【カクヨム小説創作オンライン講座2020】カクヨムコン歴代応募作品講評会 第3回

12月1日より開催する第6回カクヨムWeb小説コンテストの応募者に向けて、創作のヒントやアドバイスを提供し、スキルアップに役立ててもらう「カクヨム小説創作オンライン講座2020」
その第1弾「カクヨムコン歴代応募作品講評会」、第3回をお届けします。

※「カクヨムコン歴代応募作品講評会」とは? という方は第1回の記事をご覧ください

第3回 掲載作品

【現代ファンタジー】絶滅野営 作者 鳥辺野九
【ミステリー】ジャンピング・ジャック・ガール 作者 mikio
【キャラクター文芸(現代ドラマ)】ドクターの夢 Old Boy Meets Girl 作者 RAY
【ラブコメ】俺は青春ラブコメがしたい! 作者 じんむ


【エントリーNo.11 現代ファンタジー】
人類絶滅後の世界でたったひとりのスローライフ
絶滅野営 作者 鳥辺野九
あらすじ:
人類絶滅後。
誰もいなくなった世界に生き残ったたったひとりの女子高生。
人類最後の一人である女子高生が無人の街でカブを走らせて、死に場所を探しながらキャンプを楽しむお話。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
人類が絶滅しライフラインが失われた後の世界でどう生き抜いていくのかを丁寧にシミュレーションしている点を何より評価します。食糧はもちろん、電気やガソリンなど生き残るために必要なものがどのように不足し、どう入手すればいいかを細かく書くことで臨場感がしっかり伝わってきましたし、いろいろと限定された世界で作る料理描写も独自性があって大変素晴らしかったです。また回想を上手く使うことで主人公がどのような人物なのかをしっかり浮き上がらせる手法もお見事でした。

◆改善すると良くなりそうな点:
回想を除けば登場人物が主人公一人だけというのは色々と厳しいものがあります。それでも最後まで面白く読ませられるというのは作者の文章力のたまものですが、他の登場人物が一切存在しないというのは「対話」もなければ「対立」も存在せず、内省的な印象になってしまいますし、ストーリー面でも上手くメリハリがつけられません。
主人公以外の生き残りも出して登場人物を増やすというのが単純な解決案です。しかし、あえて本作の絶滅後に一人で少女が生きるというコンセプトを貫くならば、求められるのは小説というよりはエッセイを書く能力かもしれません。サバイバル生活を繰り広げながらも、人類絶滅後の視座から現代文明批評などが面白くできると、他には見当たらない唯一無二の作品が生まれるでしょう。


【エントリーNo.12 ミステリー】
あいつを殺して、ジャンピング・ジャック。
ジャンピング・ジャック・ガール 作者 mikio
あらすじ:
 早朝の通学路で川原鮎は、マンションから人が転落するのを目撃してしまう。転落したのは、鮎と同じ高校に通う泉田秀彦だった。遺書は発見されなかったが、彼の携帯電話には『ジャンピング・ジャック』を名乗る人物からの謎めいたメールが届いていた。
 鮎は泉田の親友・敷島哲とともに事件の謎に迫るうち、泉田の他にも四人の高校生がジャンピング・ジャックからのメールを受信した直後に転落死していることを突き止める。
 ジャンピング・ジャックのゲームとは何なのか? そして、高校生の連続転落死事件の真相は? 若者たちが疾走し、暴走し、迷走する青春ミステリ!

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
主人公の川原鮎の語りが軽快でぐいぐい読めますし、主人公たちの家庭の悩み、人間関係の悩みがちゃんと事件の解決につながるという物語の作り方はミステリーとしてだけではなく青春小説としても優れています。またミステリー面でも、引きこもりの兄による家庭内暴力という鬱屈した描写が、読んだ時の印象とは全く異なる形で伏線になっているなど読者をミスリードさせる手法も非常に上手く、高く評価できる内容になっております。

◆改善すると良くなりそうな点:
全体的な完成度は非常に高いのですが、あえて問題点を挙げるならば読者を惹きつけるフックが弱いところでしょうか。何か特殊な状況で事件が起きたわけではなく、同級生の自殺の真相を追うというストーリーは正直やや地味です。冒頭で自殺を目撃した女子高生が同級生とともに彼の死の真相を調査していく、という構成もシンプルでわかりやすいのですが、それゆえに延々と地道な調査が続くため、中盤はやや退屈なものになっています。ここで主人公の二人のキャラが気に入った人は最後まで楽しく読めるでしょうが、逆にこの二人と自分は合わないなと思われた場合、途中で脱落されてしまう恐れがあります。
この設定でしか出せないリアリティや作品の雰囲気というのはあるので、根本的な改善というのは難しいですが、全体に読者を惹きつけられるようなケレン味が加えられるともっと多くの読者を獲得できるはずです。


