カクヨムコン歴代応募作品講評会2022 第1回

来月12月1日(木)よりはじまる第8回カクヨムWeb小説コンテストにむけて、応募者の創作活動を応援するために、「カクヨムコン歴代応募作品講評会」を開催します。
今回の掲載作品は計9作品全3回に分けてお届けします。


カクヨムコン歴代応募作品講評会とは?

過去にカクヨムWeb小説コンテストに応募した作品を対象としたカクヨム運営によるオンラインの作品講評会です。
講評対象に選ばれた作品に対して、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
講評作品に選ばれた方は今後執筆する際の指針として活かしていただき、応募しなかった方や講評対象から漏れた方も、他の作品に向けられたアドバイスを読んで、自身の作品に当てはまるポイントを見つけてみてください。

第1回 掲載作品

【恋愛(ラブロマンス)】竜騎士様とはじめる、愛と子竜の育成日誌 作者 月音
【異世界ファンタジー】『まほうつかい』のお仕事 ザコセンと呼ばれて〜雑魚殲滅系職業物語〜 作者 風呂太郎
【ホラー】サラカツギの家 作者 美木間


【エントリーNo.1 恋愛(ラブロマンス)】
まぼろしの竜のたまごを孵したら、なぜか竜騎士様と夫婦になりました!?
竜騎士様とはじめる、愛と子竜の育成日誌 作者 月音
あらすじ:
偶然にもフィオナが孵してしまったのは、まぼろしと言われる幻竜のたまごだった!
生まれたばかりの子竜を聖竜へ成長させるため、なぜかフィオナは竜騎士団の団長ヴィクトールと仮初めの夫婦を演じることに……!?

もふもふきゅんきゅんの愛らしい子竜と、女性に不慣れな生真面目竜騎士との、ほんわかほのぼの共同生活はじまります!

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
平凡な町娘がひょんなことから騎士様に見初められて結ばれるといったシンデレラストーリーで、とてもやさしく、心があたたかくなる作品でした。小動物のような愛らしい少女のフィオナと、堅物な竜騎士様ヴィクトールの初々しいやり取りが甘酸っぱく、小竜の子育てを通じた疑似夫婦から本当の愛が生まれていくという導入も、「同棲もの」「疑似家族もの」の人気要素を含んでいて読者ウケも掴めそうです。ファンタジーものとしてもドラゴンは人気のあるモンスターですから物語の中核に置いた世界観も夢がありました。
ピンチに陥ってもお互いに自分よりも相手のことを思いやれる二人の姿が素晴らしく、本当の幸せというのは誰かを幸せにすることではじめて得られるのだなと感動しました。

◆改善すると良くなりそうな点:
やや年齢層が下向けで、大人の恋愛ものとしてはものたりなさを感じます。フィオナとヴィクトールが相思相愛になる展開が駆け足ぎみなので、身分の違いであったり、恋敵の登場であったり、恋愛の障害を設定してみてください。
結婚や子育てでも男女の考え方はまったく違うはずです。例えば、やさしい竜に育てたいフィオナと、強い竜に育てたいヴィクトールで意見が分かれて喧嘩してしまう。しかしそれは大切なものを守れるようにと子竜の将来の幸せを願ってのことだった、というような両者が共存できる着地点があるとよいでしょう。
結婚や子育ては順当にいかないほうがリアリティのあるドラマになりますし、現実で結婚や子育てに悩んでいる読者の不安や苦労に寄りそうようなメッセージ性を出すと作品に共感してもらえるかと思います。

【エントリーNo.2 異世界ファンタジー】
女にモテたくてモテたくてしょうがない中年(俺)は何かと気を使うのだ。
『まほうつかい』のお仕事 ザコセンと呼ばれて〜雑魚殲滅系職業物語〜 作者 風呂太郎
あらすじ:
集団転移なのにボッチスタート!一般的よりほんの少しだけ戦闘能力高めで、ほんの少しオッサンな主人公がソコソコ活躍します。異世界転移で手にした力。英雄・救世主なんてガラじゃない主人公が異世界で生きていくお話し。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
元自衛官で銃器を元に初級魔法に特化して雑魚相手に無双するという設定がいいです。おじさん系主人公特有のクセの強さがよく表れています。他人におもねることのない自由人な振る舞いはやや読者を選ぶところではありますが、意外なところで友人思いであったり、抱えている悩みが馬鹿らしくなってしまいそうな豪放磊落なキャラクターが愉快でした。
とにかくストーリーに勢いがありました。やや残酷ですがモンスターにも物怖じせずに戦闘を繰り広げ、人間関係の摩擦を怖れず事態の主導権を握ってストーリーをグイグイと引っ張っていくところに爽快感や痛快さがありました。

◆改善すると良くなりそうな点:
ストーリーにメリハリがなく行動が行き当たりばったりに感じます。せっかく神様からのクエストという設定があるので次々とクエストを提示してみてください。そうすることで主人公の行動目的も明確になり、話の区切りや進展をアピールできます。課題と報酬を強調することで読者に期待感と達成感を与えましょう。主人公の宿敵のような敵役や、目標となる人物がいてもいいでしょう。
世界観がよくも悪くもテンプレートな異世界ファンタジーでオリジナリティに欠けます。この世界では魔石が重要な資源となっているはずなので、魔石から発展したテクノロジーや、魔石でなりたっている社会構造をもっと見せてくれたら読者の没入感も上がるはずです。

【エントリーNo.3  ホラー】
おねえちゃんは会社をやめていました。そして、人生もやめていたのです。
サラカツギの家 作者 美木間
あらすじ:
久繰里あかりの幼馴染み「おねえちゃんが」が行方不明になった。原因が自分にあるのではと悩んだあかりは高校時代に世話になっていた司書の江洲楓に相談を持ちかけた。久繰里あかりのおびえている様子に異なるものの気配を感じた江洲楓はあかりの力になると彼女に伝えたのだが……

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
“おねえちゃん”という存在をうまく引きに使えており、説明を過ごすことなく謎を深めていく構成は目を惹かれました。これにより、“カラス玉”が作品のマクガフィンとしてこの上なく機能させられていたことも高評価。
ホラーに最重要な薄暗い雰囲気が作中全体に匂わせられていたこともすばらしいですね。ご自身の書かれているジャンルと真摯に向き合われていればこそかと思います。

◆改善すると良くなりそうな点:
まず、地の文章における一文の長さが目立ちます。これがひとつの段落内でいくつも連なれば読者の目は滑ります。ですので、段落を変えることと、短文を組み合わせてメリハリをつけることを心がけてみてください。
また、物語全体の起伏が小さく、魅せるべきドラマの緊迫感が薄くなってしまっているのは気になりました。まずは各話にひとつ見せ場を入れることを心がけ、所謂会話劇のシーンにも各キャラクターの心情をきちんと差し込んで、迫り来る恐怖を演出するのがよいかと思われます。
登場人物の個性もセリフ頼りになっており、描写で見せきれていない部分がありますので、設定をさらに練り込んでみてください。


第2回・第3回はこちら。

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