概要
自分は何者なのか。ただわかるのは、自分は目の前の男から今生まれたばかりの、生霊だかなにかの訳の分からない存在だということだけ。
何もわからずに、そのまま朽ちていくのだと思っていた。だが、やがて同じような存在の、男と女に出会う。
自分たちは《想いの残骸》という名の存在だと教えられ、ともに協力し合うようになる。
だが、彼らとの関係に違和感を覚える。彼らの好意は――彼女の愛情は、自分の概念の中にあってはいけないものだと感じるのだ。そして彼らと離れ、旅に出ることを決意する。
その旅の中、少女と出会う。
目の前で、自殺をしようとしている少女と。
そして二人は生きることの虚しさに共感しながら、恋人ごっこを始めるのだった。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!大作とはこういう作品のことだと思います!!
まずはお願いがあります。作者さまの作品を読むのが、この作品が初めてだという方は、作者さまの他の作品を一つ読んでからにしてください。
と言うのも、この作品は熱量が凄まじく、初見だと飲み込まれてしまう危険と、せっかくの醍醐味が味わいきれない恐れがあるからです。
他の作品も秀逸な作品ばかりですので、まずは作者さまがどのように物語を紡がれるか体感したあとで、この作品に翻弄されてみてください。
物語の内容は、『愛』をテーマに、様々な感情たちが様々な角度から問いかけてくるものです。
ここには、予定調和なストーリーは一切ありません。だからこそ、目に見えない感情というものを、ダイレクトに読者へ叩きつ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!感情たちの悲壮な戦い
人間の思念から生まれた《想いの残骸》と呼ばれる特殊な存在が、ひとりの少女と出逢い、恋人ごっこを始めます。少女との交流を重ねていくうちに、彼の心に少しずつ変化が起こり始めて……という魅力的な展開に引き込まれました。ですが、これはほんの序章に過ぎなかったのです!
予想のつかない方向にどんどん進んでいく物語に、何度も驚かされました。伏線がしっかり提示されていたことにあとから気付いて、そのたび膝を打ちました。そんな巧みなストーリー運びに翻弄される感覚が病みつきになります!
先の読めない展開が続く一方で、登場人物たちの複雑な感情は、読めば読むほど募るように押し寄せてきます。
共感できる部分もあれば、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!面白いんです!とにかく最後まで読んで下さい!
『なぜだ!なぜ誰も読んでくれない!!あ、じゃあ僕が読みますね。』
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この自主企画自体に吹き出してしまって、読み始めたのがきっかけですが、とにかく面白かったです。
「面白いんです!とにかく最後まで読んで下さい」などというキャッチコピー最悪ですよね。でも、それしか書きようがありませんでした。
内容はあらすじを読んでいただければ分かるように、「残骸」と言われる思念体が「愛」とは何かを見つける話なのですが、とにかくストーリーが読み手の思い通りに進みません!
常に予想を裏切る展開で進み、物語の中盤に差し掛かったところでまず結構などんでん返しを喰らいます。
最後まで何回ひっくり返されたか覚…続きを読む - ★★★ Excellent!!!感情が、人を愛おしいと想う。感情で愛おしいと、思う。
空から落ちる雨粒が、地面でざんざん音を立て、世界の全てを透明に変える。
食べる物も、飲むものも、何も無い部屋に唯ひとり。
気配のない部屋で、一人法師。
邪の魔も無く。
冷え切った雨に濡れそぼつ現。
そんな刻こそ、この作品に相応しい頃。
風を起こさず、頁を繰る。
認識の端まで雰囲気に染まり、わかるだろう。
存在することの奇妙さを、生きることの無情さを、命あることの儚さを、心の価値と尊さを。
それでも進まなければならない理由を、それでも変わらなければならない気持ちを、それでも考えなければならない選択を、それでも受け入れなければならない結末を、代わり映えのない日常を。
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