おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会【第四回】



第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!

……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。

反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
最終回となる第四回では、こちらの5作品を講評いたします。

『もう一度会いたくて』 作者 紫藤 咲
『孕み人魚と惡の華』 作者 陸一潤
『誰が吸血鬼を殺したか?――または探偵ルードヴィッヒの推理』 作者 冬野ゆな
『竜の足元で魂は物語を紡ぐ【怪】』 作者 風嵐むげん
『竜斬の理』 作者 齊藤 紅人


【エントリーNO16】
過去も、今も、未来も、愛するあなたのためだけに――!!
『もう一度会いたくて』 作者 紫藤 咲
あらすじ:
「すべてを終わらせに行こう」
突然切り出された言葉に私は息を飲んだ。彼の眼差しに、強く差し出されたその手に、私は抗うことは出来なかった。
あなたに言えない秘密が私にはある。
十年前に忽然と姿を消した婚約者の存在。
もう一度会いたい……!!
密やかな想いを胸に秘めたままでいる私に突き付けられる現実は、想像以上に過酷なものだった――
ほどかれていく秘密の先にあったのは、あなたの大きな愛だった。
過去も、今も、未来も、愛するあなただけのために命を懸ける……これは純粋な愛の物語。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
センシティブな物語だと思わせておいて、実は正統派ミステリであり、さらにはSFであるという構成に驚きました。
繊細な言葉づかいと、それをいい意味で裏切る物語運び――この組み合わせの妙は、著者の味として売りにできるものと思います。
主人公の心情がていねいに描き出されているのもいいですね。彼女の心の動きがはっきり見えていることで、自然と感情移入ができました。

◆改善すると良くなりそうな点:
特に前半部、ドラマ性及び真実解明へ繋がる伏線が大きく不足しています。
隠しておきたい著者の気持ちは理解できるのですが、この構成だと、賞では「冗長」と評価される危険性が大きいです。
それはもったいない話ですので、ドラマチックな伏線エピソードを惜しまず散りばめ、物語を彩ってください。
また、段落分けの荒さが目につきますので、ひとつの動作から別の動作に移るときは段落替えするほうがいいですね。


【エントリーNO17】
目玉は真っ先に溶けた。いつのことだったかは、もう忘れてしまったけれど
『孕み人魚と惡の華』 作者 陸一潤
あらすじ:
誰かが嘘をついている。
ひとり。三途の川を漂う船頭がおり。
ひとり。かつて、人間に恋をした天女がおり。
ふたり。かつての自分の姿を亡くした亡者がおり。
ふたり。山を降りた悪党と、さらわれた人魚がおり。
四人。
ーーーかつて山で生きた悪党と、人魚と、ふたりの子供がおり。
人間やめて三十路の秋。
黄泉路をいく人魚がふたり。
最後の記憶を思い出した屍もふたり。
夢かうつつか。この走馬燈は誰の記憶か。
この空舟が流れ着くのは、逆巻きの輪廻、二又に別たれた悪の路……。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
まさに幽玄という言葉が相応しい作品です。
人魚、雪女といった日本人が聞き慣れた怪異に独自の解釈を加えて新しい妖怪像を築き上げた奥深い世界観に飲み込まれそうになります。
物語が展開して事の真相が明らかになっていくとともに、また次々と謎が持ち上がり、荒波のように繰り返して押し寄せてくるストーリー構成に翻弄されました。
文章もただおどろおどろしいだけでなく、どこか儚げで美しさがありました。まるで白昼夢を見たかのような異界感が見事。

◆改善すると良くなりそうな点:
ライトノベルとして評価する場合、作品にキャッチーさが足りないように思います。
最初からテーマに理解や興味のある読者ばかりではありません。さまざまな読者の興味を惹けそうな物語のフックを考えてみてください。
物語の着地点が読みづらいタイプの作品ですので、話を圧縮して適度なところで話を区切って結論をまとめるようにしましょう。
作者の思うこと、語りたいことが先走っている感があります。すべてを無理に詰め込まず、小分けにすることで読者も受け入れやすくなります。


【エントリーNO18】
旧聖堂で見つかった死体は吸血鬼なのか? ファンタジー×ミステリー
『誰が吸血鬼を殺したか?――または探偵ルードヴィッヒの推理』 作者 冬野ゆな
あらすじ:
歯車と水晶が都市を廻す、蒸気機関全盛期のヨーロッパ。
どれほど光が闇を照らそうと、色濃く残る影に魔物は潜む――小さな町ノースウェアの旧聖堂で発見された死体は、凶器である銀の剣を中心に焼けただれ、聖水が散乱していた。
町の中心人物だったアドルフ・ヴェンデルスは吸血鬼なのか?
死体を巡って警察の捜査は中断、吸血鬼ハンターが調査を開始。そんな中、息子であるテオバルトは父親が人間であることと、殺人事件であると主張。魔術絡みの事件を専門に扱うグリム探偵協会へ調査を依頼する。
はたして探偵ルードヴィッヒは奇妙な死体の謎を解けるのか?

