カクヨムコンテスト10 / カクヨムコンテスト10【短編】 中間選考結果を発表しました

中間選考結果を発表!
特別審査員による選出作品を発表!
【作者の皆さまへお願い】他社からの商業打診があった場合は、カクヨム運営へご一報ください

中間選考結果を発表!

カクヨムコンテスト10の中間選考結果を発表しました。

応募総数12,449作品から、ライト文芸部門、異世界冒険部門、異世界ライフ部門、魔法のiらんど(現代恋愛)部門、ファンタジー恋愛部門、ホラー部門、エンタメ総合部門、現代ファンタジー部門、ラブコメ(ライトノベル)部門より1,641作品が、カクヨムプロ作家部門より502作品が選考を通過いたしました。
※応募要項を満たしているカクヨムプロ作家部門の作品は、読者選考の評価にかかわらず最終選考へノミネートされます。
kakuyomu.jp
あわせて、カクヨムコンテスト10【短編】の中間選考結果も発表しました。
応募総数17,956作品のうち、1,545作品が最終選考対象作品となりました。
kakuyomu.jp
最終選考は、以上の結果を元に進めさせていただきます。
なお、最終選考の結果発表は2025年5月頃に本サイト上で行いますので、楽しみにお待ちください。
合計30,405作品の力作を投稿してくださった皆さま、並びに読者選考にご参加いただいた皆さまに、改めて深く御礼申し上げます。

特別審査員による選出作品を発表!

特別審査員による選出作品を発表いたします。(特別審査員による選出作品は読者評価にかかわらず、中間選考突破となります。)

ライト文芸部門(特別審査員:高橋剛)

『気象観測員のメグミさん、地表の9割が海に沈んだ地球で、日々頑張っています。』(touhu・kinugosi)

推薦ポイント ・ゆるい雰囲気の中にふと香り立つ終末感に惹き込まれました。
・端的な描写が行間を際立たせており、それがまたこの作品ならではの風情を生み出していることこそ最大の魅力です。
・主人公始め、この世界で生きている人たちのタフさ、それがしっかりと描写されており、オープニングからエンディングまで“希望”が満ち満ちていて気持ちよかった!

『棺桶の中は』(富升針清)
推薦ポイント ・主人公を始めとしたキャラクターの造形力が非常に高く、その鮮明な人物像そのものが物語の引きになっていることに目を奪われました。
・キャラクターのみならず、物語を掘り下げていく描写力――淡々としていながらどろりと粘っこい雰囲気を醸し出す筆運びも注目点です。
・巧さが恐さをいや増し、独特の風情を醸し出している点、実に魅力的でした。

『祈りの機神と騎士の刃』(日鷹久津)
推薦ポイント ・剣と魔法だけじゃなく、記憶喪失やバトル要素、ロボット、恋愛までもがぎゅうっと詰め込まれた全部盛り感がすごい! 満足感が半端なかった!
・テンポよく読ませてくれる軽やかな描写に瞠目! 普通のシーンを楽しく演出しているのはもちろん、戦闘アクションをこの上なく冴えさせていて、悔しいですが魅了されてしまいました……!

『そうだ! 会社を辞めて山奥に自分で一軒家を建てて、スローライフをしよう!』(久坂裕介)
推薦ポイント ・状況設定がとにもかくにもリアル。それがあればこそチャレンジを決めた主人公の心情もまたリアルで、ワクワクさせられました。
・社会から遠ざかることで逆に他者との関係性を際立たせ、縁というものの妙を引き立たせる。現代ドラマならではのおもしろみがこの上ない形で描き出されており、心地よい結末へと繋がっていました。おもしろかった!

