第41話 朝食と作戦

 高沢達はヒロシ達に風呂や夕食を提供して、新しい服を用意してくれた。ヒロシには防寒機能がありながら、通気性のあるジャケットと戦闘服をレイカには戦闘服と防弾、防刃効果のあるボディアーマーが贈られた。ログハウスのリビングで雑談をした後に就寝する流れとなった。


「何から何までありがとうございます。お陰様で疲れが癒えました」


「君達の様な優秀な人間に救出を手伝って貰うんだ。これ位はおもてなしをされせくれ。朝にゆっくり話そう、今夜はベットで仲良く眠ってくれ」


「ええ。え?…仲良く?」


「恋人同志なのだろう?」


「はい!高沢さん、問題無いですよ。おやすみなさい!」


 ヒロシはレイカに引っ張られて、6畳程の広さにセミダブルのベットがポツンとある部屋に入った。


「寝よ?」


「うん…」


「見張りはやっとくから心配するな」


「おやすみなさい。レイカ、ヒロシ」


 ヒロシは風呂上がりのレイカに引っ付かれてドギマギしたが、久しぶりのフカフカのベットの為かスヤスヤと2人は眠った。


「全く…ヒロシもレイカもお子様ね。あれだけ好き同士のクセに…」


「どっちも根が真面目過ぎるからな。余程、安らぐ場所に行かないと何も始まらんだろうぜ。俺達は高沢達の行動や言動に目を光らしておこうや」


 高沢達はヒロシやレイカ達の戦力が降って湧いた様に出会えて喜んでいた。それを聞いていたサウスとレディは問題無しと判断して、何事も無く朝を迎えた。


「おはようヒロシ君」


「おはようレイカ」


 2人は自然と数秒間ハグをして着替えた。


「おはよう相棒。よく眠れた様だな」


「ああ。お陰様でな。レディおはよう」


「おはようヒロシ。レイカも良い目覚めね?」


「うん!久々のベットは最高だったよ!」


 リビングには高沢達が既に待機しており、朝食の準備が出来ていた。


「良く眠れたか田中君、榮倉さん?」


「はい。熟睡出来ました。高沢さん達は大分早く起きておられる様ですが大丈夫ですか?」


「そこは軍隊仕込みだ。用意が早いだけさ。朝飯にしようぜ!」


 誠一に促されて、椅子に皆が座り朝食が始まった。


「食べながら聞いて欲しいのだが、田中君と榮倉さんの戦力はアテにしているが、無闇な流血は避けたい。何か案はあるかな?」


「コレは使えませんかね?」


 ヒロシは教団のエムブレムを見せた。


「盾脇中将と一緒にいた人間が持っていたヤツだな?南田、教団幹部に化けれるか?」


「えっ!?私ですか?」


「親父はツラが割れてるし、俺は粗野がバレる。ヒロシとレイカ、サウスとレディはもしもの時の切り札だ。後はスーツを持ってる南田さんしかいないだろ?」


「ですよね……頑張ります」


「イヤホンを髪で隠して、小型カメラが付いたメガネを掛けて潜入してくれ」


「はい…」


「教団の施設の前に射撃ポイントは無いかな?私がスコープで南田さんを追えば少しは安全だし、安心出来るでしょ?」


「丘が目の前にあるな。じゃあ榮倉さんは南田を監視、危なくなったら頼む」


「了解でっす!」


「ありがとうレイカちゃん!」


「お風呂で裸の付き合いをした仲だからね!

しっかり守らせて貰うよ!」


「うむ…南田に内部をボサツ幹部の視察と称して探って貰えば、内部の構造がある程度分かるな。移動手段だが…ここにはバイクが3台あるから2人乗りで……」


「高沢さん、登山入口に国防軍の幹部が乗る様な黒塗りの車を止めてあります。使えませんか?」


「基地から持って来たのか…君達は本当に感謝だな。幹部が来たとより演出出来るな。誠一、運転手兼護衛役をやれ」


「ああ。これで南田さんのリスクがより減るな。問題はヒロシだな。無線機が足りない…

いざと言う時に何処にいて貰うか…」


「誠一さん、これと周波数合う?」


 レイカは島でヒロシに見せた、高性能無線機を誠一に見せた。


「また凄いのを持ってるな…周波数は勿論大丈夫だ。じゃあレイカはその使い慣れた物を使ってくれ。ヒロシには別のを渡そう」


「よし、田中君の無線問題はクリアだな。後は何処に潜んで貰うかだが…」


「レイカと真逆、教団施設の裏の地理はどうなっていますか?」


「榮倉さんが陣取る丘より急斜面の雑木林だな。潜むには良いが、施設への潜入は人目に付きやすく向かない場所だな」


「緊急事態になれば、そこから1発ぶち込んで陽動するのはどうだ?」


「ヒロシとサウスが撃った後に私とレイカも総攻撃に移る感じね!?」


「……田中君、その威力だが……」


「狙い撃ちから大量破壊まで何でもござれだ。そこは信じて欲しい」


 サウスとレディはグニャグニャとスコープ付きになったり、銃口を太くしたり細くしたりして高沢に自由自在をアピールした。


「……フッ。ハハハハ!ここまで生きて来た君達を信じよう!誠一と南田が危機に陥ったら頼むぞ?」


「ええ。承知しました」


「よし!では今から1時間後に国防軍が使っている秘匿無線の周波数で、ボサツの幹部が視察に行く事を教団施設に伝える。その5分後に出発しよう!」


「よぉし!必ず成功させよう!皆んなよろしく頼むぜ!」


「皆さん、よろしくお願いします!」


 誠一と南田がヒロシ達に挨拶をして、朝食と作戦会議は終了した。それから約1時間後にヒロシ達と誠一、南田は黒塗りのセダンに乗り込んだ。

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