第14話 旗艦全滅
2人が階段裏に潜んで数十分。サウスはヒロシにリュックを降ろさせ仮眠を促して、グプ人の気配を警戒している。
(もう30分位は何も動きが無い方がヒロシは1時間程仮眠が取れる。疲労が抜けて、目的が達成しやすいかもしれないな…とか思ったら気配がするんだよなぁ)
サウスはヒロシの耳元で囁く。
「ヒロシ来たぞ。グプ人2体だ…物音を立てるなよ?」
膝を抱えて頭を伏せていたヒロシはゆっくりと身体を開き、サウスを構えて階段裏から出た。パスッパスッと音を消して球体をグプ人2体の後頭部に放ち葬った。
「先ずは2人。階段裏に隠そう。悪かったな起こしてしまって」
「あれ以上は本格的に眠っていたから丁度良いさ。乗務員室には8人いた。後6人倒したいが、全員は出て来ないだろうな…」
「そうだな。このデカいのを動かす最低人数ってのがあるだろうし…いっそのこと、階段付近の天井をブチ抜いて様子を見るか?」
「急に強行策になったな?」
「今倒したグプ人、何か気付かないか?」
「ん?…身体が細い?」
「そうだ。明らかに現場に出る兵士じゃ無い。コントロールルームには屈強な兵士も詰めているかもだが数は少ない筈だ。兵士と、この艦の司令官を倒せば俺達の勝ちは決まる」
「また賭けだな…まぁ嫌いじゃ無いが」
「だろ?既に日を跨いでいるし、時間が掛かって不確定要素が増えるよりも、今仕掛けた方が良い。何より、俺とヒロシならやれると確信めいた物がある。付き合えよ相棒?」
「勿論だ、相棒。ブチかませ…!」
ヒロシは階段裏の天井にサウスを向けた。
ドッゴガァァンッ!と発射音と天井の破壊音が重なった音がした。
「ヒロシ、ドア前に行け」
「了解」
ヒロシが階段を上がると両開きのドアがバンッ!と開き、全身黒のフル装備でグプ人が2体現れたが構えられたサウスからドンッドンッ!と撃たれ、上半身が焼け溶けた。
「ヒロシ、中へダッシュ!」
階段を蹴り、ヒロシがコントロールルームに入るとキーンと心地良い耳鳴りが来た。グルリと見渡すと黒の装備を身に付けていないグプ人が4人と周りより豪勢な椅子に座った司令官らしきグプ人がいた。4人が腰のホルスターから銃らしき物を抜いたので、サウスを順番に向け球体を撃ったのを確認、司令官らしきグプ人もサウスに撃って貰おうとしたら彼はストップを掛けた。
「ヒーローシーすーこーしー待て!」
スローに感じる時間が終わるとグプ人4人が、焼け溶け上半身がブァンッ!と吹き飛んだ。
「司令官か?」
「そうだ。グプ人は無抵抗を示すのに手を上げるなんて文化は無い。コイツは諦めているな。ドゥメルクだった俺だから分かる」
「どうするんだ?」
「取り敢えず、会話してみるか…アンタ、この言語は分かるか?」
司令官はフェイスマスクを外し、ディスプレイかタブレットと思われる薄型の物を指差した。
「あの制御機器類の…タブレットぽいヤツが外れるみたいだな。ヒロシ、渡してやれ」
「………そらよ」
司令官は画面を操作してこちらに見せた。
〈お前達は何者だ?〉
「翻訳機か…貴様等に侵略されても、強かに楽しく生きたい2人だ」
〈ドゥメルクが何故、地球人に寄生しているのだ?〉
「偶然だ。俺が寄生している人間はグプ人の血を吸収しても生きていられる人間で、寄生しても違和感が無く、オマエ等と違って会話が面白いんだよ」
〈報告にあった地球人か。グプ人は地球を侵略しきれ無かった。上位種も他の惑星で苦戦中。この星の到着が遅れている。我は支配を外れた。お前達にとっては朗報だ〉
「言葉が一言ずつで分かりづらいな…お前達を支配していたのは何人だ?」
〈ヴァラャルだ。支配に抗える者は幸運だ。さようなら〉
「何だ?自殺でもするのか……オイッ!?」
司令官は口から金の血をタラタラと出して目の光が無くなった。
「毒か?」
「いや、切腹や陰腹ってヤツに近い。ヒロシの記憶にあるやつで言えばな。ボディアーマーの下は既に血塗れかもな…おっと、外そうとするなよ?罠かもしれん」
「…俺達に勝てないと悟り陰腹を切って、旗艦を攻めて来た人物を見届けて死んだって事かな?」
「だと思うが、上位種の支配は外れたとか言ってたしな。司令官ともなれば自分に不甲斐無さを感じて命を断ったのかもしれん」
「ヴァラャルとか言ってたな。サウスはその種族を知っているのか?」
「初耳だな。ヴァラャルもそうだが、司令官の口から情報量が多過ぎたな。ヒロシ、全部覚えているか?」
「今はな…忘れてしまいそうだから、メモを取っておこう。リュックを持って来るよ」
リュックを階段裏から持って来て、ヒロシはノートを出してメモを取った。
「よし。これで後からサウスと検証や考察が出来るな。旗艦はどうやって破壊する?」
「んー…悩むな。最初に見たタービンの部屋に手榴弾を投げ込めば、それなりに破壊は出来るが…あっ!思い出した。グプ人が作った物で、それなりどころか有能なヤツがある」
「それは何だ?」
「潜水艇だ。前の宿主の本業は潜水艇乗りで俺も操縦出来る。偵察機はノロくて装甲も弱かったが、潜水艇は頑丈で潜航速度も速い!
旗艦内に迎撃用、若しくは脱出用に格納してある筈だ。探すぞ相棒!」
「おう。相棒」
2人は潜水艇がある格納庫に繋がる扉やスイッチを探し始めた。
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