おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会!【第一回】



第3回カクヨムWeb小説コンテスト開催直前!

……ということで、過去のカクヨムWeb小説コンテスト応募作を対象に、カクヨム運営による作品講評を行うオンライン勉強会「おしえて改善点! カクヨムWeb小説コンテスト応募作品反省会」をスタートします。
講評対象に選ばれた作品は、キャラクターやストーリーなど、作品を構成する5つの要素を5段階で評価して作品分析を行うとともに、長所や改善すべき点をコメントにまとめて指摘します。
この講評を参考に、作品の良い点や改善点についてを自分の作品にあてはまるポイントがないかを考えながら振り返ることで、今後執筆する際の指針として活かしてください。

反省会はカクヨムweb小説コンテスト開催までの四日間、全四回にわけて行われます。
第一回となる今回は、以下の5作品を講評いたします。

『にごろあまた』 作者 二五六九
『人間兵器のグロワール』 作者 草詩
『花嫁日和は異世界にて』 作者 和本明子
『Qutie Crazy Doll ~僕は彼女の着せかえ人形~』 作者 神坂 理樹人
『右カウンター赤道より』 作者 梧桐 彰


【エントリーNO1】
「美しさ」や「正しさ」に惑わされるな!心の声に従え、抗うな!
『にごろあまた』 作者 二五六九
あらすじ:
全ての事象を最大限観測せよ!
「美しさ」や「正しさ」に惑わされるな!心の声に従え、抗うな!どんな過去であっても受け入れろ!今を生きてくれ!
2569開発ログより

◆点数評価:
作品のオリジナリティ:
キャラクター:
ストーリー:
世界観:
文章力:

◆良かった点:
キャッチーなネタを冒頭で正しく提示できているのはすばらしい。
応募作には「この後でおもしろくなる保証」がありませんから、冒頭でしっかりその保証を示しておくのは有効です。特に連作短編の場合は読む側の気持ちが一話ごとに切れてしまう部分がありますのでなおさらに。印象づけは非常に重要となります。
そして著者ならではの世界観。これをなんとなくではなく、各話で角度を変えながら見せられているのは好印象です。次作でもぜひこだわっていただければ。

◆改善すると良くなりそうな点:
時間という「場面」を使った構成ですが、これらの繋がりに含められたしかけがうまく起動できておらず、著者が目ざしたカタルシスをうまく演出できていない点は問題です。
各エピソードにパズルの1ピースのようなヒントを明示する、ミスリードできるようなしかけを作るなど、構成的にもうひとひねりできるとかなり印象が変わりますね。
読者は作者ではありませんから、いろいろ察してはくれません。
読者をエンディングまで引っぱることのできる構成を心がけてみてください。


【エントリーNO2】
ゴブリンと人間。 血塗れの種族間抗争が、そこにはあった――。
『人間兵器のグロワール』 作者 草詩
あらすじ:
辺境の地を襲ったゴブリンの侵略と、それに立ち向かう守備隊と巻き込まれた住民たちをめぐる物語。
人間たちの国、イスハルト帝国の東端に位置する、小さな街で事件が起こる。
祭りの日だというのに、港からは誰もやってこない。おかしいとは思いつつも、問題にはせず、のどかだが地域復興をかけた祭りが始まっていた。
そこに忍び寄るゴブリンたちの気配も知らずに。
街の青年オルフとヘンリーは、その日も守備隊長から訓練を受けていた。
彼らの頭は祭りのことでいっぱいで、守備隊長が港から荷が来ないという問題に駆り出されても、大して気にしてはいなかった。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
戦場という舞台の臨場感がありましたね。物語の入りに一見地味な食の話題を持ってきたことで、それを塗り潰すように到来する戦いの物語が際立っていました。
日常と非日常のスイッチングが描写できることは、作品執筆において強い武器になります。
また、あれもこれもとネタを詰め込むことなく、ひとつの戦いを書き抜いたストーリーに視点ブレがなく、充分以上のドラマ性を感じられたことも評価させていただきたい点です。

◆改善すると良くなりそうな点:
セリフに頼り過ぎていて情報不足です。
作者は作品のすべての構造を知っていますが、読者はちがいます。まずはこのことを意識してください。
その上で地の文を活用し、状況説明や心情描写、セリフ同士の区切りとして活用してみてください。
そして文章ですが、一本調子且つ読点過多でテンポがかなり悪い印象を受けました。
メリハリをつけるためにも、文章ごとに長短や句読点の打ち方での変化を心がけていただければ。


【エントリーNO3】
異世界で食事を――美味しいのは料理だけとは限らない?
『花嫁日和は異世界にて』 作者 和本明子
あらすじ:
若林日和(ワカバヤシ ヒヨリ)は、料理が少し得意な普通の女子中学生(15歳)。
変わった…珍しい所があると したら、飛芽島という島民で、先祖が海賊だったというぐらい
買い物で訪れていた本土から、船で島に帰る途中で事件が!?
船が沈没して、何者かによって海底へと引きずり込まれてしまった。
命からがらに浮上して海面へと顔を出すと――船上で兵士と海賊たちが斬り合いをしている異様な光景が!
そして息つく暇もなく異形な生物が襲いかかってくる!
あきらかに現実世界(地球)とは違う世界――そう、ここは異世界(ミッドガルニア)。
危機の所を助けてくれたのが、若き海賊の頭目―ヴァイル―
元の世界に戻るための交換条件にと、料理をご馳走したのが切っ掛けで彼に気に入られて求婚を!?

