【カクヨム小説創作オンライン講座2019】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第1回

11月末より開催する第5回カクヨムWeb小説コンテスト応募者に向けて、創作にまつわる様々なヒントやアドバイスを提供し、スキルアップに役立ててもらう「カクヨム小説創作オンライン講座2019」
今年も、その第1弾「カクヨムコン歴代応募作品講評会」を開催します。
今回の掲載作品は計30作品 11/11~11/17の7日間でお届けします。


カクヨムコン歴代応募作品講評会とは?


過去にカクヨムWeb小説コンテストに応募した作品を対象としたカクヨム運営によるオンラインの作品講評会です。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。

今回の企画では、プロの目を通してしっかりと評価された講評が、カクヨムブログ上で公開されます。そのため、講評される作品は、だれでも閲覧して参考にすることができます

講評作品に選ばれた方は、プロが精読して判断したご自身の作品の良かった点や改善すべき点について知ることができ、今後執筆する際の指針として活かすことができます。
また、応募しなかった方や講評対象から漏れた方も、他の作品に向けられたアドバイスを読んで、自身の作品にあてはまるポイントを見つけることができます。

第1回 掲載作品

【SF】週刊カノジョイド!創刊! 作者 ながやん
【キャラクター文芸】書道とは死ぬことと見つけたり(仮) 作者 タカテン
【異世界ファンタジー】薄給激務の宮廷魔術師 作者 @yu__ss
【ラブコメ】勇者様が帰らない 作者 南木
【ホラー】やがて来る僕らの終わり 作者 髭鯨


【エントリーNo.1 SF
創刊号はバインダー付き!
週刊カノジョイド!創刊! 作者 ながやん
あらすじ:
 週刊カノジョイド!創刊!毎号届くエロカワなパーツ!人間と全く遜色ない、それでいて理想の体型&性格の美少女が君の手に!最新の生体パーツをふんだんに盛り込んだ、豪華仕様!今なら創刊号が、特製バインダー付きで送料無料!さあ、彼女を造ろう!

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
生首の女の子という実にユニークなヒロインで、とにかくウザく騒がしいキャラクターに笑いを堪えられませんでした。主人公の元に次々と騒動が舞い込み、読者の意表をついて物語が二転三転するジャットコースター展開が飽きさせず、先を読ませてしまう勢いがありました。世界を救うために初恋の相手を戦うというシチュエーションもスケール感が壮大で、シリアスな戦闘シーンにもユーモアを差し込むことで空気が重くなりすぎず、ライトな読感が読みやすかったです。

◆改善すると良くなりそうな点:
特別指摘する点はありませんが、しいて挙げるとすれば登場人物が未来人や超能力者やアンドロイドだったりするので、静流と真璃がキャラで負けないようにキャラ属性を盛ってもいいでしょう。例えば大企業のお嬢様だったり、天才発明家や天才ハッカーだったり、権力や技術力などの力で羽継を巡ってライバルと対立させてもよりドタバタ感を盛り上げられると思います。メカだけでなく未来感のある道具なども登場させるとまた夢があって面白いのではないでしょうか。


【エントリーNo.2 キャラクター文芸
書道で死ね
書道とは死ぬことと見つけたり(仮) 作者 タカテン
あらすじ:
 花川毅山は若き天才書道家である。
 が、大日本書道展にて前代未聞の無様を晒してしまう。かくなるうえは切腹してお詫びをと覚悟を決める毅山に、父であり師でもある花川範村は言い放つ。

「書道とは死ぬことと見つけたり! この父の言葉の意味を探す旅に出よ!」
「分かった! ちょっと死んでくる!」

 かくして父の言葉をまともに理解しようとしない毅山の、死に場所を求めて全国を旅する奇妙な人生が始まった!

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
冒頭部からきっちりとネタを押し出し、これはこういう物語です! と押し出せているのは高評価です。ネタとは往々にして屁理屈と同義なものですが、それを力と技で押し通せるのはまさに才能。ぜひ、今後もたゆまず磨き続けてください。
キャラクターもキレと思いきりがよくて、気がつけば好きにさせられていました。キャラは物語を加速するブースターですから、こうした「よさ」を意識してのキャラ作りを貫いていただきたく思います。

◆改善すると良くなりそうな点:
物語の起伏が小さく、最初のエピソードと同じ様相が繰り返されることとなっている、つまり出オチ感が強くなってしまっていることは課題点ですね。大元のネタの強さあっての副作用ではあるのですが、全体的に単調です。
主人公が別観点からなにか重要な気づきを得る等、エピソードの切り口の角度を変える工夫がこらされていると、本筋もさらに際立ちます。


