【カクヨム小説創作オンライン講座2020】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第1回

12月1日より開催する第6回カクヨムWeb小説コンテストの応募者に向けて、創作のヒントやアドバイスを提供し、スキルアップに役立ててもらう「カクヨム小説創作オンライン講座2020」
今年も、その第1弾として「カクヨムコン歴代応募作品講評会」を開催します。
今回の掲載作品は計30作品 全7回に分けてお届けします。


カクヨムコン歴代応募作品講評会とは?


過去にカクヨムWeb小説コンテストに応募した作品を対象としたカクヨム運営によるオンラインの作品講評会です。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。

今回の企画では、プロの目を通してしっかりと評価された講評が、カクヨムブログ上で公開されます。
そのため、講評される作品は、だれでも閲覧して参考にすることができます

講評作品に選ばれた方は、プロが精読して判断したご自身の作品の良かった点や改善すべき点について知ることができ、今後執筆する際の指針として活かすことができます。
また、応募しなかった方や講評対象から漏れた方も、他の作品に向けられたアドバイスを読んで、自身の作品にあてはまるポイントを見つけることができます。

第1回 掲載作品

【異世界ファンタジー】3Rの魔法師〜魔力零の異端児は今日も誰かの魔力を糧にする〜 作者 松尾 からすけ
【現代ファンタジー】七臥よろづ古物店 作者 サカシキタスク
【キャラクター文芸(現代ドラマ)】あまねく空を~明治旧大名家ものがたり 作者 澄田こころ
【SF】アクトノイド 作者 明弓ヒロ(AKARI hiro)
【恋愛】森の魔女、砂の少年を飼う 作者 水凪 らせん


【エントリーNo.1 異世界ファンタジー】
自分の魔力が零なら誰かの魔力を削減・再使用・再利用すればいいじゃない!
3Rの魔法師〜魔力零の異端児は今日も誰かの魔力を糧にする〜 作者 松尾 からすけ
あらすじ:
魔力
誰もが生まれながらに持つ力
その多寡はあれど、この世に生を受けた時より身体に宿っている力
それは人間にのみ与えられるものではない
獣人にも、魔人にも、魔物にも
その力は平等に与えられる
この世界に魔力を持たないものはいない
いないと思われていた
だが、その幻想は見事に打ち砕かれる
一人の少年がこの世界に生まれ落ちた事によって

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
魔法学校の落ちこぼれが実は凄腕のエージェントという、裏事情を読者に覗かせる設定に興味をそそられました。シリアスな仕事ぶりとコミカルなキャラクターのギャップが秀逸で雰囲気が堅苦しくならずに読めました。ヒロインが多彩で、それぞれ異なるタイプの魅力が引き立っていました。主人公だけでなく、ヒロインたちの行動も絡むストーリーとしていること、事件に巻きこまれたヒロインを助けてフラグを立てつつ、双方の視点から騒動が描かれている展開が楽しめました。

◆改善すると良くなりそうな点:
主人公が良くも悪くも常識人で、その他の仲間たちと比べると個性の強さで負けています。能力や生い立ち以外で、他に負けない主人公の個性を考えてみてください。事件が単発で解決するのは切りが良いのですが、先の展開へ読者を引き寄せるフックとして、物語全体を通しての最終目的や、主人公の宿敵を作ってみてください。正体不明の黒幕や闇の秘密結社など、読者に謎や脅威を感じさせる存在があると終盤への期待感が膨らみます。


【エントリーNo.2 現代ファンタジー】
今どきはカミサマだって商売の品目でしてね
七臥よろづ古物店 作者 サカシキタスク
あらすじ:
異世界と繋がる不思議な扉を持つ店、『七臥古物店』。
表向きは流行らないリサイクルショップ、裏では「異世界からの品をこちらの世界や別の異世界に売る」知る人ぞ知る名店だ。

七臥津雲は、亡くなった祖父母から店を引き継いだ若き店主である。
次にやって来るのは曰くのある品か、あるいは曰くのある客か。
店主である津雲は穏やかに笑ってカウンターに座り、餅を頬張るのだった。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
主人公である七臥津雲の安定感、格別ですね! さまざまなお客が訪れ、持ち込んでくる面倒事――それがどれほどのものであれ、揺らがず怯えず困りもせず、確実に収めてみせる。有り様で自身の個性を示してくれたいい主人公でした!
作品世界を不足なく構築し、描きだせていたことも好印象です。この「ひと味」は作品にとって強い武器となりますので、今後も仕込んでいっていただけましたら。

◆改善すると良くなりそうな点:
この作品では注目すべき単語や事柄が強調点で示されていますが、強調するに足るギミックとして効かせられていない感を受けました。
こうした1話1話が短いお話である場合は特に、オチをどう魅せるかがカギとなります。だからこそ、オチを起爆させるネタ(伏線含む)は「冒頭部」に仕込むべきです。途中で出してしまうと唐突に見えるばかりでなく、結局書き切れないまま終わってしまうものですので。このことにつきましては強く意識していただきたく思います。
また、作中でよく使われている、セリフだけで綴る会話劇。書く側にはリズムよく心地いいものですが、作者ほどキャラを理解できていない読者はそうはいきません。多用は避けて使い処を十二分に吟味、それが入っても読者を置き去りにしないだけの準備を整えてください。


【エントリーNo.3  キャラクター文芸(現代ドラマ)】
明治維新後の東京で、武士の子、周は運命の人と出会う。
あまねく空を~明治旧大名家ものがたり 作者 澄田こころ
あらすじ:
十二になる周は国元よりはるばる一月をかけ、東京へやってきた。元藩主、今は華族となった深水通武の世継ぎ真之介の小姓となりに。しかし、そこで出会ったのは意外な人物だった。

廃藩置県が断行された明治四年から物語ははじまる。
武士の気概にしがみつく少年は、あこがれのかつての江戸にやって来た。しかし、東京と名前を変えたその地は、かつての武士の栄光など微塵もない街へと変貌していた。
近代化していく東京。西洋化の波が押し寄せ、戸惑う人々。
そこで繰り広げられる、旧大名家の人々の生活は、けして華やかなものではなかった。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
時代ものの重厚感ばかりでなく、作品全体に「明けたばかりの時代」ならではな爽快感が匂い立っていたことが印象的でした。真っ向から時代性という難敵と相対し、それをここまでの太さで描き出す筆。お見事と言うよりありません!
そして登場するさまざまな物が本当にリアルで、よく調べられていることに驚かされました。これによって固められた世界観、惹き込まれずにいられませんでした。

◆改善すると良くなりそうな点:
要改善点としては、キャラの薄さが挙げられます。
十二分な文量があるのにそのほとんどが状況説明になってしまっていて、そこにいるキャラクターたちの魅力を浮き彫るエピソードにも、読者がキャラを好きになるため不可欠な心情劇にもしきれていないからです。
エンタメにおいて最重視すべきは「説明」ならぬ「ドラマ」です。状況説明をあいまいに留めてでもキャラをくっきり描き出し、読者を納得させるのではなくわくわくさせる。そのことを考え、優先してみていただけましたら。
そして上記にも重なる点ですが、キャラクターのセリフが説明的なことも気になります。セリフはもっとも強くキャラの心情や感情を押し出せるアイテム。説明は基本的に地の文へ任せ、セリフはキャラクターを表わすためにこそ使ってあげてください。


【エントリーNo.4  SF】
人間VSロボット、未来の演劇の主役はどっちだ!
アクトノイド 作者 明弓ヒロ(AKARI hiro)
あらすじ:
天才的な演技力を持つが容姿に恵まれないミカ。モーションキャプチャーアクターとして、女優を目指していたが、厳しい現実を突きつけられる。

そんなミカが出会ったのは、人工筋肉と人工皮膚により人間そっくりに作られた演劇用ヒューマノイド「アクトノイド」。

アクトノイド・パフォーマーとなることを決意したミカは、栄光を手に入れられるか! ミカの夢の舞台が、今、始まる!

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ネタが本当にすばらしい! 天才的な演技力を持ちながら、ライトの裏に在り続けなければならない主人公だからこそ出し得るブラックさ、ビターさに強く目を惹かれました。
ひとつのネタを他人とはまるでちがう角度から捉え、切り込めるセンスは、書き手にとって最強の武器です。今後もネタと向き合い、踏み込んで回り込んで見極めて切り込んで、誰にも為し得ないアプローチと掘り下げを成していただきたく。

◆改善すると良くなりそうな点:
セリフ頼みで肝心のキャラクターの心情描写が希薄であること、これが最大の問題です。
セリフは相手の名前も自身の感情も状況の説明も、なにもかもを表わしてくれる便利なものですが、物事の機微や距離感、キャラが互いに伝え合えない胸の内までもを表わすことはできません。その部分を表わせる地の文を正しく活用し、セリフをより生かしてあげることを心がけてください。
そしてもうひとつ。顔がかわいくない程度でミカさんの天才が演劇界から無視されている状況、かなり疑問です(声優オーディションに受かってもいることですし)。
読者を説得できるだけの世に出られない理由――顔半分が焼けただれているだとか、表情の動きがおかしい(笑ったはずが般若にしか見えない)だとか、もうひと捻りあるといいですね。


【エントリーNo.5  恋愛】
こんな嵐のような感情が、好意などという優しいものであるはずがない。
森の魔女、砂の少年を飼う 作者 水凪 らせん
あらすじ:
 深淵の森の魔女キイナは、贄の少年トゥエを拾った。そんなものを差し出されても、人を食べる趣味は無いし、仕方がないから

「とりあえずあたしが飼う」

と宣言する。

 傷だらけのトゥエに森の加護を与えようとするが、トゥエの体にはすでに砂の加護が刻まれていた。

 大陸の支配国イスタが、砂嵐と対抗するため森の神の力を得ようと動き出す。そんな中、キイナはトゥエを連れてイスタに出向き、そこでふたりの騎士に出会うが――

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
読ませる文章、これがしっかりと成されていました! 表現に重さと厚みがあり、それでいてやわらかく読みやすい。筆力の高さはもちろんのことですが、この作者さんの作でなければ味わえないものが感じられ、期待が高まる一作でした。
高い表現力に加え、物語世界がしっかりと練り上げられていることへも目を惹かれました。絵として浮かぶほど確かな情景、とてもよかったです。

◆改善すると良くなりそうな点:
文章を生かせるだけのドラマが仕込めていなかったのは残念。
平たく言えば緩急が薄いということになるのですが、各エピソードが同じようになにもなく重ねられていけば、冗長と評価されてしまうことは避けられません。ミステリージャンルの“日常の謎”などを参考に、「魅せる小事」を描くことを心がけてください。
そして直接の見せ場となるクライマックスシーンについても、盛り上がる表現についてを追求していただけましたら。
次に作中で多用されているセリフのみの会話劇。これが半ば以上説明になっていて、物語性を落としてしまっているのも問題です。説明等は地の文章に任せ、セリフへはそれに託すべきものだけを詰め込むようにしましょう。
最後にもうひとつ。長文と三点リーダーを多用する傾向が見受けられますので、文章としての見栄えや読みやすさのためにも、一文を分解する等の工夫をしてみてください。


第2回は10月29日更新予定です。

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