第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!
……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。
反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
後半戦となる第三回、今回の講評はこちらの5作品です。
・『フラットリリーはきらめかない -オタクな二人と同人誌-』 作者 坂神慶蔵
・『Re :Life -異世界転生したら嫁ができました-』 作者 兎神 入鹿
・『東京歌姫 (トウキョウ ディーバ)』 作者 RAY
・『さよならアリア』 作者 原田はとる
・『極大魔法戦争マジックシューターズVR』 作者 告井凪
【エントリーNO11】
アイドルアニメにハマったら、オタクな女の子と同人誌作ることになった。
『フラットリリーはきらめかない -オタクな二人と同人誌-』 作者 坂神慶蔵
あらすじ:
笠霧南高等学校一年生の冴城侑也(さえき・ゆうや)は、大人気アイドルアニメ『ラブトゥインクル』のファンだ。番組放映終了後も、同人誌を買い続けるなどして、充実のオタク生活を送っていた。
ところがある日、冴城は下校時にクラスメイトである織枝静葉(おりえ・しずは)から呼び止められ、思いも寄らぬ提案を持ち掛けられる。
「冴城くん。私と一緒に、同人誌を作りましょう」
知らぬ間に冴城は、地元の同人ショップに出入りしているところを目撃され、織枝にオタク趣味を把握されていたのだ。
そして織枝は、冴城を見込んで、同人誌制作を手伝って欲しいという。
実は、彼女もまた熱心な『ラブトゥインクル』のファンで――
つまり、二人は互いに「同好の士」だったのである。
何でも織枝は、夏休みに地元で開催される小規模な同人誌即売会で、自分たちが作成した新刊を頒布したいらしい。
やがて冴城は、織枝の勧誘に引き込まれ、同人誌制作に協力を決意する。
とはいえ、まるで過去に創作経験がないせいで、初めての同人活動は何かと戸惑うことばかり……
果たして、二人は数多の困難を乗り越え、アイドルアニメに対する愛と情熱を、原稿用紙の上に結晶化させることができるのか!?
◆点数評価:
・オリジナリティ:3
・キャラクター:4
・ストーリー:4
・世界観:3
・文章力:4
◆良かった点:
オタクな男子高校生が可愛い女の子と「美少女アイドルアニメ」の同人誌を作成するという近年の流行を捉えたテーマがよかった。
地味系女子が私服では清純派美少女に大変身するギャップが萌えます。
同人誌作りを通して、自分の好きなものに妥協しない意識の高いオタク二人の熱意が伝わってきました。
初挑戦が力不足に終わってしまった寂寥感と、ほんの少しの達成感、悲喜交交な結末が心を揺さぶりました。
文章も読みやすく、同人誌制作の過程もわかりやすく説明できていたと思います。
◆改善すると良くなりそうな点:
主要登場人物が少ないので、世界観が狭く感じます。また同人誌完成までが順調すぎて物足りなく感じます。
例えば、推しカプの異なるライバル同人作家や、創作活動に無理解な親など、二人にとっての壁や敵を設定することで展開も盛り上がりますし、読者の応援や共感を味方につけられます。
二人の意見を対立させてから、和解させ、より絆を深める「雨降って地固まる」演出を盛り込んでもいいでしょう。
物語にさらに起伏を作って恋愛イベントを積極的に起こすようにしてみてください。
【エントリーNO12】
10,000pv やっと突破!応援ありがとうございます!
『Re :Life -異世界転生したら嫁ができました-』 作者 兎神 入鹿
あらすじ:
駄女神の手違いで死んだ須藤 檸檬(ライム)は異世界で人も魔族も亜人種もみんな笑って暮らせる町を作るために奔走するハートフルファンタジーライフです!
