斎藤一と土方歳三、それぞれの負け戦での生き様を見よ

自分は、歴史小説はほとんど読まないどころか、日本史に全くといっていいほど興味がない人間です。
それなのに、この方の小説には否応なく惹き込まれてしまいます。
それは何故かなと考えると、歴史の教科書が出来事や人名の無味乾燥な羅列であるのに対し、氷月さんの小説の登場人物たちが、血肉の通った生身の人間に感じられるからに他ならないでしょう。
彼らの体温や、息づかいさえも感じられるように思えます。

前作でもそうでしたが、氷月さんの小説を読むのはとてもしんどい。
そのしんどさが魅力なのです。
負けの気配が濃厚に漂う戦いの日々の中で、彼らが何を見聞きし、感じ、考え、諦め、信じ、選んだのかが胸を抉るほどに迫ってきます。
何度も涙が流れました。
何度も心をまるごと持っていかれました。
前作同様に、読んだ後しばらく放心状態になってしまいました。

男たちの信念や矜持のぶつかり合いも見所ですが、男女の心の揺れ動きも魅力のひとつです。
こういったシーンに限らず、文章の端々にとても色気があるんですよね…。
ぜひこの奥深い小説世界を堪能してみて下さい。

そして最後に。
ケモ耳が生えた土方歳三を読めるのは今作だけ!(たぶん)

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