【エントリーNo.13 キャラクター文芸(現代ドラマ)】
おじさんだって夢も見るし恋もする。大人の青春ドラマをあなたに――。
ドクターの夢 Old Boy Meets Girl 作者 RAY
あらすじ:
深見 真(ふかみ まこと)は本が好きな少年だった。
特にSFやファンタジーには目がなく、寝食を忘れて小説を読み漁り、いつしか時間を見つけて小説を書くようになった。
将来の夢は自分の書いた文章をたくさんの人に読んでもらうこと。読んだ人に幸せを感じてもらうこと。

しかし、生まれ育った環境が夢に向かうことを妨げる。
父と祖父は東都大学附属病院の教授で免疫学・感染症学の権威。医学の道に進むことを余儀なくされた深見は、敷かれたレールから外れることが許されず、親に言われるままの人生を送る。

そんな中、ある当直の夜、深見のもとに1人の急患が運ばれてくる。
それは未知なるウイルス「NL(ノーザンライト)」に感染した乳児。そのことがきっかけとなって、彼はNLとの戦いに人生の大半を費やす。

徒に歳月が流れ、深見は45歳になる。
しかし、夢を捨てきれない彼は「ある決断」をする。そして、その決断が彼を数奇な運命へと導く。

真面目で不器用で、少年のような純粋さを持ち続ける深見。
そんな彼をめぐる、SFとミステリーのエッセンスを散りばめた、大人の青春ドラマ。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
人の過去の記憶から構成される仮想現実を通して人間の精神や死生観に迫った内容が深く、考証の秀逸さに唸らされました。医者ではない別の道を歩もうとしながらも、目の前の苦しむ人を放置しておけない深見真の善性に好感がもてました。NPCと思われていたヒロインが実は実在する人間だったという意外性に驚かされ、物語の序盤で語られたウイルス撲滅の設定が、後半になって伏線となって結末へ繋がってくるストーリー構成も。

◆改善するとよくなりそうな点:
深見真の自分語りから物語が始まってしまうと読者がテーマや舞台を誤解してしまいます。序盤から仮想現実空間に入らせて、そこから本人の半生を徐々に解説していくという流れのほうが展開のテンポもよく、読者も物語のフックを理解しやすいと思います。また現実でも医師をしながら小説を書いている方はいらっしゃるので、深見真が命の危険を犯して仮想現実へ行く動機付けが「作家を目指したいから」では説得力がやや弱い。若い身体でないとできないこと、その当時の時代でなければ叶えられないようなことを夢に設定してみてください。


【エントリーNo.14 ラブコメ】
幼馴染に振られました
俺は青春ラブコメがしたい! 作者 じんむ
あらすじ:
中学三年の卒業の日、俺は幼馴染のあかりに振られた。
しかし高校になった今でもあかりは今も同じクラスで、しかも親しげに接してくるのだった。

でも俺は騙されない、あれはきっと社交辞令というやつなのだろう。
だから決意した。幼馴染の事はすっぱり諦めて新たな青春をこの手でつかみ取ってやろうと。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
自分を振った幼馴染となぜか友人関係が続いてしまい、さらに彼女を友達に紹介しなければならない、しかし自分は彼女のことが好きなままで……という主人公の葛藤が面白い作品でした。この設定だと一つ間違えばヒロインのあかりが嫌われてしまいそうなのですが、彼女の言動に全く邪気がないためしっかり魅力的なヒロインに描かれています。またあかりとはタイプが違う姫野さんも魅力的で、彼女が中盤で突然それまでと違う面を見せたところはゾクリとするものがありました。

◆改善すると良くなりそうな点:
物語で起きるイベントのひとつひとつが良く言えばリアリティがある、悪く言えば地味なところが気になりました。これが主人公とヒロインがラブラブな内容だとストレートな甘い展開を用意することで地味さを塗りつぶすことができるのですが、本作の場合ヒロインとの関係性がそういうものではないので、もうちょっと読者を惹きつける要素が欲しかったです。そして花姫親衛隊はギャグやにぎやかしとしては有りだと思うのですが、物語を動かす役割まで与えてしまうのは少し出しゃばりすぎなようにも感じられました。こういう存在を許容するのであれば、ギャグ方面ではもっとぶっ飛んだ方に舵を取るのも有りかもしれません。


第4回は11月2日更新予定です。

kakuyomu.jp