『北野坂パレット』(うにおいくら)
推薦ポイント ・なんといってもキャラクター造形ですよ! 登場人物全員、かっこよさよりもかっこ悪さが際立っていて、それが得も言われぬ人間臭さを醸し出している。大好きです!
・描き出される複雑な家族模様や人間模様が醸し出すモヤモヤしたマーブル模様は、ひと言でまとめるなら青春もの。でもそれだけじゃ表しきれない人間ドラマの味わいが最大の売りです。

異世界冒険部門(特別審査員:愛咲優詩)

『一人だけSF強化人間の俺が、脳内異世界ガイドの本体を救い出してパーティーに入れてみたら最強だった件』(唱対夢)

推薦ポイント 異世界ファンタジーにSFの要素を足した世界観が面白く、モンスター相手にライフルやビームソードで挑んでいく戦いがミスマッチだけれど燃える。主人公が傍若無人なれど美少女のボディを持っていて、見た目の可愛らしさと中身の男らしさのギャップが萌えて、どこに行っても騒動を呼び寄せて飽きさせない。主人公のイレギュラーな行動が世界情勢をかき回し、物語をグイグイ引っ張っていく勢いを感じる。

『快適無双エルドランダー〜俺のキャンピングカーは世界最強の移動要塞で家族です〜』(五月雨きょうすけ)
推薦ポイント キャンピングカーに乗って異世界を旅する世界観が冒険心にあふれている。モンスターを倒すことで、レベルアップしてどんどん便利に、移動要塞となっていくキャンピングカーに男のロマンが詰まっている。万物を錬成できる錬金術師のお嬢様や、使命を背負った勇者様など、クセのある訳アリ同乗者との賑やかなドタバタ珍道中が愉快で楽しい。

『開発中の新作ゲームをテストプレイしていたと思ったら、いつの間にか異世界を冒険していた』(千人)
推薦ポイント 本物の異世界に転移したのにゲームのテストをしていると思い込んで、異世界と気づかない勘違いぶりが面白い。主人公がゲームシステムの力を使って騒動を解決していく展開が、まさにゲーム実況のようで面白く、毎回異世界人を驚かせていく展開が痛快。ゲームの中だからと現実ではできないような行動をとってみたり、怖気づいてしまうような決断や挑戦ができたりするところに夢がある。

『今日から始める滅亡回避!皇女の冒険書籍体験記』(火ノ鳥 飛鳥)
推薦ポイント ゲームブックのような主人公の選択で世界の命運が変わっていく展開が興味深い。生まれつき最強の存在で、何が起きてもなんとかしてくれるという安心感がある。それでも選択肢を間違えると災いが起こるので、決してチートでなんでもかんでもうまくいくわけではないという物語の運び方がいい。立場や権威にとらわれず、自由奔放で周囲を振り回すマイペースさがおかしく、かわいい少女の姿で不思議と憎めないヒロインのキャラがいい。

『戦国武将異世界転生冒険記』(詩雪)
推薦ポイント 昔ながらの武士道を貫いた主人公で謙虚で礼儀正しいところに好感を抱き、転生でチートを断って自分の努力と創意工夫で強くなるところが潔い。苦労して強くなっていく過程を丁寧に描いているため、ダンジョンの攻略やモンスター討伐にも他の作品にはない達成感や満足感がある。田舎から出た無名の少年が人との知己を得て、徐々に功績を積み上げて認められ、一廉の人物に成長していく姿に「人生を歩むとはこういうことなのだ」と学ばされる。

異世界ライフ部門(特別審査員:朱音ゆうひ)

『魔女の庭師』(門間紅雨)

推薦ポイント 落ち着いた語り。社会人読者の共感が得られそうな作品。現代社会のやばいけど日常だと思ってる感。
異世界と交わるタイムリミットがあるのがいい。
シュテフィのキャラは人気が出そう。
辛いな、この現実なんとかならないかな、と思う事件が起きて解決(?)する安心の進行。異世界の歴史や文化にワクワクできるのと、世界で生きている生き物が好きだなと思わせてくれます。
10万文字達成後、進行中の小エピソードのフリまで書いて話を落とさずに更新が止まっていて、続きが読みたいなと思いました。