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
探偵ものという王道の物語を、著者の持ち味を生かして調理できている点に感心させられました。
ひとつの謎を解き、次の謎へ至るための情報を積み上げていく……この過程をしっかりと描けているのはすばらしいですね。
推理系は解答よりもそこに至るまでの式が見せ所ですので、このように過程の確かな作品は安心して読み進めることができます。
賞でもプラス評価を得られますので、常にお心がけいただければと思います。

◆改善すると良くなりそうな点:
事件の軸、ここでは特に「起こり」の部分へファンタジー要素もスチームパンク要素もからめられていないのが第一の問題。
物語において、世界観の提示は冒頭部で行うべきものです。ここでそれができていないことが、一種の後出し感に繋がっているのは実にもったいない。
もちろんミスリードでかまいませんから、設定は真っ先に、物語の主軸になる事件とからめる形で書き込みましょう。続く展開にも説得力が増します。
第二の問題は、キャラクターの魅力が乏しいことです。キャラの心情や魅力を提示できるエピソードを、著者からすればやりすぎなほどの量挟んでください。


【エントリーNO19】
有名進学校で起きた連続怪死事件。犯人は黄金色に輝く巨大な竜だった――
『竜の足元で魂は物語を紡ぐ【怪】』 作者 風嵐むげん
あらすじ:
――魂とは計測可能な物質である。肉眼では捉えられず、触れることは出来ないが、確かに実体を伴って存在する。よって、魂から生まれた願いや想像もまた物質であり、それらが一点に集結すれば、想像は認識可能な現実となる――
夢宮市立花筏学園。国内では有名な進学校に突如、連続怪死事件が起こった。
およそ人の手で行われたとは思えない手口に、不気味な影が重なり、狂気は徐々に日常を侵していく。
小説家を志す女、勇希サネ。
彼女は事件の被害者となった恋人を生き還らせる為に、事件を終わらせる為に、運命を紡ぎ直す力を持つ黄金の『竜』を蘇らせることを決めたのだが……。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
学生が集まる離島の学園で巻き起こる怪奇事件というシチュエーションが作品にハマっていて、小さな箱庭のような雰囲気作りがうまい。
年頃の少年少女らしさ、学校生活の空気をよく表現できていたと思います。
誰もが絵空事と思っていた雷竜様の存在が、日毎に現実味を帯びて生徒たちに畏怖を与えていくスリル展開が心胆を寒からしめます。
些細な日常の描写も丁寧に描かれていてスムーズにイメージがわきました。

◆改善すると良くなりそうな点:
後半にかけてストーリーの重厚感が増していくのはよいですが、読者にストレスを与えがちなので、どこか途中で読者を和ませる緩みを作りましょう。そうすることで緊張感もより引き立ちます。
脇役のキャラが濃いのは面白いのですが、肝心の主人公であるサネが力負けしています。
もっと困難な逆境に立ち向かっていけるような強い個性を与えてもいいでしょう。
雷竜様が顕現するプロセスがやや荒唐無稽に感じます。読者を納得できるように辻褄を合わせてください。


【エントリーNO20】
巨大な竜を手術せよ!
『竜斬の理』 作者 齊藤 紅人
あらすじ:
王国と契約を交わす古代種の竜の腹部に大きな腫瘍が見つかった。破裂すれば命が危ない。
宮廷魔術士ヅッソは前例のない巨大な竜の手術を決断する。
通常の刃物では傷つけることさえできない竜の皮膚を切開し、未知なる腫瘍を取り除き、適切に縫合するためには何が必要か?
新興国の妨害を回避し必要な道具を集め、再現不可魔法”竜斬”を求め、仲間とともに東奔西走する。
剣と魔法の中世ファンタジー長編。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ネタがとてもいいですね!
竜の手術という「答」に至るための「式」をあの角度から打ち出してくるとは、本当にお見事です。
あらすじを見た瞬間、読みたいと思わせられるだけのオリジナリティと期待感がありました。
緻密ながら小難しさを感じない設定も好印象。
謎理論はその場ではそれっぽく見えますが、結局は穴を埋めきれずに破綻するものですので、今後もぜひ意識して作品に盛り込んでいただきたく思います。

◆改善すると良くなりそうな点:
文章の結びが「る」の連続だったり、「た」の連続だったり、単調な点が気になります。
リズムは出るのですが、がっつり読ませる系の物語に文章表現の多様化は必須。ぜひご注意を。
また、物語においてドラマではなく、淡々と記されたキャラの一挙一動を見せてしまっていることも問題です。
情報を取捨選択してひとつの動作に描写を絞り、そこに込められたキャラの心情を書き込んでみてください。見せるよりも魅せる演出を。


今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。

第3回カクヨムWeb小説コンテストは12月1日から開催します。

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