それでも僕らは創り続ける

【挿文16】幽ゴス

 登戸は目覚めると、病室にいた。

 彼の目の前には、担当編集の山野がいた。


 山野曰く、『俺オレ』は無事に文マケで販売でき、用意した分は完売したそうだ。

 その後、企画した通信販売も順調らしい。


 登戸はその話をぼんやりと聞いていた。

 入院して、数か月。

 トラックに轢かれ、複雑骨折した足を中心に重症を負ったため、登戸は入院を続けていたのだが、こうして山野と面会するのは久しぶりだった。


――幽霊に会いたい……。


 登戸はそう思った。そう思い続けていた。

 ただ、思うことはできても、結果は変わらない。


――幽霊……成仏できたんだろうか……。


 彼にそれを知るすべはない。

 たとえ、彼の足が回復し、歩けるようになっても、状況は変わらない。

 探しようがないのだ。

 無事成仏した、ということを祈るしかできない。


 端的に言って……登戸は、生きる意味を失った。


 山野が病室から去り、個室には登戸が独りだけになった。

 ふと、彼は考える。



――、『……。


 それを知るすべはない。

 ただ、唯一。それは、


「…………」


 登戸は右手に刺さった点滴の針を抜き取り、震える手で自分の首に針を刺したのであった。



―了―

幽霊とゴーストライター エピローグ 第ニ案

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