『ブチ折れ死亡フラグ、寝ていろ恋愛フラグ』(浦田 阿多留)
推薦ポイント わかりやすい男性向け。悪役になってつよつよ無双女の子たちに好かれる人気のパターンをきっちり描いています。勇者と友情してるのがいい。
魔族側に転生者がいて、エピローグ回は「俺たちの戦いはこれからだ」な終わり方。カクヨムらしさを感じる作品です。

『異能興行 マスクド・ペチャパイスキー推参』(人藤 左)
推薦ポイント エンタメショーの闘士主人公。
魔力置換体(アストラル)でバトルする、観客やファンが応援してくれる面白い作品。主人公がその仕事に誇りを持っていてファンを大事にしている、プロ意識の高いのエンタメショーマンで、魅力的です。
ジュラとレィルはキャラがいい+カップリングとしても可愛いなと思いました。
八百長を断って奴隷堕ちした主人公を、主人公のファンであるレィル嬢が買い、覆面ヒーローとして再デビューして成り上がる、というコンセプトにワクワクできます。
エピローグ回は「俺達の冒険はこれからだ」って感じです。商業作品化のための改稿をすると、より光る作品になるポテンシャルを感じました。

『旦那様が自由奔放で浮気ばっかりするのでざまぁし続けたらなんか可愛くなってきました』(蒼井星空)
推薦ポイント 旦那様がおばかなことをして奥様に「はぁ?」ってされるお約束を繰り返し、気楽に「あはは」「またやってる」「これを見るのが日課です」と楽しむエンタメです。
『うちの王太子殿下は今日も愚かわいい』を好むような読者層に好かれそうです。
有能でしっかり者の奥様とダメダメな旦那様なのですが、「これは女性向けだと絶対に許してもらえないライン」を旦那様がキャッキャと越えてくれます。
しかし、この旦那様はざまぁされつつも夫婦の夫ポジションに残り続け、いわゆる真ヒーローが現れることもなく。途中でどう考えてもエンディングな展開もしつつ、仕切り直してサッと日常を再開。
しまいには可愛い子供が生まれてパパとママになるのですが、旦那様はパパになってもバカです。ばか、ばか、と言いつつ、なんか気づいたらクセになっている。
何を言っているかわからないかもしれませんが、読むと「なるほど!」となるのではないかと思います。

『不殺隊の隊長さん、余生は愛する妻と娘に捧げるそうです。』(書峰颯)
推薦ポイント 妻とイチャイチャしつつ子供は可愛い。主人公が大人で有能、落ち着いた雰囲気があります。
大人の読者人気が狙えそうな作品です。
歴史や文化を感じる世界描写で、魅力的です。
序盤から中盤に安心して読める大人向けドラマな感じがあり、好きだと思いました。
商業作品化のための改稿をすると、より光る作品になるポテンシャルを感じました。

魔法のiらんど(現代恋愛)部門(特別審査員:朱音ゆうひ)

『映画より綺麗な君の死化粧』(幽八花あかね)

推薦ポイント ブルーライト文芸。
「余命わずか系女優」と呼ばれているヒロインが本当に余命わずか、という設定が面白いと思いました。
学校系のイベントが多いです。
どんな読者でも自分事として共感できる家族ネタもあり、親世代が喜びそう。
キャラの思考もわかりやすく、好感度が高かったです。
地に足をつけていて現実的な空気感が濃い作品だと思いました。

『小雀恋模様』(28号(八巻にのは))
推薦ポイント 落語モノ+年の差恋愛。
主人公が視力を失ってしまうのですが、陽気・元気。
視力を失うってなかなか重い設定ですが、つらさをユーモアで包んでくれるおかげで、明るい気持ちで楽しめます。
キャラが個性的で、ファミリー感や箱推ししたくなる魅力があり、人間関係も心地いい。
業界お仕事モノで、漫画で「あかね噺」という落語モノも人気があるので、需要がありそうです。

