【カクヨム小説創作オンライン講座】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第5回

12月より開催する第4回カクヨムWeb小説コンテスト応募者に向けて、創作にまつわる様々なヒントやアドバイスを提供し、スキルアップに役立ててもらう「カクヨム小説創作オンライン講座」の第一弾!



カクヨムコン歴代応募作品講評会は、過去にカクヨムWeb小説コンテストに応募した作品を対象としたカクヨム運営によるオンラインの作品講評会です。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。

今回の企画では、プロの目を通してしっかりと評価された講評が、カクヨムブログ上で公開されます。そのため、講評される作品は、だれでも閲覧して参考にすることができます

講評作品に選ばれた方は、プロが精読して判断したご自身の作品の良かった点や改善すべき点について知ることができ、今後執筆する際の指針として活かすことができます。
また、応募しなかった方や講評対象から漏れた方も、他の作品に向けられたアドバイスを読んで、自身の作品にあてはまるポイントを見つけることができます。


【エントリーNO17】
和歌が織り成す、平安京ラブストーリー!
『都の空の朧月』 作者 帆乃風 総持
あらすじ:
久の宮家復興のため、紀乃は乳姉妹である藤の宮を玉の輿に乗せようと、思い悩む日々。それが急に言い付けられた引越し、自分への求愛、その裏には・・・。
何がなんでも、わたしが守る!これが女の底力!
和歌が織り成す、儀の物語。
魔導師に、陰陽士、いっさい出ません。物の怪なんて、怖くない。
純日本ラブストーリー!

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:3
・キャラクター:4
・ストーリー:4
・世界観:4
・文章力:5

◆良かった点:
しっかりとした歴史知識に裏付けされた世界観にリアリティがあり、平安貴族の雅な暮らしぶりの情景が眼に浮かびました。
夢想家の多い女性陣と違い、地に足の着いた現実主義な紀乃のキャラが際立っていました。
和歌を通した貴族の会話や交流が美しく、読んでいて和歌に興味を抱きました。
かけがえのない乳兄弟の姫の幸せために自分の恋愛も忘れて奔走する姿に心温まり、身分の低い女房でありながら宮中の陰謀を暴いていく展開が痛快でした。

◆改善すると良くなりそうな点:
朧月が役立たずになりすぎる。何か彼女の長所や、読者が味方してあげたくなるような動機付けが欲しい。
権力も財力もない清貧な姫の姿を描いたので仕方がないのですが、場面が室内ばかりで地味になりがち。やはり貴族らしい華やかなお花見やお月見、季節ごとの宴のシーンを垣間見せてもよかったのではないでしょうか。
例えば、食事や娯楽、化粧などの風俗や、都で行われる年中行事などの習慣にも触れるとさらに世界観が広がると思います。


【エントリーNO18】
「良き羊飼いは羊の為に死す」 新約聖書
『乙女の海上護衛戦記』 作者 野口健太
あらすじ:
こことは別の世界を舞台にした戦記ものです。
海戦、それもマイナーで地味なことこのうえない商船護衛を題材にしました。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:4
・キャラクター:2
・ストーリー:3
・世界観:4
・文章力:4

◆良かった点:
女性士官たちによる海軍ものという作品のコンセプトが明確で読者の興味を掻き立てます。
豊富なミリタリー知識からくる軍事用語の使い方や駆逐艦の描写も詳細でリアリティがありました。
厳粛な軍隊の雰囲気とヒロインたちの華やかさが不思議とマッチした世界観が独特でいいです。
海中に潜む見えない潜水艦との攻防が深い。苦戦の最中でも冷静なリチャードの頼もしさ、くじけない女性士官たちのたくましさに胸を打たれました。

◆改善すると良くなりそうな点:
全体的に真面目すぎます。キャラクターも文章ももっと砕けてフィクションとしての面白味を出すようにしましょう。
ヒロインたちの年齢はもっと若くてもいいでしょう。女の子らしい可愛らしさを演出してみてください。ツンデレだったり、天然系だったり、ヒロインのキャラ立ちを考えてみましょう。
リチャードもこのままでは個性が弱い。例えばお調子者やひねくれ者など一癖あるキャラにして女性陣と衝突させ、和解を通して恋愛や信頼関係を構築するようなドラマを考えてみてください。


