概要
◆ノベルゼロ『大人が読みたいエンタメ小説コンテスト』週間ランキング最高17位!
◇あらすじ◇
王国と契約を交わす古代種の竜の腹部に大きな腫瘍が見つかった。破裂すれば命が危ない。宮廷魔術士ヅッソは前例のない巨大な竜の手術を決断する。通常の刃物では傷つけることさえできない竜の皮膚を切開し、未知なる腫瘍を取り除き、適切に縫合するためには何が必要か? 新興国の妨害を回避し必要な道具を集め、再現不可魔法“竜斬”を求め、仲間とともに東奔西走する。剣と魔法の中世ファンタジー長編。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!竜の手術、その四文字だけで無限に好奇心がそそられる。
ふらふらとカクヨムのファンタジー作品を彷徨っていた中で巡り合えた、初めて読破した長編小説です。
読み始めたら止まりませんでした。著者様の様々な知識から紡がれる重厚な世界観と説得力、文章力の高さもさることながら、キャラクターがそれぞれとても魅力的でたまりません。
参考文献も拝見しましたが、学びの上で裏付けされた知識で紡がれるお話程、読者の好奇心を擽るものはないと思います。
小説を読んで楽しみを得るだけではなく、知見を得ることもできるという、これほど素晴らしい体験をここで得られるのが勿体なく思える程です。
完結して随分経つ作品とは重々承知の上なのですが、それでもなおレビューを残したいと思うほど…続きを読む - ★★ Very Good!!執刀
竜を手術する。左様な発想は本作で生まれて初めて接した。不肖マスケッター、逆立ちしても、百回生まれ変わっても不可能な超人的跳躍点である。
モノにもよりけりだが、よほど緊急な事態でない限り手術なるものは執刀医だけで行うものではない。麻酔科医、臨床工学技師、看護師といった人々がチームを組む。
であるからには、本作が群像劇になるのも当然だ。語り部の魔法使いも充分に魅力的な人物ながら、一人一人のドラマや背景を鱈腹堪能出来る内容になっている。
個人的には、ミスリルを鍛造していく場面が最も白眉に感じられた。それが単なる刀鍛冶を突き抜けて、国際的な力関係や駆け引きの影響を受けていることも重く厚く語ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!竜の手術には何が必要?道具、技術、知識、そして……
ハートだ!!!!
いやー、意外。読み終わってみると、非常にアツいハートの物語でした。
これは、大人向け骨太ファンタジーですね。
「竜の手術」という、前代未聞のテーマを描いた本作。
その手術に至るまでに、乗り越えなければいけない壁の数は2つや3つではありません。
もういくつあったかわかりません。
それらにひとつひとつ、真っ向から向き合うその姿は、まさに職人。
そのハートに共感し、熱くなれるのは、大人の特権ではないかと思います。
丁寧に作り込まれた世界観は、それを冷めさせることなくしっかりと物語の中へ誘ってくれます。
作者様をはじめとする、職人たちの集大成。
お見事でした。 - ★★★ Excellent!!!独創性に満ちた、「実は王道」ファンタジー
竜の手術がモチーフの、ユニークなファンタジー。
前半は、前代未聞の手術を成功させるため、必要な技術や器具、人材を求め、主人公が旅するロードノベル仕立て。後半が、手術実践。――こう書くとわかるように、ちょっと黒澤の「七人の侍」に構成が似ている。つまり面白くないはずがないという王道構成。
手術のために古代の竜解剖図を入手したり、竜が持つ特異な皮膚構造をどう切り裂くか検討してメス代わりの特別な剣を入手したり――。ひとつひとつ課題を解決していく課程は、まさに「冒険」。つまり本作は変わり種ファンタジーではなく、実は王道ファンタジーなのだ。
週末の一夜、ファンタジー世界に本気で没頭するならふさわし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!ファンタジー版プロジェクトX ~竜の手術に挑む者たち~
とにかく最初から最後まで一気に読んで欲しい。面白い作品に出逢えた時は、ゴチャゴチャしたレビューよりもこの一言に尽きます。
とは言えそれで終わるわけにもいかないので、ちゃんとした感想も。
今作は国の命運とか威信をかけて竜を外科手術しようというお話です。
そのために宮廷所属だったり在野だったりの人材をかき集めて準備するお話です。
終盤ではもちろん手術に挑むのですか、この物語は7割近くを『手術の準備』に費やします。でもそれがメチャンコ面白い。
『リアリティ』とは現実の法則や史実に基づいたものだけでなく、『その世界でのルールに従っているか』という意味合いも含まれると思います。
この作品ではそのリ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!走れ。探せ。癒せ。ヅッソの機転が不可能を可能に変えてくれる。
竜を手術する…こんな発想、聞いたことありませんでした。
これだけで「凄い」な、と直感できます。架空の医術とはいえ、これは相当に緻密な取材をしなければ書けない代物です。
それを果敢に挑み、手術に用いる道具や魔術をクエストするという斬新な物語は、寝る時間を削られてしまいました。今日職場で居眠りしちゃったらどうしてくれるんですか。
世界設定も奥が深いです。
かつて海底に繁栄したマーフォーク、フレグマ。魔創語、魔譜。
七星列島という独特の地形、新大陸の歴史など、練り込まれた舞台背景を小出しにされるだけでも胸が躍ります。きちんと作者の世界が出来上がっています。
風俗文化にも触れており、手術に関連す…続きを読む