4-3

「でも本当に良かったんですか? 記念すべき初インタビューが僕で、しかも内容があんなので、ドリンクバーまで奢ってもらっちゃって」

「全然いいよ。私も色々勉強になったしさぁ。今度からは聞く内容をもっと焦点絞って尋ねないと。内容確認のためにスマホで録音するとかもした方がよさげだし。今回はただ駄弁ってただけだったし、もっとちゃんと下準備したほうが良いなって思ったよ」

「あの短時間でそこまで課題点を見つけられるなんて、向上心ありますね」

「好きでやってる事だからね。向上心も沸くさ。覇王で言う筋トレ見たいな位置づけだよ。……うん?」

 不意に花咲さんが首をかしげ、目を細めた。

「どうかしたんですか?」

「いや、あそこの人、うちの生徒かなって」

「どれですか?」

 花咲さんの視線を追う。僕らの進行方向少し先にある歩道橋。その階段を、髪を派手な色に染めたガラの悪そうな連中がゆっくり昇っていた。彼らに囲まれるようにして歩いている生徒の制服は間違いなく僕達が今着ている栄華高校の制服と同じものだ。

「こっからだとよく見えないなぁ」花咲さんは目を細める。「構図だけ見たら他校の生徒にうちの生徒が絡まれてるって感じだけど」

「だとしたら助けないと」

 ガラの悪い団体はウチの生徒を取り囲んだまま反対側の歩道へと向かっている。そこで、僕は前にもこの状況をどこかで見たことが歩きがしてはっとした。

「あれは、もしかして……」

「どったの?」

「江崎君じゃないかと思いまして」

「江崎? ……そう言われれば確かに似てる」

 彼を取り囲んでいるヤンキーたちも良く見れば以前駅前で遭遇した人たちだ。そうなると今僕達が見ている光景の構図は大きく意味合いを変えてくる。

「彼の周囲にいるのは一見ガラが悪いですけど、江崎君の中学時代の友達らしいですよ。部活が一緒だったそうで」

「部活っていうと……」

「サッカー部らしいです」

「へぇ」

 江崎君は金髪の男子に肩を組まれ、歩道橋を歩いている。抵抗している様子がないので多分談笑しているのだろう。友人関係と見ると別に違和感はない。

 でも。

「友達じゃなくて、友達みたいなもん、だったかな」

「何それ。覇王が思う私との関係性?」

「やめてくださいよそんな悲しい事言うの。いや、以前江崎君から彼らを紹介してもらった際そう言われたんですけど、人を紹介するときに友達みたいなもんって言い方をするのはどういう心情なんだろうって」

「何か複雑な事考えてんね。覇王なんだからそんな細かい事気にすんなよ」

「そうは言っても昔は小心者のイジメられっ子ですから。人の機敏とか、言葉尻とか、ついつい拾っちゃうんですよ」

「なるほどね。……そうだな、私が思うに二通りあるよ」

「二通り?」

「うん。一つは自分にとって特別な存在であるとき。友達って断言するのも気が引けるけど大事な人って言うのも気恥ずかしい、みたいな。恋い慕ってる幼馴染を嫁って言うのは恥ずかしいよな、とか」重症である。

「そういうのじゃない気がしますね。それで、もう一つは?」

「そうだね、なんて言ったらいいかな」

 花咲さんは少し考え込むように首を捻ると、続けた。

「友人関係である事を認めたくないときとかはそう言うんじゃないかな」

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