【カクヨム小説創作オンライン講座2020】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第2回

12月1日より開催する第6回カクヨムWeb小説コンテストの応募者に向けて、創作のヒントやアドバイスを提供し、スキルアップに役立ててもらう「カクヨム小説創作オンライン講座2020」
その第1弾「カクヨムコン歴代応募作品講評会」、第2回をお届けします。

※「カクヨムコン歴代応募作品講評会」とは? という方は第1回の記事をご覧ください

第2回 掲載作品

【現代ファンタジー】エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を143回繰り返しているようだ~ 作者 竜山 三郎丸
【ホラー】ローカル・キラーズ 作者 タカナシ
【ラブコメ】幼馴染の為に魔王を倒して日本へ帰ってきたのに、異世界少女たちが俺の恋人ポジションを狙ってやって来る 作者 向原 行人
【ミステリー】蝉時雨は小さな狂気を奏でる 作者 坂井令和(れいな)
【恋愛】甘い気持ちのわけを教えて~和菓子屋兎月堂同居物語~ 作者 深水映 (ふかみえい)


【エントリーNo.6 現代ファンタジー】
【完結】幼馴染との現代↔異世界往復ラブコメファンタジー
エンドレス・ニューゲーム~俺の幼馴染が『つよくてニューゲーム』を143回繰り返しているようだ~ 作者 竜山 三郎丸
あらすじ:
主人公・杜居伊織(もりい いおり)は、5年前のある日から高校一年の今に至るまで月に一度幼馴染の高天原ハルの下を訪れるのが決まり事だった。月に二度でも三度でも無く、必ず月に一度決まった日に訪れるのだ。
そして、高校一年のある日ハルの下を訪れた彼に声を掛けたもう一人の幼馴染・天戸うずめ。5年前のある日から疎遠になり、ただの一度も話をすることの無かった彼女はいくらかの世間話の後で言った。

『私は、あなたに謝らなければいけなかったの』と――。

そして、その夜に杜居伊織は知る事になる。眠りに落ちる度に異世界に赴き、世界を救ってまた戻る。143回の転移をして、142回世界を救った彼女の終わることの無い『つよくてニューゲーム』を。

「おはよう」
 ――目が覚めると、目の前に立っていた制服姿にマフラーをした天戸うずめは言った。

「信じて貰うのに時間が掛かると思う。これは夢じゃないの」

5年前に止まった3人の幼馴染達の時計の針が動き出し、異界の勇者・天戸うずめと異界の従者・杜居伊織が数々の異世界と現代を往復するラブコメファンタジーが幕を開ける。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
一見ありふれた異世界転移ものを主人公とヒロインの人間ドラマに仕立て、幼馴染の死を悼みながらも立ち直ってく描写に胸が締め付けられました。距離を置いてしまっていた幼馴染と再び一緒の時間を過ごす姿にノスタルジーを感じました。さまざまな異世界の世界観も興味深く、その世界ならではの問題があり、力技ではない解決法を模索していく展開も一捻りきいています。単純な善悪で割り切れない複雑なテーマを描いていて読者の感情や価値観を揺さぶりそうです。タイムリープものになっていく後半の展開も先が読めずに引き込まれました。

◆改善すると良くなりそうな点:
基本的には主人公の伊織とヒロインのうずめだけで物語が進行してしまうため、人間関係の広がりやかけ合いが寂しい。勇者をサポートする妖精や精霊、召喚獣のようなマスコットキャラクターが二人の間にいると会話が弾むと思います。うずめが強いことで安心感はあるのですが、ジラークが登場するまではバトルが盛り上がらず淡々としてしまいがちです。例えば、うずめと分断されて伊織一人で戦いを切り抜けないといけないような展開があってもいいと思いました。


【エントリーNo.7 ホラー】
【完結】ホラーVSファンタジー どちらが勝っても絶望!!
ローカル・キラーズ 作者 タカナシ
あらすじ:
仮面の異形、呪いの悪霊、巨漢の怪物、美しき食人鬼。

彼らの前に異世界のモンスターが現れた。
獲物を取られた彼らは怒り、苦しみ、そして手を組み最恐のチームが出来上がる。

現代の怪物たちが異世界モンスターに挑むホラーアクション!!
どちらが勝っても人類の味方はゼロの泥沼の戦いが今、幕を開ける。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
現代世界のホラー映画に出てきそうな殺人鬼たちが、異世界ファンタジーの世界からやってきた怪物たちと戦うというコンセプトが面白かったです。登場する殺人鬼たちもバラエティに富んでいて、それぞれが独自の手段でモンスターを殺していく展開は爽快でした。また殺人鬼側がただ恐ろしい存在なのではなく、どこかコミカルで言動にギャグが混ざっているのも良い味を出しています。

◆改善すると良くなりそうな点:
一人怪物を殺してもすぐ次の怪物が登場し、それを殺してはまた次の怪物が現れ……と延々似たような展開が続くため、どうしても物語が一本調子になってしまっています。あえて巻き込まれた一般人の視点も交えるなどして、物語に緩急をつける工夫が欲しいところです。
また主人公側が一方的に勝利し続けるという展開も一本調子となる要因の一つです。中盤以降では、敵を倒すのと引きかえに味方も失われるという展開にすれば、最終的にどちらが勝利するかわからなくなり、作品全体の緊張感も増していくでしょう。


【エントリーNo.8 ラブコメ】
控えめな日本の幼馴染を前に、活発な異世界の幼馴染がぐいぐい迫ってくる!
幼馴染の為に魔王を倒して日本へ帰ってきたのに、異世界少女たちが俺の恋人ポジションを狙ってやって来る 作者 向原 行人
あらすじ:
――魔王を倒してくれたら、何でも望む願いを一つ叶えます――
 異世界転生で勇者となってしまった俺、早川颯太は魔王を倒し、転生前の日本へ帰るという願いを叶えてもらった。
 魔物と戦う辛い日々を忘れ、平和な日本で愛しの幼馴染、陽菜と楽しい学園生活を送ろうと思っていたのだが、そんな俺の前に異世界での幼馴染、マリーが現れる。

「ふぇっ!? わ、私が颯ちゃんの幼馴染なんだよっ!」
「残念。ウチもソウタの幼馴染。しかも、何度も激しい夜を過ごしてきた」
「それはモンスターとの戦……だぁぁぁっ! とにかく違うんだってば!」

 普通の高校生として生活したいだけのに、異世界の少女たちから迫られ、日本でも勇者と呼ばれてしまう。
 ハーレムといえば男の夢だけど、俺は陽菜と真っ当な恋愛がしたいんだっ!

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ヒロインの行動力が高く、主人公の都合をお構いなしにグイグイくることでノンストップにラブコメが展開していく勢いが素晴らしかった! ハーレムものではあるものの、主人公は幼馴染一筋でさっぱりしていて、かといって異世界での仲間を蔑ろにしているわけではなく、それぞれ大切に考えていているところに素直に好感がもてました。元勇者として力を持ちながらも、その力ではどうすることもできない女性問題で苦労を抱えて、恋愛関係が複雑になって女性陣に包囲されていく様子が楽しかったです。

◆改善するとよくなりそうな点:
主人公がゆくところにヒロインたちが現れて自己アピールをするというワンパターンになりがちなので、個別に恋愛イベントを作りましょう。主人公と各ヒロインの絆を感じさせる思い出イベントを回想させてもよいです。外見的な魅力だけではない、それぞれのヒロインの内面的魅力が引き立つような見せ場を作りましょう。


【エントリーNo.9 ミステリー】
蝉 に な っ て お 前 を 殺 し に 行 く
蝉時雨は小さな狂気を奏でる 作者 坂井令和(れいな)
あらすじ:
勘違い女子高生が探偵助手となって、連続猟奇殺人の謎に迫ります。

残酷ですが、それをアホ女子高生が中和している構成にしてます。初めから残酷全開だと誰も読まないので、序盤はコメディ色が強いです。

クローズドサークルの推理ものです。

蝉小説でもあります。

ルビにもこだりを持ってます。

これを読んだ方は、「ピコーン!」と「ぴよ」が口癖になることでしょう。
トリックがわかった場合は、ピコーン!をお願いします!

*動物好きは注意です。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ややメタな表現描写やシュールなかけ合いのあるミステリーは好き嫌いが分かれそうであるものの、これまでにない大胆な作風にインパクトがありました。キャラクターは不真面目なようでミステリー部分はしっかりと練られており、トリックには意外性もありました。猟奇的な事件の真相に隠された人間の心の闇の深さにゾッとさせられ、前半のコミカルな雰囲気から一気に読者を突き落とす展開のギャップが素晴らしかった。

◆改善すると良くなりそうな点:
恋愛脳で妄想癖があり思い込みの激しい帯刀渚のキャラが強烈ですが、ヒロインとしての人間的な魅力はどこでしょうか。読者が素直に可愛いと思えるポイントを作ってみてください。場面の切り替えが細かすぎます。必要がなければ短い場面は大きな場面に統合し、読者に提示する情報を整理するようにしてください。「朝6時。103号室。」のように時刻や場所を章の頭にもってきてもいいです。文章が濃い部分と薄い部分の差が激しく、空白が気になるパートがあります。読みやすさを維持しつつ、文章のバランスを考えてみてください。


【エントリーNo.10 恋愛】
アラサー女子、頑張る!お仕事×飯テロ×同居ラブコメ!!
甘い気持ちのわけを教えて~和菓子屋兎月堂同居物語~ 作者 深水映 (ふかみえい)
あらすじ:
読書と和菓子が好きな独身OLの果歩は、ふと入った和菓子屋でアルバイトの張り紙を目にし、転職を決意。そして同時にイケメンだけれど少し変わった菓子職人、悠一との同居生活が始まり――

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
後ろ向きで自己評価の低いOLが和菓子屋で頑張りながら、これまでの自分を見直して少しずつ成長していく姿に励まされました。兎月堂の三兄弟がそれぞれタイプの異なるイケメンに描けていて、ヒロインが振り回さたり、逆にどこか気が利かない男性陣をフォローしたりと、お互いに影響を与えあっている関係性がよかったです。美味しそうな和菓子の描写や、和菓子屋にやってくる常連客たちの何気ない交流が和みました。地味な和菓子屋に客を呼び込む、女性目線での集客アドバイスも活きていて社会人層の読者も読んでいて発見がありそう。

◆改善すると良くなりそうな点:
ネガティブな性格でも他人に負けない長所や取り柄が何かあると良いでしょう。前職では活用できずにいたが、和菓子屋に転職したことで隠れた才能が目覚めて意外な活躍をみせるようにすることで、転職が逃げではなく前向きな選択として読者に映ります。またアルバイトというだけでなく、本格的な和菓子職人を目指すなど、新しい夢や目標を得て人生設計をやり直すような、恋愛要素以外でも先の展開に夢や期待感を抱かせるようなテーマを考えてみてください。


第3回は10月30日更新予定です。

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