まずはお願いがあります。作者さまの作品を読むのが、この作品が初めてだという方は、作者さまの他の作品を一つ読んでからにしてください。
と言うのも、この作品は熱量が凄まじく、初見だと飲み込まれてしまう危険と、せっかくの醍醐味が味わいきれない恐れがあるからです。
他の作品も秀逸な作品ばかりですので、まずは作者さまがどのように物語を紡がれるか体感したあとで、この作品に翻弄されてみてください。
物語の内容は、『愛』をテーマに、様々な感情たちが様々な角度から問いかけてくるものです。
ここには、予定調和なストーリーは一切ありません。だからこそ、目に見えない感情というものを、ダイレクトに読者へ叩きつけてくるのではないでしょうか。
ラストは、この展開でよく綺麗にまとめたと、ただただ脱帽し、驚愕するだけでした。
ぜひみなさまも、作者さまの他の作品を一度目にしてから挑戦してみてください。
ラストに待ち受ける驚愕と感動を約束します。読み応え抜群の良作としてオススメします!!
人間の思念から生まれた《想いの残骸》と呼ばれる特殊な存在が、ひとりの少女と出逢い、恋人ごっこを始めます。少女との交流を重ねていくうちに、彼の心に少しずつ変化が起こり始めて……という魅力的な展開に引き込まれました。ですが、これはほんの序章に過ぎなかったのです!
予想のつかない方向にどんどん進んでいく物語に、何度も驚かされました。伏線がしっかり提示されていたことにあとから気付いて、そのたび膝を打ちました。そんな巧みなストーリー運びに翻弄される感覚が病みつきになります!
先の読めない展開が続く一方で、登場人物たちの複雑な感情は、読めば読むほど募るように押し寄せてきます。
共感できる部分もあれば、理解できない部分もあって、だからこそより強く、心に訴えかけ続けてくるのです。
不思議な題名に惹かれて読み始めたのですが、『想うことを想う』の意味がじわじわと効いてきました。
愛とは何か。様々な切り口から深く考えさせられる作品です。
『なぜだ!なぜ誰も読んでくれない!!あ、じゃあ僕が読みますね。』
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この自主企画自体に吹き出してしまって、読み始めたのがきっかけですが、とにかく面白かったです。
「面白いんです!とにかく最後まで読んで下さい」などというキャッチコピー最悪ですよね。でも、それしか書きようがありませんでした。
内容はあらすじを読んでいただければ分かるように、「残骸」と言われる思念体が「愛」とは何かを見つける話なのですが、とにかくストーリーが読み手の思い通りに進みません!
常に予想を裏切る展開で進み、物語の中盤に差し掛かったところでまず結構などんでん返しを喰らいます。
最後まで何回ひっくり返されたか覚えていませんが、最後の最後は予定調和に終わるというエンディングに深い感銘を受けました。
とにかく面白いです! 破壊衝動の思念体であった「残骸」の彼が愛を知ったのか、わからずに終わるのか……。
ぜひお読み下さい!!!
空から落ちる雨粒が、地面でざんざん音を立て、世界の全てを透明に変える。
食べる物も、飲むものも、何も無い部屋に唯ひとり。
気配のない部屋で、一人法師。
邪の魔も無く。
冷え切った雨に濡れそぼつ現。
そんな刻こそ、この作品に相応しい頃。
風を起こさず、頁を繰る。
認識の端まで雰囲気に染まり、わかるだろう。
存在することの奇妙さを、生きることの無情さを、命あることの儚さを、心の価値と尊さを。
それでも進まなければならない理由を、それでも変わらなければならない気持ちを、それでも考えなければならない選択を、それでも受け入れなければならない結末を、代わり映えのない日常を。
白と黒の世界から受け取るだろう。
定かでない明白な、想いを。
生まれてしまった、想いを。
願う、想いを。想う、想いを。
――想いを。
読み進めるほど、心が翻弄される。
押し出され、溢れあふれるほどの情を見ているはずなのだが、世界にはどうしようもなく情がない。いつもの通りと言えば、それまでなのだが。
感情で人間が動くのは道理、ならば、感情が人間を動かしたら、どうなる?
そんな事になれば、人間の絶対的な立場は変わってしまう。
いや、もしかしたら。それさえもいつも通りなのかもしれない。
どんな想いでも、いつかは変わってしまうもの。
読みながら私は世界を変えたいと願った。
だが、変わることはないのだろう。
私には、世界に想いがあるとは思えない。
上手く、面白い作品だ。
興味深くもある。
誰かに勧めても恥じ入ることはないだろう。
同胞一人につき一冊の長編に書き換えても、耐えられるのではないだろうか。
星は三つ張りたいと強く、強く思った。
ただただ悔しいのは、私の好みから外れたことだけだ。
もっとも、ダークファンタジーが好きな人なら、はまりこんでしまうかもしれないが。
半日かけてじっくり読んでしまいました。
カイ・ヴェルバーから分離した《破壊衝動》は、実来によってクク・ルークと名付けられます。そんな二人の心温まる交流……と思いきや。
三人の主人公視点で語られる厚みのある物語。しかしその中のユキマサが、本筋とあまり関わりないのでは?と思わせたところで終盤の展開。
とにかく読者を飽きさせない構成の工夫が見事でした。
キャラ個性、心理描写ともに作者さんの技量が光りまくってます。
《想いの残骸》や《心寿》というオリジナリティ溢れる設定も良かったです。破壊、殺意、希望、喜び、独占欲、孤独、恐怖、愛情……。人間の持つ感情をテーマに、多角的な視点からストーリーを展開していました。単なる異能バトル物じゃないのが良かった。
『愛情の裏返しは憎しみではない』。マザー・テレサの言葉を思い出す作品です。人間の感情、それも『愛情』というものの本質に限界ギリギリまで迫った名作でした。
これほど深い『愛の物語』に巡りあえることも稀なので、本当に満足のいく読了感でした。