第16話 一時的な場所移動
潜水艇は海岸手前、20メートルで停止した。
「上出来だヒロシ!操縦は大体覚えたな!」
「先生が良かったよ。上陸前に仮眠していいか、サウス?」
「悪い睡眠を忘れていた!大丈夫か!?」
「さっきまでアドレナリンが出まくってたんだろうな…俺も忘れていた…から…気に…す
…る…な………」
ヒロシは眠った。
「お疲れヒロシ…俺は素早く変身出来るように訓練しておくよ。お互い力を付けよう…」
3時間後、ヒロシは起きた。
「おはようヒロシ。睡眠時間はそんなもんで良いのか?」
「最初の内は環境に参ったのとサウスに甘えて熟睡したけど、グプ人が攻めてくる前は割とブラックな環境で仕事をしていて睡眠時間は短めだったし、今は色々な物が身体に入ってタフになったんだろうな…うん、問題は無いよ」
「そうか…ヒロシが飯を食ったら上陸しようぜ」
ヒロシは固形食と水をサッと摂った。
「上陸したら、そろそろ水分の補給をしないとマズいな。適当な場所があればいいが…」
「そんなヒロシに朗報だ。この潜水艇には海水の濾過装置がある。ミネラルたっぷりな水なら困る事は無いぞ!」
「……本当に凄いなコレ。じゃあ頑張って食料を探さないとな」
「そうだな。先ずはモニターで海岸をチェックしよう」
モニターに映る景色を潜望鏡を左右に動かして念入りに確認したが、グプ人や人間の気配は無かった。
「よし平気そうだな。ヒロシ、そのまま前進してくれ」
「あ、ああ。大丈夫なのか?」
海岸の砂浜が近くなると潜水艇は前方と両翼部から、自動でシャッ!と車輪が出た様でスルスルと上陸した。
「便利な事で…」
「まだナイスな機能があるんだ。コレ持っていてくれよ、ヒロシ」
サウスはヒロシに掌サイズの丸みを帯びた立方体を渡した。潜水艇から降りる様に促して2人は砂浜に降り立った。
「ヒロシ、ソイツのボタンを押してくれ」
「ああ。押したぞ」
潜水艇はバックして海に入り見えなくなった。
「こうしておくと目立たないだろ?もう1度押せば、目の前に現れるから多少離れていても融通が効く。この砂浜の範囲なら呼び出せるな」
「本当に凄い性能だな…グプ人の乗り物じゃ無いみたいだな」
「ハハハ!本当にな。その辺も後で話すとしてだ、取り敢えず周囲を探索しようぜ」
砂浜を抜けると何の変哲も無い道路に出た。その奥が線路、またその奥が住宅街といった風景だった。
「あまり破壊されて無いのに人の気配を感じないな…」
「都市部と違って、ここをグプ人は爆撃しなかったのかもな。住宅街に入ろう」
線路を渡り、住宅街に入ると腐臭がした。
「うっ…爆撃はしなかったが、しっかり攻撃はした様だな…そういえば、俺達は海から来たのに旗艦はいなかったな」
「偵察機から黒い装備のグプ人が数人降りて攻撃するだけで武力が無かったら、それだけでこんな所はパニックになるだろうからな…相当遠くからか、又は列島の反対側から偵察機を飛ばしたかもな」
「成程…都市部から田舎まで容赦無い攻撃をした訳だなグプ人は。もう少し奥に行ってみよう」
腐臭が充満する住宅街を通り抜け、2人は畑に囲まれた一軒家を発見した。
「ふぅ…ここまで来ると土の匂いだな。農家だな…サウス、人の気配はするか?」
「しないな。中に入って調べよう。油断するなよ?」
ヒロシはサウスを構えて玄関へ。引戸はガラガラとアッサリと開いた。中に入ると畳の部屋が多い、いかにも日本家屋だった。仏間から消費期限の長い洋菓子と台所からインスタント麺やコーヒーを頂いた。
「割と大量に食料があったな。しばらく拠点にも出来そうだ」
「ヒロシ、2階も見ておこうぜ」
階段を上がると長年使われていなかった様で子供部屋や物置は埃っぽいので、窓を開けて換気をした。
「家の周りは畑、子供は随分前に独立したと推察出来る…ここの人達は避難出来たのかな
…?」
「住宅街から離れていて家や畑も壊されて無い。まぁ避難所や山中に逃げた事を祈ろうぜ
…人が恋しくなったか?」
「いいや…と言ったら嘘になるな。言葉を選ばずに言ったら、マトモな人間に会って無いからな…後はどの程度グプ人の攻撃に合って日本人が生き延びたかが知りたいかな…」
「俺達の要件を済ませば自ずと分かるんじゃないか?今日明日はここで過ごすとして、旗艦を沈没させた結果を確かめに行かなきゃならないからな。その時に国防軍の残存具合や
人の生存具合も分かるだろうさ」
「…そうだな。それに忘れない内に、今夜寝る前には司令官の言った言葉を検証しないといけないな」
「それもあるな。取り敢えず明るい内に外の倉庫も見ておこうぜ」
「ああ。それに井戸もあったな。身体を洗える内に洗っておくか。後は畑からの恵みも頂こうか」
2人は外に出た。サウスは耕運機やトラクターに興味津々だった。ヒロシは井戸の水で身体を洗い、畑から緑黄色野菜を頂戴した。外の用件を済ますと暗くなり屋内の6畳程の部屋にランタンを点けて、ヒロシの夕食後に司令官の言葉を検証する事にした。
「さて、始めるか?」
「ああ。ノートも開いて準備万端だ。先ずは俺と同類の話だな」
「明後日辺りに旗艦が沈没した辺りから様子見だな。果たして現れるかどうか…」
2人の夜語りが始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます