第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!
……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。
反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
第二回となる今回は、以下の5作品を講評いたします。
・『帝都つくもがたり』 作者 佐々木匙
・『ブルーウィング・ストライカーズ』 作者 柏沢蒼海
・『ルナティック・ブレイン【-特殊殺人対策捜査班-】』 作者 橋依 直宏
・『狼牙と王下冥喚術師』 作者 鶯ノエル
・『異世界ゲート審査官の日常』 作者 ゴッドさん
【エントリーNO6】
百物語にどこか足りない、夕闇の中の恐怖譚
『帝都つくもがたり』 作者 佐々木匙
あらすじ:
昭和初期の帝都・東京。酒浸りで怖がりの文士・大久保と利に敏い記者・関の二人は怪談を集めるため、あちこちを奔走する。中には本物の怪異も紛れていて……。
◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:3
・キャラクター:2
・ストーリー:3
・世界観:4
・文章力:2
◆良かった点:
レトロティックな世界観が物語の最初から最後まで、きちんと貫かれていたのは好評価。
応募作は世界観が途中でブレてしまうものも多いですので(主にストーリー的な辻褄合わせで)、ここがしっかり構築できているのは評価ポイントとなります。
そして文中で、妙にひねった難読語が使われていない点もいいですね。
誰にでも伝わる言葉を選ぶことはエンタメの基本ですので、ぜひその姿勢を貫いていただきたく。
◆改善すると良くなりそうな点:
セリフに頼り過ぎている印象を受けました。
セリフは心情や感情、情報を端的に見せられる便利なものですが、著者が表現したい作品の雰囲気――「におい」をかき消してしまうものでもあります。
セリフは大事なものに絞って、効果的に配置していきましょう。
そして地の文がほぼ説明、という点も気になります。
「におい」を感じさせる叙情表現や、文字を使ったビジュアル的演出(一行にひと文字だけ印象的なワードを置く等々)などを考えていただくと、完成度はさらに高まります。
【エントリーNO7】
僕らの夢と希望を懸けて、群青の空と紺碧の海を駆ける――
『ブルーウィング・ストライカーズ』 作者 柏沢蒼海
あらすじ:
大陸のほとんどが海に沈んだ世界。
多くの人々が残された大地にしがみつくように生きていた。
それでも人々は争うことは止めることが出来ずにいた。
世界では比較的平和な「ノースポイント諸島」で学校に通いながらも民間パイロットとして働く「レオ・ムラクモ」
各地で転戦している少年傭兵「シュウ・セラフィード」
2人は普通の女子学生の「シイナ・クロス」に巻き込まれる形で、小型戦闘機<シエラ>を用いたエアレースに挑むことになった……
◆点数評価:
・オリジナリティ:2
・キャラクター:3
・ストーリー:2
・世界観:3
・文章力:3
◆良かった点:
まず航空機レースという作品のウリが明確で、格好良くて男性読者全般にウケがよさそうです。
青春を感じさせる青い空と海の島国を舞台に躍動する少年少女の姿が眩しい。傭兵として争いに明け暮れていたシュウが日常の尊さを知り、パイロットとして自分の殻を破って成長していくレオの、両者の変化が描かれていたのもよかったです。
空戦シーンでは臨場感と緊張感にあふれ、大空を自由に飛び回る開放感や爽快感が伝わってきました。
◆改善すると良くなりそうな点:
物語で発展しているのが戦闘機の技術だけなのがもったいない。サポートメカやドローンなど、もうひと捻りSF要素があっても楽しい。
バディものであればシュウとレオの意見の対立や、男同士の友情がもっと見てみたかった。例えば、シュウを冷徹な現実主義者とするなら、レオを熱血漢の理想主義者のようにもっと対比させるキャラに描くと互いの個性が引き立つと思います。
地の文が冗長化する傾向があります。会話文を交ぜてテンポを良くし、専門的な説明が淡々と続かないようにしてください。
【エントリーNO8】
あなたは本当に一度も、【人を殺したい】と思ったことないですか?
『ルナティック・ブレイン【-特殊殺人対策捜査班-】』 作者 橋依 直宏
あらすじ:
2042年、ある『政策』によって、世界一安全な国となった日本。
父の死をきっかけに刑事となった三輪蕗二は、念願の警視庁へ異動する。しかし、そこで待ち受けていたのは、蕗二最大の敵≪犯罪者予備軍・通称ブルーマーク≫だったー。
人は、なぜ人を殺すのか。
誰も口にしない禁忌と人間の狂気を≪ 視る ≫。
その答えを知ったとき、あなたは目を背けずにいられるか。
ここで描く事件、悲劇、未来……全て【あり得る】!
◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:3
・キャラクター:2
・ストーリー:3
・世界観:3
・文章力:2
◆良かった点:
作品から匂い立つ雰囲気がありました。これからハードでタフな物語が始まる、ということが数行で伝わってきました。
このことがもたらす期待の高さは、審査でもかならずプラス要素となりますので、ご自身の武器として大事にしていただければと思います。
そしてウェットなテーマと、海外の刑事ドラマを思わせるドライな展開が両立しているのもおもしろい。著者の持つセンスがしっかりと感じられました。
◆改善すると良くなりそうな点:
表現のエッジを立てようとしすぎて、むしろ陳腐になってしまっている文章が多々目につきます。
基本的に読みやすくわかりやすい文章を心がけ、見せ場で一文、印象的な表現をする。
それだけで大きく評価が変わる点ですので、ぜひ心がけていただければと思います。
次にキャラクター。かっこよさを出そうとして上滑りしてしまっている感を受けました。
個性はセリフだけで表現せず、地の文による動作表現(しぐさ等々)や心情描写で補強してあげると際立ちます。
【エントリーNO9】
少女と奴隷武闘士の少年が出会うとき、壮大なる運命の歯車は回り出す――。
『狼牙と王下冥喚術師』 作者 鶯ノエル
あらすじ:
「――名はエリカ・S・ブラックバーン。こう見えて王下冥喚術師をやっている。よろしくな、レオ・バイマイスター」
奴隷武闘士だったレオは、ひょんなことから小便臭いガキ、エリカにその身を買われて、異邦の逆徒と戦う王下冥喚術師付きの狼牙となった。
母であるアンネリーゼの魂を収奪した異邦の逆徒の長、炎髪の戦駆天姫への復讐を誓っていたレオに、それは正に僥倖。
しかしレオは知らなかった。己の私怨が世界の趨勢に影響を与えるトリガーだったことを。
王道のヒロイックファンタジー、ここに胎動す――。
◆点数評価:
・オリジナリティ:2
・キャラクター:3
・ストーリー:3
・世界観:3
・文章力:4
◆良かった点:
北欧神話をベースに独自のファンタジー世界を再構築しようする工夫が見られました。
駆け出しで世間知らずなエリカとそれを見守るレオの姿が仲の良い兄妹のようで和みましました。
エリカの力の秘密が明かされるにつれて話のスケールが広がって、先に待ち受けるルカとの戦いを盛り上げていく展開の流れがよかった。
最初はお堅いイメージの王道ものと思っていたのですが、キャラの掛け合いが弾むようで過酷さや困難を意識させない文章がよかったです。
◆改善すると良くなりそうな点:
世界観にもっと「異世界らしさ」があるとよかったと思います。
例えば、獣人や妖精のような異種族であったり、空飛ぶ島のような幻想的な土地であったり、その世界に訪れてみたくなるような魅力を考えてみましょう。
主人公とヒロインの関係に必然性があるとさらによいでしょう。
二人を衝突させてから和解させたり、あるいは絆が増すと戦闘力も増すとか、主人が死ぬと護衛役も死ぬなど、能力に制約を加えたりすると恋愛やバトルにも緊張感が出て読者の応援を引き出せます。
【エントリーNO10】
変人審査官 VS 迷惑異世界人! 勝つのはどちらだ!?
『異世界ゲート審査官の日常』 作者 ゴッドさん
あらすじ:
遠い未来の日本にて、異世界へ通じる門が発見されました。
その結果、いつでも異界から色んな人(?)がやって来るようになります。
しかし、その中でこの世界に危害を与えそうな人物は入界拒否をしなくちゃいけない訳で、人間の科学力を用いてそのチェックを行います。
あなたもこの職場で働きませんか?
◆点数評価:
・オリジナリティ:5
・キャラクター:4
・ストーリー:3
・世界観:5
・文章力:4
◆良かった点:
何もかもがユニークで他に類をみない作品。
異世界と現代社会のギャップから巻き起こる事件や大騒動が笑ってはいけないのに思わず笑ってしまう独特な世界観が面白い。
主人公が無気力無感動にみえて思いやりや芯がある不思議なキャラクターであり、異世界人たちもキャラが濃くてツッコミが間に合わない。
ほとんど審査ゲートの場面しかないのに、門の向こうの異世界の情勢が変化していくのが読み取れてちゃんと世界観の広がり感じる。
ストーリーは笑いあり涙ありで起伏もあり、読者を翻弄させる怒涛の急展開が素晴らしい。
◆改善すると良くなりそうな点:
きわどい描写やバイオレンスな展開が多いため、やや読者を選びそうです。もう少しマイルドにすると読者層も広がると思います。
キャラクターの人物描写が簡素に思います。ヒロインのビジュアル面の可愛さや魅力をしっかり伝えましょう。
ロゼットと恋人になるまでが駆け足気味なので、文化の違いで気持ちがすれ違ったり、それまで気づかなかった相手の一面を発見したり、もっと恋愛イベントを盛り込みこんで、お互いに歩み寄っていく情景を厚く描きましょう。
今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。
第三回の講評は11月29日に公開します。
▼【12/1~1/31開催】第3回カクヨムWeb小説コンテスト
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▼おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会
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