【エントリーNo.3  異世界ファンタジー
仕事辞めたい系主人公の自由な雰囲気でアットホームな社会人百合です。
薄給激務の宮廷魔術師 作者 @yu__ss
あらすじ:
軍に所属し研究や国防に努める魔術師、通称『宮廷魔術師』。国中の魔術師たちが憧れる、国家最高の魔術師集団。
主人公リザはその宮廷魔術師の中でも「若き国家の至宝」と呼ばれる。二十五歳の若さにして大公から授かった十二の褒賞は、二百五十二年の歴史の中でも歴代最多の叙勲数を誇る。
そんな彼女の今月の手取り、二万三千円(日本円換算)。
今週の主な仕事、ネズミ駆除。
住んでいたアパートメントからも追い出され、後輩フィオの家に居候することが決定。
「こんな鼠退治ばかりやらされるのが、私の憧れていた宮廷魔術師だったのか……」
憧れと現実のギャップに、本気で転職を考える日々。
そんなおりに出会った一人の身寄りのない幼い少女。その少女には、なにやら秘密がありそうで……。
リザとフィオ、そして謎の少女。三人の家族ごっこのような、奇妙で暖かな日常が幕を開ける。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
異世界ファンタジーでの同性愛ものというテーマに加えて働く女性ものとして、優秀だけれど環境に恵まれないリザの境遇が現代のOLの姿に重なって共感してしまいました。リザとフィオとシロの三人の家族のようなアットホーム感が和みました。小さな女の子にも嫉妬してしまうような愛の重いフィオの面倒くさいところと、それもわかった上で許して受け入れるリザの姿に、二人が長年に育んだ絆が伝わってきて感動しました。

◆改善すると良くなりそうな点:
リザの実績と待遇との乖離が激しすぎて疑問がわきました。優秀な研究者になぜ雑用のような肉体労働をさせるのか設定上の不自然さが気になりました。同性愛はよいのですが、結ばれるまでの展開が駆け足気味です。
元々男性に興味がなかったり、可愛いものが好きだったり、同性愛に惹かれる傾向をリザに持たせてみたり、世界観的にも同性愛を受け入れるような社会であると描いておくようにすれば読者の理解も得られやすくなると思います。


【エントリーNo.4  ラブコメ
何事もない日常が、やっぱり一番心地いいの
勇者様が帰らない 作者 南木
あらすじ:
 あれから何日たっただろうか?
 勇者様はまだ彼の家に居座っている。

 魔神王が勇者とその仲間に討伐されてから2年――――
 当時勇者パーティーの後方支援担当だった青年アーシェラの家に、勇者リーズが突然訪問してきた。事前の連絡もなしの来訪だったので、豪華な食事も心地よい寝台も用意できなかった。
 なのにリーズは…………今日も彼の家から帰らない。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:4
・キャラクター:4
・ストーリー:3
・世界観:4
・文章力:4

◆良かった点:
まず文句なしにキャラクターがいいです。勇者のリーズは大変可愛いですし、辺境の地で村長をしているシェラのしっかり者っぷりも良い。二人のイチャイチャっぷりだけでも充分楽しいですのが、二人以外の村人もしっかり個性豊かに書けており、この村で演じられるスローライフな日常にずっと浸っていたい気分になりました。また自分ではたいしたことをしてないと言いつつ、実はパーティーメンバーの心情をしっかり把握しているシェラの後半での活躍も素敵です!

◆改善すると良くなりそうな点:
WEBでずっと読み続ける分には今の構成でも構わないのですが、書籍化を前提とした賞で受賞を目指すのであれば、ストーリーにもうちょっとメリハリをつけた方がより良くなると思います。
本作の場合後半で一気に物語が動きますので、物語の早い段階から村での日常を描く一方で、リーズがいなくなったことによる王都の異変や、それに伴う王族や貴族の不穏な動き、また勇者であるリーズをこんな辺境に留めておいて良いのかというシェラの葛藤などを今以上にクローズアップしても良いのではないでしょうか? そうすると作品に緊迫感が出ると同時に、スイカに塩をかけるように作品の糖度もより増していくと思われます。
またリシャールが登場した瞬間からあまりにも小物っぽすぎることもあって、後半の展開が予定調和的に進みすぎているように感じられました。こういうわかりやすい展開の方が好きという読者もいますので必ずしもマイナスになるとは限りませんが、参考までに。


【エントリーNo.5  ホラー
いつだって終わりは残酷だ
やがて来る僕らの終わり 作者 髭鯨
あらすじ:
また、この夢だ……。
高校一年生・緑川優也を悩ませるのは首なしの少女の悪夢。やがて昼夜問わずその少女が幻覚として現れ始め、同時に彼の周りで次々と頭部を失った死体が発見されていく。

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※この作品には過激な表現が含まれていますが、法律・倫理に反する行為の容認や助長を意図するものではありません。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:3
・キャラクター:2
・ストーリー:4
・世界観:3
・文章力:4

◆良かった点:
ホラーを書く上で必要な不気味なイメージがしっかりできていて、それを雰囲気たっぷりに描写することができています。また、ただ描写が怖いだけではなく不穏な過去を匂わせて、読者の興味を惹きながら話を進めることに成功している点や、後半にかけて加速度的に怪異の規模を大きくすることで、最後まで読者を物語世界に引きずり込む点など、どうすれば読者の心を掴めるかという点を意識しながら書いているように感じられました。

◆改善すると良くなりそうな点:
アヤコノノロイと小稲瀬町で起きた惨劇の真実、この二つの謎が本作を牽引しているのですが、この二つの謎の繋げかたがやや強引なように感じられました。もうちょっと自然な感じで関連付けられたり、別々の場所で起きた二つの事件を結ぶミッシングピースのようなものがあるとより良くなったと思われます。
また前半で死ぬ人物が優也と親しくない人ばかりで、死にざまもあっさりしているためやや淡白に感じられたのはもったいないかと。
もうちょっと死に際の描写を悲惨かつ丁寧にしたり、あるいは優也と仲の良い人を犠牲者にすることで、物語により強い切迫感を与えられます。


第2回は11月12日更新予定です。