『10万1ルクスの君へ』(微炭酸)
推薦ポイント ブルーライト文芸。
幻想的で綺麗。好きです。
展開が現実の枠内で縮こまりすぎることなく、時に大胆に「えっ、こんな行動しちゃうの」「そんな展開いけるの」な動きを見せて感情を揺さぶってくれます。
それが楽しくて「重箱の隅をつつくのは無粋だ、作品の感情ジェットコースターに身を任せて楽しもう」という気持ちにさせてくれます。
主人公が後輩や父親とも人間ドラマを見せてくれて、内容が濃い。
エモさを求める読者や、透明感のある幻想的な世界に浸りたい読者に愛されそうな作品です。

『世界が終わるという結果論』(二神 秀)
推薦ポイント 現実でも話題になっている「地球に惑星が衝突する」ネタ。好きです。
相手の惑星にも実は人類がいるんだけど、地球サイドが気付かない。スケールが大きくて刺激的でした。
愚かだったり無力だったり愛情深かったりする人類社会や文化が描かれています。
特にアイサのシーン描写がエモく感情を揺さぶってくれました。
相手の惑星側の被害描写が凄惨で、戦争モノに通じるメッセージ性も感じさせ、宇宙問題や国際紛争が起きている時世だけに、作品の志が光って見えました。

『俳優中毒〜幼馴染にBL主演のオファーが来た話〜』(本郷りさ)
推薦ポイント 幼馴染ライトBL。芸能界BLはBL漫画ジャンルでの人気・定番モノで、需要があると思います。
俳優好きな読者が「そうそう」と頷くような若手登竜門ネタが添えられていたり、カプ推しファンの厄介さや時事ネタを入れているのが素敵。
当て馬の平岡のキャラも好感度が高く、後味がよくて好きです。
平岡を主人公にしたスピンオフも読みたい。

ファンタジー恋愛部門(特別審査員:高橋剛)

『30代OLですが、副業で悪役令嬢します。~日給は2万円~』(天堂 サーモン)

推薦ポイント ・悪役令嬢という強固なテンプレートへ、「金銭的魅力(金への欲)」という新しい要素を合わせた発想力がすばらしい!
・多くの作品では背景に置かれているだけの社会人設定、それが主人公の思考や行動にきちんと作用しており、説得力があったことに目を惹かれました。
・綺麗事では終わらない戦いからの甘々展開! これがまたよろしゅうございました。

『薪割りむすめと氷霜の狩人〜夫婦で最強の魔法具職人目指します〜』(寺音)
推薦ポイント ・世界観を含めた背景世界の解像度が高く、尚且つわかりやすい。しかも無理矢理な勢いや屁理屈ではなく、この背景世界の有り様をドラマの軸にまでできていたことに驚かされました。
・前述の世界観がありがちな政略結婚展開へおもしろさのひねりを加えていることはもちろんですが、主人公とヒーローが確かな愛情を積み重ね、育んでいく様が胸に染み染みです。

『元おばあちゃん令嬢は怪物伯爵に野菜を食べさせた 〜孫の持ってきた乙女?げぇむ?でまさかの再会をしました〜』(秋色mai)
推薦ポイント ・おばあちゃんと乙女ゲー、まさかのコラボレーション! その組み合わせの妙に心を鷲掴まれました!
・野菜中心のグルメ、それだけでも斬新且つ新鮮なのですが、主人公のおばあちゃん設定が生かされていればこその説得力があり、一層際立っていました。
・そして明かされる真実と、そこから始まる“再びの”ロマンス! 本当にたまりません!

『冥夜の竜と策謀の蟲』(千崎 翔鶴)
推薦ポイント ・出逢いは実に鮮烈で、そこから繋がる主人公とヒーローの噛み合わなさ――すれ違いの様相が、言ってみれば「恋愛へ至ることが約束された意外性あるドラマ」として作品を瑞々しく彩っていて、心を持って行かれました。
・恋愛だけでなく、王宮内の政治が絡んだ暗闘劇がまたおもしろい! 男性にも迷わずおすすめできる構成、高評価で好評価です!