◆点数評価:
・オリジナリティ:3
・キャラクター:3
・ストーリー:2
・世界観:2
・文章力:3
◆良かった点:
ゴブリンやオーガ、スケルトンなど、一般的には嫌われがちなモンスターをあえてヒロインにおく着眼点がよかったと思います。
魔物だからと差別せず、人間と魔物の共存を目指す主人公の博愛精神に好感が持てました。
牧歌的なスローライフ風景がほのぼのとして、次々と新ヒロインが登場して賑やかになっていく村のハーレムぶりが微笑ましかったです。
文章テンポがよく、キャラクター同士の掛け合いも活き活きとして、ストレスなく読みやすかった。
◆改善すると良くなりそうな点:
モンスター娘は最近のトレンドではありますが、その種族にしかない魅力や萌え要素をもっとアピールするとよいでしょう。
現代知識を取り上げる場合は資料による裏付けを得るようにし、また土台となる異世界の時代観をさらに練るとよりリアリティが増すと思います。
プロット通りに進行させるためか、キャラの言動がやや性急で唐突に思える部分があります。焦らずに自然体になるように心掛けましょう。
顔文字や特殊文字の制限はありませんが、乱用するとクドくなりますので、ここぞというギャグシーンで効果的に用いましょう。
【エントリーNO13】
東京の火消しと江戸の歌姫が出会うとき――物語は始まる
『東京歌姫 (トウキョウ ディーバ)』 作者 RAY
あらすじ:
人は時として出会うはずのない誰かと出会う。
その中には時空を超えた出会い――「奇跡」と呼ばれるものもある。
そんな出会いを「偶然」と言う人もいる。
しかし、それは偶然のような「必然」――出会った意味は必ずある。
「渡 清志郎」と「シオン」の出会いもそうだった。
江戸時代から続く火消しの家系・渡の末裔で消防業務に従事する清志郎は、江戸時代に端を発する「ある出来事」に遭遇する。
日常が非日常に変わった瞬間、数百年の時を隔てて開かれる、運命の扉。そして、そんな運命を変えようとする、江戸の歌姫シオン。
江戸と東京を舞台に繰り広げられる、火と水の戦い。
過酷な運命に翻弄されながら戦いに身を投じる、清志郎とシオン。
これは、いつも真っ直ぐな気持ちと熱い心を忘れない二人の時空を超えた物語。ぜひご覧ください。
◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:4
・キャラクター:3
・ストーリー:3
・世界観:3
・文章力:2
◆良かった点:
時代を超えてひとつの事件が結び合うという設定に目を惹かれました。
発想はなにものにも勝る武器ですから、今後もどんどんネタを打ち出していただきたいと思います。
物語の軸を成す謎、そのキーマンとなるキャラの正体を追いかけていく構成もいいですね。
このように読者の目を物語の先へと引っぱることのできるしかけは、審査でも「構成がうまい」ということでプラス評価がつきやすいものです。
◆改善すると良くなりそうな点:
ダッシュ(――)や三点リーダ(……)の多用が目につきます。
著者にとっては余韻や間を表現する手段なわけですが、これらに頼り過ぎる文章はそれだけ非テクニカルで稚拙なものだと判断されます。これらに頼らず、明確に情報を伝える文章を心がけてください。
説明が長く、くどいことも気になりました。特にセリフで延々と語られてしまうと、読者は物語への興味を失い、冷めてしまいます。
説明は最低限に絞り、セリフと地の文で自然に伝わるよう配置しましょう。
【エントリーNO14】
さよなら、にせもの
『さよならアリア』 作者 原田はとる
あらすじ:
高校二年生の冬。学校に行かなくなって三日目、東雲まりあは突然自分の中に入り込んできた「ありあ」と名乗る人物に乗り移られてしまう。
ありあは既に死んだ人間であり、所々記憶をなくしながらも、まりあの通う高校に未練があると告げてくる。
それが何なのか確かめたいというありあの言葉と、度々自分の体を好き勝手に使うその態度にまりあは困惑を隠せず、その存在を迷惑に思う。
ありあを受け入れられないまま、まりあは友人であり、彼女にとって「重い存在」となっていて避けたい相手である少女・森久保来美と再び関わるようになり、その心に苦い思いを再び溜めていく羽目になる。
