概要
歴史小説の王道を今、鮮やかに描き直してみせましょう。
徳川幕府をやり込めた勢いに乗じ、北進する新政府軍。
新撰組は会津藩と共に、牙を剥く新政府軍を迎え撃つ。
武士の時代、刀の時代は終わりを告げる。
ならば、刀を執る己はどこで滅ぶべきか。
否、ここで滅ぶわけにはいかない。
士魂は花と咲き、決して散らない。
冷徹な戦略眼で時流を見定める新撰組局長、土方歳三。
あやかし狩りの力を持ち、無敵の剣を謳われる斎藤一。
京都、江戸、会津へと転戦した、その先にあるもの。
土方は、斎藤は、何を見て何を信じ、何を選ぶのか。
***
シリーズ/単独完結
どちらからでも、どちらかのみでも読めます
【京都・江戸編】誠心誠意、咲きて散れ
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!前作「咲きて散れ」から読んで下さい。でないと、高い確率で後悔する。
前作「誠心誠意、咲きて散れ」に続く新撰組の敗走物語です。
前作よりファンタジー色が薄れ、良い意味で通常の歴史小説っぽく仕上がっています。個人的には本作の方が好きです。
また、前作が専ら斎藤一と沖田総司の語り合いだったのに対し、今回は斎藤一と土方歳三の語り合い。
私は、宇宙戦艦ヤマトの世代ですから、沖田総司や土方歳三の存在は何となく知っていたのですが、斎藤一の存在は本シリーズで知りました。史実に拠ると、戊辰戦争後も生き延びた数少ない新撰組の隊士の一人ですから、彼が主人公となるのも自然は自然です。
でも、元々作者は斎藤一の隠れファンなのかもしれない。Wikipediaで彼の一生を読んだら、香港映…続きを読む - ★★★ Excellent!!!入れば生きて出られない城、アナタなら入りますか?
歴史小説としては軽めの流麗な文体が誘うのは、
死地としか言いようのない絶望的な負け戦。
年末時代劇『白虎隊』をご存知のアラフォー世代には
トラウマに近い記憶をお持ちの方も多いかも知れません。
あの時の森繁久彌、よかったなあ。
突きつけられる矜恃を賭けた二者択一、
生き残った二人の新選組幹部は、
それぞれに自分の戦場を選びます。
幾度も繰り返されたテーマですが、
ファンタジックな味付けもあって
歴史小説は苦手という方にも
入りやすい物語に仕上げられています。
逃げ場なしの選択を迫られた時の心情を
是非体験してみて下さい。
誰もがいずれ何らかの形で、
同じような選択を経験せざるを
得な…続きを読む - ★★★ Excellent!!!士魂に生き、士魂に散ったつわもの達の物語
前作に引きつづき、拝読しました。
江戸城無血開城後、官軍に追い詰められていく会津軍と新撰組の物語です。今回も、斎藤一と土方歳三の二人によって、交互に語られていきます。
江戸幕府はなくなってしまったのに、何の為に戦うのかーー。否、何の為に生きるのか。
圧倒的な量の武器と兵力を備えた薩長土肥連合軍に追い詰められていく、会津軍の闘いぶりを読み進めるにつれ、そんな疑問が繰り返し頭に浮かびました。本当に悲惨です。特に、守ると約束したのに守れなかった会津の人々のために、自決の道を選んだ白虎隊の少年たちの断末魔の苦しみは、涙なしには読めませんでした。味方の足手まといになることを避け、自ら死を選ぶ女性や年…続きを読む - ★★★ Excellent!!!斎藤一と土方歳三、それぞれの負け戦での生き様を見よ
自分は、歴史小説はほとんど読まないどころか、日本史に全くといっていいほど興味がない人間です。
それなのに、この方の小説には否応なく惹き込まれてしまいます。
それは何故かなと考えると、歴史の教科書が出来事や人名の無味乾燥な羅列であるのに対し、氷月さんの小説の登場人物たちが、血肉の通った生身の人間に感じられるからに他ならないでしょう。
彼らの体温や、息づかいさえも感じられるように思えます。
前作でもそうでしたが、氷月さんの小説を読むのはとてもしんどい。
そのしんどさが魅力なのです。
負けの気配が濃厚に漂う戦いの日々の中で、彼らが何を見聞きし、感じ、考え、諦め、信じ、選んだのかが胸を抉るほどに迫…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読み手をインスパイアする力作。間違いありません。
たくさんの小説を読んできた。今思えば漱石の「坊ちゃん」を読んだ小学生の頃からずっとそうだったのではないかと思うが、いい作品を読了した後は、なんだか落ち着かなくて立ち上がったり、意味もなく歩き回ったり、ほかにしようもなくてトイレに行ったりしたものだ。
今思えば、それは作品から何かの力をもらってそれが御しきれずにいたのだろう。別の言い方をすれば〝インスパイア〟される感覚である。
うまく言い表せる気がしないのだが、そこで体験した小説の言葉なりイメージの向こうに、自分がまだ見ぬ何かを垣間見られそうな、思ってもみなかったものを作り出していけそうな、そんな高揚した気分にさせられるのだ。
「幕末レク…続きを読む - ★★★ Excellent!!!新撰組の誇りも、会津の誇りも、決して失われはしない。
会津藩とともに、新政府軍を迎え撃つ新撰組。
土方歳三と斉藤一は劣勢の中、いかにして、何のために戦うのか。
生まれつき青い環の力を持つ者と。
後天的に赤い環の力を得る者、というファンタジー設定のある歴史物。
環を断てるのは、環を持つ者だけ。
環の力、それだけで歴史的趨勢を変えられるわけではない。
それでも、敵を倒すために、大切な者を守るために。
呑みこまれて妖堕ちする危険を冒してでも、環を欲する者は多い。
【京都・江戸編】の視点人物は、二人とも環を持つ者でした。
だから。
持っていないものでは、介錯してやることすらできない。
という事実を、本作でひしひしと感じた……。
『八重の桜』は見て…続きを読む - ★★★ Excellent!!!新撰組、会津へと敗走す
京都を撤退し、会津にて新政府軍との戦いに身を投じた頃の新撰組のお話です。
新撰組側視点からの歴史小説かと思いきや、歴史上の人物達が炎を操り、治癒を行い、法力の盾まで展開するといったエンタメ要素を持ち込んでいます。松平容保がシールド展開するとか間違いないのです!
とはいえ、本作の真骨頂は、その丹念で誠実な歴史上の出来事への向き合い方。バトルや恋愛模様やちょろちょろする小動物や鬼の副長のケツなどのエンタメ要素をちりばめながらも、史実を下敷きとした骨太の新撰組の物語が展開されていきます。
もちろん、負けます。なぜ戦うのか、なんの旗の下に集うのか、その旗はどう思っているのか、そんな事を考える暇…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ガチ時代小説の空気を保つ、稀有なファンタジー
京を離れてからの新撰組の戦いを追う小説。そう知って読み始めると、本作はたしかにガチの時代小説の文体や雰囲気を持っていて、違和感なく読み進められるだろう。
しかしそのまま読み進めると、驚愕することになる。なにしろ魔物が出る。本作の特異なところは、時代小説の文体、内容のまま、魔物が登場してファンタジー展開するところ。「ただ織田信長が出るだけで、内容はなんちゃってファンタジー」的なよくある奴ではない。
土方歳三たちの戦いがどういう決着を迎えるのか、歴史的事実をどこまで取り込むのか――。興味を覚えたら、各話を辿るしかない。文体もしっかりしていて読みやすいですよー。