『天才召喚魔術師で王女の私は、完全に自己都合で勇者様を召喚します』(シロノクマ)

推薦ポイント ・コミカルと思わせて、過ぎるほどシリアスな導入部、凄まじい落差に胸を抉られました。
・闇深主人公と闇深ヒーローの、容赦なさすぎるマイナススタートから始まる冷え切った関係性。これをどう巻き返していくのか? 胸躍らずにいられませんでした!
・この異世界だからこそ得られた愛がある、そう感じさせてくれるあたたかな読後感は最高です。

ホラー部門(特別審査員:柿崎憲)

『デスメタセブン ~ヘヴィに憑かれた女子高生と七代祟られた男~』(フジキヒデキ)

推薦ポイント ・霊に取りつかれている男、親に見捨てられた不良たち、フィールドワークに訪れた大学生、わけありの家族など、事情を抱えた人たちが呪われた心霊スポットで殺し合いを強制させられるエンタメ要素が強めなホラー。
・自分に憑りついていた悪霊を具現化して1対1で殺し合うという『ジョジョの奇妙な冒険』のような要素があり、その悪霊も「くだん」や「前鬼」「後鬼」といった伝統的なものから、都市伝説系の悪霊やUMAなどバリエーション豊富で楽しい。
・殺し合いに巻き込まれたキャラクターたちがしっかり書き分けられており、10名を超えているのに一人一人の印象がしっかり残る点、最初は正統派のホラーのような筆致で話を展開しながらも中盤でルールが開示された途端、急にエンタメ感がマシマシになるという予想がつかない話運びの部分などを評価した。

『胎児の夢』(渦目のらりく)
推薦ポイント ・双子を神聖視する異常な宗教が蔓延る島で、過去に島から逃げ出した女性が怪奇探偵を名乗る青年と共に調査に向かうミステリー風ホラー。
・探偵が語る『憑き物落とし』という単語とその手口や、作中で登場するある妖怪の名前から「京極堂シリーズ」の影響が感じられるが、それとは別に作中で起きる怪奇現象とその謎解きに関しては、しっかりと作者のオリジナルのものとして描かれている。
・処女でありながら妊娠した少女や、村に存在する不気味な宗教の正体など、作中に出てくるホラー要素はことごとく論理的に解体されていくのだが、その手つきが鮮やかな点、そして謎が半ば暴かれても、まだ何か本当の怪異が隠されているのではないか?と思わせる不気味な筆致を評価した。

『覗く『奴ら』は愚者見て嗤う』(檻墓戊辰)
推薦ポイント ・オカルトマニアの大学生たちが、不気味な事件に首を突っ込んでは命からがら逃げ帰る、軽やかな筆致が楽しい連作短編ホラー。
・やたら怪異に好かれる主人公とその仲間たちの会話が軽やかで楽しく、何よりオカルトに精通していて、事態の収拾のためなら邪悪な手段も厭わないヒロインのイエシキが大変魅力的。
・池に潜む幽霊や、覚めることのない夢、ドッペルゲンガーなど様々な怪奇現象に見舞われるが、それらがもたらす危険を論理的に解決していく過程が読み応えがあって面白く、窮地にあってもひょうひょうと真相を解説するイエシキがしっかりと描かれている点を評価したい。

『現代異類「破婚」譚』(棺之夜幟)
推薦ポイント ・やたらと怪異に愛される美貌の男子大学生が、霊能力を持つ女子大学生とともに怪異が起こす事件を解決していくミステリー要素の強い連作短編ホラー。
・「異類婚姻譚」という概念を土台にした、あらゆる生物から花婿、すなわち生贄として狙われる主人公という設定が面白く、その解決案として「怪異からの婚姻を避けるために自分と結婚しよう」と提案するヒロインとの関係性が非常に魅力的。この設定だけでハマる人にはとてもハマりそう。
・毎回事件が起きるたびに、怪異の正体を探る謎解き要素があるのだが、そこに日本神話の要素と生物学の要素を組み合わせて考察していく点にオリジナリティを感じた。怪異の正体も毎回、昆虫、オコゼ、オオタカ、大蛇とバラエティに富んでおり、また「主人公はなぜ怪異に狙われるのか?」「ヒロインはなぜ怪異を祓うことができるのか?」という主役二人が抱える謎を軸にして、一本筋の通った長編として物語を構成している点も評価したい。