【エントリーNO19】
「殺人鬼いろは」次のターゲットは誰?
『殺人鬼いろは』 作者 庵字
あらすじ:
拝啓 秋涼のみぎり、警察の皆様におかれましては、日々犯罪捜査、治安維持へのご尽力、心よりねぎらい申し上げます。
五十谷(いそや)にて伊藤が、炉端町(ろばたちょう)にて六田(ろくだ)が。
かしこ
吉月吉日
いろは
「いろは」を名乗る人物から警察に送られてきた犯行声明文には、いろは歌の順に名字と地名を合わせた連続殺人を行うとの宣言が書かれていた。
かつてイギリス全土を恐怖と混乱に陥れた『ABC殺人事件』を想起させる連続殺人が、現代の日本に蘇る。
『いろは殺人』は、快楽連続殺人だけを目的とする〈シリアルキラー〉の仕業なのか? それとも周到な計画犯罪か?
「殺人鬼いろは」の謎に、素人探偵安堂理真(あんどうりま)が挑むが、探偵の、警察の捜査を嘲笑うかのように犯行は重ねられて……

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:4
・キャラクター:2
・ストーリー:2
・世界観:2
・文章力:3

◆良かった点:
「ABC」からの「いろは」。出典を明らかにしつつ個性的な題材を打ち出せているのは好評価です。
お題となるジャンルをどうひねるか、それは物語のおもしろさを決める非常に大事な要素ですが、それを示せている応募作はなかなかありません。その点、とてもよくひねれていました。
出題・考察・結論、この基本を外すことなく、三者をきちんと示せていたのもお見事でした。

◆改善すると良くなりそうな点:
もっとももたるものは説明のほとんどがセリフで行われていて、冗長である点です。
セリフは説明とキャラクター性を両立させ、心情描写を代行したうえで情景描写までしてくれる便利なものですが、だからこそ著者の工夫や文章力が生きません。そして結局は心情描写が表面的なものとなり、キャラクターの魅力と物語性を殺してしまうことにもなるのです。
セリフを短くまとめ、心情と行動を地の文で補う。まずはこれを心がけてください。
また、実際の土地を舞台に使うならやはり、“ご当地性”がひとつの鍵となります。
それが感じられず、さらに物語中でいきなり町名が並べられ、「知っていて当たり前」になっていたのは大きなマイナスポイントでした。
実際にお住まいの方が「ああ、あそこだ」と思えて、お住まいでない方も「そんなところがあるんだ」と思える、そんな舞台設計をしていきましょう。


【エントリーNO20】
魔法少女は不法侵入して勝手に他人のエロゲーをプレイする
『俺の家に魔法少女が花嫁修業に来てからの(非)日常』 作者 りんどー
あらすじ:
ある日、節穴の魔眼の持ち主にしてぼっちな男子高校生である桂木葉月が家に帰ると、変な格好をした見知らぬ少女が勝手に上がり込んでエ〇ゲーをプレイしていた。
少女の名前はライラック・シャイン・ウィンターソン。
変な格好はコスプレとかではなく正装。自分は魔法少女だという。
そんなライラックの目的は、魔法少女からより高位の存在、魔女になること。
そのための特殊訓練プログラム――花嫁修業を実践しにきたのだとか。
魔法少女が魔女へと至るためには、文字通り、少女から成熟した女性になる必要がある。
その方法はズバリ、同年代の男子と恋をすることによって、精神的及び身体的な成長を遂げること。
葉月はそのために欠かせない存在、パートナーに選ばれたのだと告げられる。
それはつまり、美少女と一つ屋根の下でいちゃいちゃラブコメ生活を送ることを意味しており。
一般的な、所謂どこにでもいる普通の男子高校生からしてみれば、ある種の憧れみたいなものなのだが。
普通にすら満たない、凡人未満であると自分を規定する主人公にとって、それは受け入れがたいことだった……。
……とか言いながら割とあっさり絆されていく主人公と、やたら積極的にアプローチするくせにすぐ恥ずかしがるヒロインによる、ラブコメ時々非日常(バトル)な成長ファンタジー。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:5
・キャラクター:4
・ストーリー:4
・世界観:5
・文章力:5

◆良かった点:
魔法少女が花嫁修行にくるという奇想天外な設定から始まる美少女との同棲生活が男性読者のツボを押さえていて読ませる力があります。
積極的なヒロイン像が面白く、ひねくれた主人公の男心を振り回すラブコメが愉快。
魔法少女や魔女が当たり前のように社会に溶け込んでいる世界観に夢があります。
心の距離感を近づけながら、お互いの力の秘密を解き明かしていくストーリーに引き込まれました。

◆改善すると良くなりそうな点:
魔法少女らしさを出すためマスコット的な使い魔や魔法のステッキなどのマジックアイテムがあるとさらにファンシーで夢があったと思います。
ライラックの恋のライバルとして幼馴染キャラや、お邪魔虫として妹キャラなどがいても盛り上がるでしょう。落ちこぼれのライラックに対して、エリート意識を持った魔法少女キャラを出して対決させても面白い。
恋愛が順当に進みすぎても面白くないのでライバルや壁を用意しましょう。
笑いをいれるなら美少女ゲームネタよりも魔法少女アニメを使ったギャグのほうが作品にはあっているように思います。