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
異世界料理ものという流行り要素を取り入れている点がキャッチーで、イケメン海賊に惚れ込まれてプロポーズされるという展開が乙女の夢にあふれていました。
大胆で男気あふれるヴァイルと、女らしくも芯の強いヒヨリの組み合わせがお似合いで胸がときめきます。
妖精や海魔といった生き物や巨大樹の森なども異世界感が出ていました。大凧で帆船を牽くというアイデアも潮風や海賊らしい自由奔放さが現れていて爽快感がありました。
文章もバランスがよく安心感があります。

◆改善すると良くなりそうな点:
いろいろな個性の男性キャラを登場させて、好みのタイプの異なる読者も満足感を得られるようにしましょう。
料理以外にも掃除洗濯などの女子力を発揮するシーンがあってもいいと思います。例えば、衛生管理を徹底させることで病気を減らしたり、着こなしを洗練させることで王国民に一目置かれるようになったり、異世界の生活習慣や意識を一変させる活躍を考えてみましょう。
ヒヨリが異世界に召喚された理由をもう少し掘り下げましょう。
実は神さまの加護を持っていたとか、異世界から地球に渡った偉人の血を受け継いでいたとか、異世界との繋がりを作るとより深く関係性を感じられます。


【エントリーNO4】
お嬢様に誘拐されて、女装しながら彼女の振りってどういうことなの?
『Qutie Crazy Doll ~僕は彼女の着せかえ人形~』 作者 神坂 理樹人
あらすじ:
小山内直《おさないなお》には秘密があった。
それは幼馴染の大串遥華《おおくしはるか》にたびたび女装をさせられて町中を連れ回されていること。
いつ誰にバレてしまうかとビクビクしながらも、断りきれずにいた。
いつものように女装して出かけさせられていたある日、直は地元一番の地主の娘、中条玲《ちゅうじょうれい》に誘拐されてしまう。
彼女曰く、
「私のお人形にならない?」
窮屈な家を飛び出すために彼女の振りをしろというわがままな命令に仕方なく従っていた直は、玲の秘密を知り、その実現とお人形の地位から脱却するため奔走する。

◆点数評価:
・作品のオリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
なにより目を惹かれたのは展開の大きさでした。状況が動くことで、キャラクターに無理矢理なにかをさせずとも物語が動く。
読む側に冗長さを感じさせない物語運びを心がけられている点は、賞の選考でプラスポイントとして挙げられるプラス要素です。
これにつきましては、衣装ごとに章分けされた構成もそうですね。
読者にとっての読みやすさとはなにか? それを考えるだけでなく、実現できる力は大きな武器になります。

◆改善すると良くなりそうな点:
女装というネタをうまく転がせていないのが最大の問題点。
エピソードごとにプロットを整理し、大きな見せ場になるネタを用意してください。
そしてキャラにももっと極端な個性づけを心がけてください。
これだけの種々多様な作品が溢れるライトノベル界において、著者が思う「極端」は読者にとって「よくある平常」にしかなりません。
もっと大げさに、理不尽に、ぶっ飛ばしたネタとキャラで勝負を!
また、文章のテンポが一定でメリハリに欠けますので、長文と短文、読点の付け方で工夫を。


【エントリーNO5】
33才、弱気でぐうたら。どこにも勝てる要素がない
『右カウンター赤道より』 作者 梧桐 彰
あらすじ:
インドネシアの首都ジャカルタで開店休業中のボクシングジムを経営する老ボクサー、ロニーのところへ、日本で売り出し中のボクサー、薮田から試合の依頼が飛び込んでくる。
とある事情からやけっぱちになって日本を飛び出しジムに居候していたアキラはこんな試合は無理だろうと言うが、普段は弱気なロニーがなぜか出ると言ってきかない。
しょうがなく練習に付き合い始めると、予想しなかった出来事がいくつも起こり、さらにわずかながらロニーにチャンスがあることもわかってきた……
ボクシングという過酷なスポーツを通じて、不器用ながらも情熱にあふれる男たちを描く現代ドラマ。

◆点数評価:
・オリジナリティ:
・キャラクター:
・ストーリー:
・世界観:
・文章力:

◆良かった点:
ボクシングへの熱い意気込みが迫ってきました。
辛いことがあってもボクシングを諦められないロニーとアキラがチャンスを得て再び立ち上がる不屈の精神に胸を打たれました。
相手の出方を待ち構えて臨機応変に立ち向かうリング上の駆け引きが深く、移り変わる状況を克明に表したスピード感と躍動感のある描写が手に汗握ります。
あまりボクシングに興味のない自分も一気に読ませてしまうストーリー展開の勢いがすごかった。

◆改善すると良くなりそうな点:
さらにインドネシアの観光地や名物、お祭りなどを登場させて現地感を盛り上げましょう。
善意の協力者が向こうからやってくるのではなく、主人公が事件や騒動に巻き込まれ、そこから人望や人脈を獲得するようなイベントを起こしましょう。
さらに勝つための動機付けを積み上げて読者の応援を引き出しましょう。
負けたらジムが閉鎖されてしまう、対戦相手の支援者を悪役にする、交際相手の父親の許可を得るためなど、背負うリスクや勝ったときの見返りが大きいほど試合にも緊張感が生まれます。



今回作品が取り上げられた方も、そうでない方も、講評を通じて作品改善の手がかりを掴んでいただけたでしょうか。いま執筆中の作品に反映し、これから始まる第3回カクヨムWeb小説コンテストへの参加をお待ちしています。
第二回の講評は11月28日に公開します。

▼【12/1~1/31開催】第3回カクヨムWeb小説コンテスト
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