『ずっと学校で暮らしてる』(華川とうふ)
推薦ポイント ・友達がいない主人公の『私』と転校生の「行方真宵」が不思議な現象が頻発する町で数々の怪奇現象に巻き込まれていく連作短編ホラー。
・特筆すべき点として、嫌な空気や不気味な空気の書き方が非常に上手い。また第一話の「私」が転校生の真宵と友達になるまでの心理描写が秀逸で、人気の転校生だった真宵がとある失敗でクラスの爪弾き者になってしまったことを、「私のところまで転がり落ちてきた」と表現するあたりに、ホラー向きな性格の悪さが感じられる。
・数字が入っているお店や通りには、その年数だけ町に住んでいなければ辿りつくことができないという特殊なルールが面白く(たとえば五年坂には五年以上の在住者でなければ辿りつけない)、このギミックを活かした短編は特に印象に残る。

エンタメ総合部門(特別審査員:柿崎憲)

『SF因習村(仮)』(澤田慎梧)

推薦ポイント ・宇宙船の故障によりとある惑星に辿りついた二人の宇宙飛行士。彼らがたどり着いた惑星には村が一つあるだけで、その唯一の村は20世紀の日本を再現した、いくつもの因習に縛られた村だった……という宇宙SFとホラーではおなじみの因習村の組み合わせがとてもユニーク。
・一見出オチのように思われるが、話が進むにつれて不合理に思われる村の掟にSF的な回答が与えられていくのが面白い。
・序盤は村で起きた殺人事件を解決するといういかにもホラーな展開なのに、物語後半では宇宙艦隊VS宇宙生物というSFらしい想像外の飛躍っぷりを見せてくれるのが楽しく、SFとホラーの美味しい部分を一つの作品の中に上手く溶け込ませている。

『アッシュ・イン・ザ・スタンプ』(今福シノ)
推薦ポイント ・戦地にいる兵士たちへの手紙の配達を生業とするフェンローグの少女があちこちの戦場を駆け巡る巡るファンタジー。
・一つ一つの描写が丁寧で、戦場の臨場感が伝わってくる文章が見事。
・前線に手紙を届けるフェンローグという設定が面白く、手紙の一つ一つを通じて様々なドラマを描き出している。特にこの作品の設定をフルに活用した一章のラストの無情さは大変素晴らしい。

『記憶の無い過去の未来人』(世古たける)
推薦ポイント ・20年前までの記憶しか保持していない「前向性健忘症」の主人公が、20年前にタイムスリップしてしまう、『記憶喪失』と『タイムスリップ』を組み合わせた異色のSF。
・過去に戻った主人公は「前向性健忘症」となった原因の事故を防ごうとするのだが、病気で記憶を保持できないため、自分の目的を忘れてしまったり、そもそも自分が未来からやってきた存在であることすら忘れたりと、通常のタイムスリップものではなかなか見られない、この作品ならではのトラブルが次々起こるのが大変楽しい。
・主人公には愛する妻がおり、過去を変えてしまった場合、現在の妻との関係が変わる可能性がある。この「記憶を取るか、妻を取るか」という葛藤が作品の持ち味になっている。それに加えて、予想のつかないトラブルに次々襲われるため、最後まで物語がどう転ぶか予想できないエンターテインメント性の高いストーリーに仕上がっている。

『内島アキラを知ってるか?』(三丈 夕六)
推薦ポイント ・一人の人物の行方不明と、ある家庭で起きた殺人事件。全く関係ないように思われた二つの事件が意外な形で繋がっていく様子を描いたミステリー。
・それぞれの事件の関係者の視点から複数の事件を追う群像劇になっており、一見無関係に思われた事件が繋がり、徐々に真相が浮き上がる過程が面白い。
・一度真実が判明したと思われた直後に、もう一つ踏み込んだ別の真相が出てくるという謎解きパートもよくできており、最初に出てきた「新川悠1」の語りの本当の意味がラストで明らかになるという構成もお見事。

『ぼっちの僕が同時に四人に告られたのは何かの謀略に違いないっ!』(才羽しや)

推薦ポイント ・冒頭からタイトル通りの展開が起こるのだが、実際にヒロインたちにはそれぞれの思惑があり、主人公への告白をきっかけに彼女たちが抱える問題が主人公に襲いかかってくるラブコメディ(?)
・ヒロインのキャラがそれぞれ個性的なのだが、それに対応する主人公も大変良い性格をしており、彼女たちの会話が大変小気味よくラブコメとしても普通に面白い。
・その一方でヒロインのうち一人は連続殺人犯で、別のヒロインは大変ひどい目に遭ってしまう少し重めな内容になっており、一般的なラブコメには分類しがたいのだが、それでもどこか救いを感じさせるラストに仕上がっていて作者の筆力を感じさせる。

現代ファンタジー部門(特別審査員:朱音ゆうひ)

『平安時代の陰陽師に取り憑れた少女、落ちこぼれから最強になる?!』(南極コアラ)

推薦ポイント 漫画的。キャラ同士の関係性萌えや箱推しできそうな作品です。
主人公・紗月ちゃんが可愛い。
主人公がかつての天才陰陽師に取り憑かれているのは「ヒカルの碁」を彷彿とさせるワクワクがありました。
コンセプトやキャラが強く、魅力を感じました。長く展開できる土台のある作品です。商業作品化のための改稿をすると、より光る作品になるポテンシャルを感じました。

『文字戦争』(逢良イト)
推薦ポイント 26人のメンバーが突然選ばれてデスゲームをさせられる。
選ばれた際に能力が与えられて、能力バトル(殺し合い)するのが面白い。
ここぞという場面で映像的なエモさを感じさせてくれる演出・描写力や、能力バトルの魅力が高いです。「実は真相はこうだった」と後からわかる仕掛けもあり、商業作品化のための改稿をすると、より光る作品になるポテンシャルを感じました。
終わり方は、「この話を前日譚にした続きを読みたい」と思わせてくれました。

『千影様は己の才に気づかない』(どうも勇者です)
推薦ポイント 男性向け。世界観にワクワクします。
主人公は当代最強と一目置かれている、無自覚・勘違い系な面白さをくれるお兄様。ノリが「嘆きの亡霊は引退したい」のクライみたいな。「己の才に気づかない」のタイトル通り、才能があるタイプで、貴種実力者的な特別感があるので読者が気持ちよくなれそうです。
デキる妹がいてブラコンで可愛い。長く展開できる土台のある作品です。

『ゴシック・パンク』(空き巣薔薇 亮司(あきすばら りょうじ))
推薦ポイント 世界観やキャラがよかったです。商業作品化のための改稿をすると、より光る作品になるポテンシャルを感じました。弟が好き!

『配信ゲーマー「神」になる』(田中子樹@あ・まん)
推薦ポイント 配信者(プレイヤー)がゲーム配信していて、リスナーがコメントをしてるのですが、プレイヤーに選ばれたキャラ視点で話が進むコンセプトが面白いです。
選ばれし信徒なキャラ視点だとハイファンなのですが、コメントが流れ、プレイヤーやリスナー(キャラからは神々だと思われている)と意思疎通できて、体を操作されたりもする。
リスナーが途中から名前付きにアップデートされて、個性的な神々がキャラに愛着を持ってやいのやいの言ってるのが楽しい。
神々が配信で推しを見守って愛でている楽しさが第一部の序盤からたっぷり堪能できる上、対抗プレイヤーの存在で長く展開できる土台もあります。
韓国で人気・日本でもアニメ化予定の「全知的な読者の視点から」という作品があるのですが、それに似たエンタメ性を味わえて、これからアニメが放送される予定を考えると可能性を感じます。

