欺もその『クラスタ』なのか。

88:サキサキは、クラスタのボスだぞ。Twetter見てみろよ。

92:そもそも、Twetterで宣伝するとかありえねぇよ。こちとら、投稿時間とかキャッチコピーとか、死ぬほど苦労してるってのに、pv全然回んねぇんだけど。まっとうに頑張っている俺らを何だと思ってんだか。

 93:>>92 作品にチカラ込めろよ

 94:>>92 いちゃもん過ぎて、草も枯れるわ。

97:時々、火消しっぽいいるけど。お前、サキサキクラスタの一員だろ。内部告発したら許してやるよ。

99:とっととリストアップして、運営に送り付けろよ。サキサキの書籍化をなくすことが、まずの目標だな。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 そこまで読んで、地下chを閉じる。適当にググって、先頭に出てきたスレを見ていたが、いちゃもん野郎が多すぎやしないだろうか。

 幽霊の両親は彼女を助けないのか……と思ったが、幽霊は両親を早くに亡くしていた。


 両親のいない、そんな彼女が大事にしていたSNSやノベノベでの『人との交流』をすべてひっくるめて『不正』と断罪されていると思うと余計に腹が立つ。

 はぁ。昨日から、ずっと気分が悪い。今のスレは、僕の知らない作者の話題とかノベノベの批判とかで。

 よく知らないが『ノベノベ受けする作品』と『くろう受けする作品』って違うんじゃねぇの。僕からすると、そもそも『web小説』は『小説モドキ』であって『小説』とは違うんだけど……

 とまぁ、今回のは少しマシだったが、昨日読んだスレはもっと酷かった。


――こんなん見たら、ぜってぇ本、出さねぇとな。


「……んせい、登戸先生。聞いていますか」

「あっあぁ、すみません」

「一応、会議というかミーティングなんですから。ピシッとしてください」


 今回のゴーストライトはことがことだけに、ミーティングも電話ではなく直接会って、担当編集の山野と行っている。もしかしたら、僕が逃げないように監視しているのかもしれない。

 今回は自分の作品じゃないし、僕の作品を書籍として出すための『踏み台』みたいな……いや、幽霊の作品なのだから、僕の世界だけじゃなく編集のアドバイスも聞くつもりなんだけどなぁ。たぶん、。仕方ないって自覚してるけど……。

 そんな風に思っていると、山野は、


「先生、ミーティングはここまでにしましょう」

「えっ、まだ三十分も経っていないじゃないですか」

「だって先生、ちょっと変じゃないですか。さっきからソワソワして、スマホ見て……」


 確かにそうだった。昨日、幽霊がいなくなったせいもあって、落ち着きがないのは自分でも分かる。

 ただ、山野の口調は怒っている様子ではなく、


「先生……もしかして、これっすか。これ」

「小指立てるって、おっさんですね。山野さん」

「自分でも老けてきた気がするけどよ。オレはまだ、二十代なんだよ。……んで、先生、実のところどうなん?」


 自分で悩んでいたって仕方ないのは、分かるけど。

 自分の内をさらけ出すほど、僕は社交的じゃない。


「オレは先生の編集者だ。初めて会ったときにも言ったが、オレは先生と一緒に作品を創り出していきたい。仲良く、とまでは言わねぇが、相棒としてできることは何でもする。何か悩んでんなら、小説のこと以外だろうとオレは聞くぞ」


 ただ、山野の言葉は、昨日僕が言った言葉に似通っていて。


「……オレ、女のことは詳しいからな」


 最後にそう付け足された言葉に、ムッとした部分はあるが、

 僕は、ここ数日の超常的体験、そして、『俺オレ』の原作者に出会ったことを話す決意をした。


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