そして、それは最悪な形で爆発し、彼女の口から飛び出してしまうのだった。
他人や家族に都合のいい自分を見せて、本音を隠してきたまりあと、孤独故に人との繋がりを求め、一つの愛を追い求めようとしたありあの「本当」を探す物語。
◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:3
・キャラクター:3
・ストーリー:3
・世界観:2
・文章力:2
◆良かった点:
情感のある冒頭部が実にいい「つかみ」になっていました。
冒頭部は作品の顔――第一印象を決める重要ポイントです。ここで読者の目をつかめるのは強いですから、少々あざといくらいにやってやろうと意識していただければ。
視点をブレさせず、主人公に固定できているのもいいですね。
小さなエピソードのひとつひとつにまで主人公の感情が行き渡っていて、それが読者の共感を呼ぶ効果を演出できていました。
◆改善すると良くなりそうな点:
性別の異なる相手が自分の中に入ってしまった!その異常事態に対する主人公の感情の動きが薄いため、ご都合的に見えてしまっています。
この「著者の都合」は、本来作品が受けられるはずだった評価をぐっと下げてしまいますので、まずはそのキャラの自然な感情とはどうあるべきなのか(驚くのか、とまどうのか、さくっと受け入れるならなぜそれができるのかの背景設定をどう説明するか)? を第一に考えてみてください。
また、主人公の動作や感想をていねいに書き込もうとしすぎる余り、かなりの冗長感があります。なにを書くべきか、はぶくべきかの取捨選択を。
【エントリーNO15】
ダイブじゃないVRゲームで、主人公がチームメンバー集めて頑張る青春物語
『極大魔法戦争マジックシューターズVR』 作者 告井凪
あらすじ:
「キミが負けたのはね、魔法の使い処が悪いのと、正面から敵に突っ込んじゃうからだと思うなっ! それから――」
ある日、少年がゲーセンで連敗して落ち込んでいると、可愛らしい女の子に声をかけられた!
慰めてくれる――わけではなく、少年の敗因を語り、ゲームについて熱く語り始めたのだった!
そんな羨ましい――もとい、変わった出会いをした、少年と少女。
沖坂晃人と早瀬理流那は、共に魔法使いの頂きを目指すようになる。
もちろん『極大魔法戦争マジックシューターズ』というゲームの中で。
この物語は、そんな彼らとその仲間たちが紡ぐ、青春の物語であり。
……何故か、VR空間が現実のように見え始める、主人公の物語だ。
◆点数評価:
・オリジナリティ4
・キャラクター:4
・ストーリー:4
・世界観:3
・文章力:3
◆良かった点:
VRゲームという題材が現代の流行を捉えていて、プレイしてみたくなる魅力がありました。
ヒロインが多く、それぞれの可愛らしさが現れていて、シリアスなドラマや熱いバトルの最中でも華やかな雰囲気が楽しくなりました。
ゲーマー特有の精神性や文化がよく表現されていて、プレイ中の暴言や、すれ違いによるチーム分裂など、対戦ゲームのあるあるネタが共感できました。
キャラ同士の掛け合いのテンポがよく、ストレスを感じずに読みやすかったです。
◆改善すると良くなりそうな点:
個性的な女性陣に比べ、主人公のキャラが負けています。ゲームへの熱意やユニークな動機付けを与えるなどして「主人公らしさ」を作りましょう。
よりゲーム性や戦略性を高めましょう。
さらにファンタジーに寄せて、魔法の道具やモンスターを加えたり、個々の役割を魔法剣士や黒魔術師などの職業にしたりするとイメージが掴みやすくキャラも立ちます。
会話が弾んでいるぶん、地の文の薄さが気になりました。情景描写と人物描写に注意してディテールを詰めましょう。
敵味方の状況や位置関係は丁寧に説明しましょう。MOBA系ゲームのようにレーンで明記したり、将棋の棋譜のように座標で表記したり、俯瞰的に伝える工夫をしてみましょう。
今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。
第四回の講評は11月30日に公開します。
▼【12/1~1/31開催】第3回カクヨムWeb小説コンテスト
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