ラブコメ(ライトノベル)部門(特別審査員:愛咲優詩)

『女子高生に大人気のカフェの通称王子様系イケメン店員の正体がどこにでもいるただの陰キャ男子高校生の俺だってバレたら生きていけない〜あまり目立ちたくないので美少女はお断りさせていただきます〜』(あすとりあ)

推薦ポイント 普段は無気力な陰キャ男子がメガネを外したらイケメン王子様に変身するというギャップがいい。イケメンだけれど偉ぶらず、性格も王子様らしくヒロインを助けたり、勇気づけたりとかっこいい。正体を秘密にしたまま騒動を収める立ち回りも緊張感があってハラハラする。陰キャモードでもなんだかんだ天然たらしで美少女たちのハートを落としていくところが面白い。

『俺の彼女が120円だった件』(守田野圭二)
推薦ポイント コンビニの美少女店員に120円の値札がついていたという物語の導入が興味を引かれる。主人公とヒロインが実は幼馴染で、恋人同士だったという関係が甘酸っぱい。脇役たちも個性的で活き活きとして、眺めているだけで面白い。ときに日常的なアクシデントや騒動を繰り広げる、愉快な学校生活が実に青春。どこか懐かしくて、誰もが憧れる学園ラブコメ。

『完璧美人のエリート警察官僚上司が、家では俺を大好きな甘デレ幼馴染だった』(軽井広)
推薦ポイント 警察官というメジャーでもあり、一般人とは縁遠い業界での大人の恋愛もので、お仕事ものでもある点が興味深い。喧嘩別れした幼馴染が、上司になって再会し、一緒にルームシェアをはじめるという、上司と部下でもあり、幼馴染でもあり、生活のパートナーでもあり、友達以上恋人未満な一口では言い表せない二人の関係性がいい。職場ではクールで凛々しいヒロインが、自宅では主人公に甘えてくるギャップが可愛い。

『プロゲーマーを目指していた俺、妹はアジア最強の配信者でした。』(城ヶ崎大地)
推薦ポイント 最近注目の集まるeスポーツもの。最強プレイヤーである天才の妹に挑み続ける兄のプライドが勇ましく、挑戦者として自分の前に立ちはだかる兄の存在のことが大好きな妹もかわいい。どちらもゲーマーの心を表しており共感できる、ゲームを通じて築かれる兄と妹の関係がエモい。本格なeスポーツ描写もありながら、ちゃんと女の子たちとのラブコメ要素もしっかりある。燃えて萌えるゲーミングラブコメ。

『貴族学園のスパイ ~闇組織のヒロイン達と諜報員の俺が送るラブコメストーリー!?~』(抹紅茶)

推薦ポイント 最近人気のエージェント学園もの。諜報員である自分の正体を秘密にしながら過ごす学園生活の描写に緊張感があって刺激的。主人公以上にヒロインたちの経歴が凄まじく、可愛いけれど、迂闊に好きになってはいけない、危ない魅力がある。常に時限爆弾を抱えているような、綱渡りの学園ラブコメがハラハラ・ドキドキする。

【作者の皆さまへお願い】他社からの商業打診があった場合は、カクヨム運営へご一報ください

応募作品に対して、KADOKAWA以外の第三者より書籍化などの商業打診があった場合は、連絡が来た段階で(打診を受ける前に)かならずカクヨムお問い合わせ窓口よりご連絡ください。ご連絡いただく際は、打診を受けた企業名、打診の形態(書籍化、コミカライズ、電子出版等)も忘れずに記載してください。

応募作品は、すでに選考が進んでいる場合もあるため、お早めにご連絡ください。
円滑なコンテスト運営にご協力をお願いします。