第15話 旗艦沈没
「ヒロシはガッカリするかもしれないがな、多分アナログな引戸を開けたら格納庫に繋がるパターンだと思うぞ」
「それは確かに少しガッカリする訳だが…コントロールルームのスイッチで開く、とかは無いのか?」
「探ってみるか。俺が分かるかどうか分からんがな…」
2人はコントロールルームの計器類やスイッチを確認して回った。
「全部、旗艦のコントロールパネルだろうな。推測な部分もあるが…」
「…旗艦からの脱出も兼ねているなら、司令官の周りはどうだ?さっきのタブレットとかは?」
「あの遺体に近付くのは罠を張ってそうで嫌だが、しょうがないか…警戒しろよ?」
「ああ、タブレットを拾う……サウスどうだ?」
「……ああ。司令官が使う物だけあって、旗艦を割とコレ1つで操作出来るな。グローブになって、操作してみるよ…………あった。どうだ?」
サウスがタブレットを操作して、しばらくすると司令官の椅子の後ろの壁がガーと開き、狭い階段が現れた。
「割と先進的だったなヒロシ?」
「ハハッ。手で開けなくて良かったよ」
「銃に戻るよ。タブレットは持っていてくれ。まだ使い道がある」
ヒロシがサウスを構えて階段を降りると、水の上に潜水艇が浮いていた。
「…空を飛びそうなデザインだな。コレが海の中を潜るのか?」
「…ヒロシのイメージが流れて来たよ。地球のヤツは横長で丸みを帯びてるんだな…そうだな、コイツは偵察機に似ていてヒロシの思うステルス機っぽいが深度8,000メートルまで潜れて、水中を高速航行出来る優れモンだ。
身を隠す場所としても最適だな」
「凄い性能だな。サウスが褒めていただけあるよ。何を動力源に動くんだ?」
「地球で言う所の水素電池だ。時間は掛かるが自家発電も可能だから、あまり燃料切れの心配は無い」
「安全な寝床と移動手段を見つけられたよ。早速、脱出するか?」
「そうだな。ヒロシにも追々操縦を覚えて貰うとしてだ…今の内に打合せだな。さっきな…ダブレットを見ていたら、この旗艦は自爆出来る事が分かった。タービンとエンジンを同時に全力で稼働させると放熱が間に合わずに爆発して多分沈没する。問題はその破壊力だ。旗艦は海底のガスを吸い上げていて、動力は潜水艇と同じく水素電池だ…この辺り一帯が吹き飛ぶ。陸は離れているが、かなり被害を受けるだろう。俺達は深く潜り遠くに逃げる必要がある。俺は操縦するから、ヒロシには自爆のスイッチとモニタリングを頼みたい。言語が分からなくても、グラフが出る筈だから問題は無いと思う。やれるか?」
「サウスは優しいな…やる事は簡単だが、俺が生活していた町が吹き飛ぶかもしれないから態々、長々と説明してくれたんだろ?問題無いよ、俺達の目的を果たそう」
「……おう。じゃあ乗り込むか!そこの窪みを引くと乗込口が開くぞ」
「ハハッ!アナログだな…」
2人は乗込口の扉をロックして、操縦席に座った。サウスが操作し易い様に指の太さ位の触手を数本伸ばしてスイッチを入れると計器類が明るくなり、操縦桿の先にあるモニターには日本列島が映し出されて、太平洋側の海に青い点が点った。
「GPSか?」
「広範囲反響レーダーだな。若干の誤差はあるだろうが、中々の性能だぞ!」
潜水艇は垂直に海の中へ入り、太平洋側に進路を取って進んだ。
「ヒロシ、タブレットの真ん中の2つの表示を同時に押してくれ」
「……押したぞ。お…棒グラフの様な物が表示されたな。2本あるが、どちらもまだ短い」
「タービンと水素電池の温度だ。それが画面の1番上まで到達したら旗艦は爆発するだろう
…何処まで通信出来るか分からんが注意して見ていてくれ」
「分かった。既に画面の半分に達している」
「了解だ。もう少し旗艦と距離を取ろう」
サウスは旗艦から5キロ程離れた地点で潜水艇を浮上させた。
「この位離れていたら大丈夫だろ…ヒロシ、グラフはどうだ?」
「9割って所だな」
「よし、外の様子を画面に出そう」
サウスがスイッチを操作すると画面中央に旗艦が小さく映っていた。
「潜望鏡の映像か?」
「ああ。目視も出来るぞ」
サウスがボタンを押すと操縦席の後ろにスーと円柱型の潜望鏡が降りて来た。
「おお多機能だな。グラフは…もう、ヤバいなサウス。画面の天井だ」
「そりゃ目視は危険だな…」
サウスが操縦席後ろの潜望鏡を元に戻すと同時に画面中央の旗艦が光り爆発した。
「これだけ離れていれば静かなものだな…」
「ああ。だが、もうすぐ衝撃波が……」
「うおッ!」
サウスが言い終わらない内に衝撃波がやって来て潜水艇はグァングァンと激しく揺れ、ヒロシは思わず声が出た。
「吃驚した…旗艦から黒煙が上がっているな…」
「間も無く沈むな。長い1日、いや2日間だったな。目標達成だ、相棒!」
「ああ、相棒!…さて、俺と同類の人間は興味を示すかな?」
「先ずは様子見だな。陸地に戻りながら操縦を教えるよ。何処かの海岸から上陸しよう」
「海岸に上陸…そんな事も出来るのか…本当に高性能だなコレ…」
「まだ面白い機能もあるぞ!先ずは操縦桿を握ってくれ」
ヒロシはサウスに操縦を教わりながら、隣の県のエリアの海岸を目指した。
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