第23話 尋問とK県へ

「貴様等ッ!国防軍にこんな事をして、無事で済むと思っているのか?」


「国防軍心得5箇条!」


「…は?」


「は?じゃないって。国防軍何でしょ?だったら心得5箇条位、さっさと答えてよ」


「…ぐ…ッ…」


「はいニセモノかくてーい!オジサンは何者かな?」


「………うっ?…ガアッ!?」


 レイカはエセ国防軍の膝裏を蹴り、跪かせた後に銃床で頭を殴った。


「ぐおおお…き、貴様等…わ…我等を…敵に回す…つもりか?」


「だーかーらー何処の誰かって聞いてるの!敵に回すから教えてよ?」


「レイカ代わるよ。テントの中に武器が沢山あるから見てきてくれ」


「あっホント?じゃあ頼むねサウス」


 ヒロシはサウスを構え、エセ国防軍の目の前に立った。


「アンタ、何者だ?」


「だ…誰が貴様等に…ヒッ!?それは異星人と一緒の!?何だお前は!?」


「質問はこちらがしているが?次答えなかったら手を吹き飛ばす」


「やってみろ!私は栄えある救世集団ボサツの……アギャアァァァッ!?」


 サウスがエセ国防軍の男の腕先をドンッと撃って吹き飛ばした。


「サウス…喋ってるのに……」


「済まん。やってみろと言われて反射的に撃ってしまった」


 エセ国防軍の男がのたうち回っている間にヒロシはテントの中で鼻歌まじりに武器の品定めをしていたレイカを呼んだ。


「ボサツって知っているかレイカ?」


「腕を飛ばされて、ようやく喋ったんだねぇこのオジサンは…カルト系宗教のボサツの事かな?」


「腕は反射的に俺がな…日本風な響きだが、ヒロシは知らないのか?」


「忙しかったから世間の事に疎くてな…それでレイカ、どんな集団だ?」


「日本的響きって言うサウスの言葉も最もだけど、世界的カルトな新興宗教だね。日本人が発音するとボサツだけど、ボーン・サット2世が興した宗教だから略してボサツって言うんだ。まぁ、教祖様の名前が教団名だね。グプ人が攻めて来る前からマスコミが政治家や金持ち、テロリストと繋がっていると噂されてて…と言うか、私を助けた環境保護団体もボサツから資金援助を受けてたから、噂でも何でも無いけどね。世の中の色々な利権に入り込んでるだろうから世界が異星人に攻められたりしたら政府に代わって台頭して、各国の軍隊に化けるなんて簡単じゃないのかな?

私の推察だけどグプ人の遺体を集めて利用しようとしたのも、何処かの国の機密情報を知ってないとそんな発想にならないからね…」


「成程な…グプ人の血を取り入れて、宗教団体が超人でも造りたかったか?どうなんだ、おっさん?」


「こ、ここを潰しても…む、無駄だ…異星人のい、遺体集めは…せ、世界で…ボーン様がこの…世の…きゅう…さ…い」


「出血多量で死んだのか?」


「いや、よく見ろ。傷口は焼け溶けるから出血じゃないな。毒か何かじゃないか?」


 レイカがエセ国防軍の遺体を足で持ち上げて仰向け状態にした。


「口の横から泡吹いてるから呼吸困難になってる…青酸カリかなコレは。喋りたくないからか、サウスから撃たれのが痛かったのか分からないけど自殺だね」


「そうか…ボサツの手掛かりを探すか?」


「難しいかもね。島で言ったでしょ?どう見ても日本人じゃ無いヤツがいたって。そいつもいなくなってるし、残った兵士も明らかに弱かった。島の戦いなんかで逆に私達の情報を盗られたかも…」


「エラく狡猾だな。人的損耗も全く気にして無い宗教団体か…あ、俺達は誘き出されたか!?」


「いや、だとすれば死んだコイツを尋問している間に囲まれているだろう。周りに人の気配は無いぞ。ここに残ってるヤツ等は万が一グプ人が現れた時に報告を受ける為に置いておく部隊って感じだろうな」


「サウスがそう言うなら安心だね!じゃあ、必要な物を持ってK県に向かいますか!」


 念の為に30分程時間を取ってボサツの手掛かりや、これからの旅路に有益な情報を探したが何も無かったので、3人は荷物を担いで潜水艇に戻った。


「ねぇヒロシ君とサウス、しばらく私が操縦していいかな?」


「ああ構わないぞ。だが、先ずは昼飯を食べろよ?食い終わるまでは俺が操縦するからさ」


「ありがとうサウス。レーションとやらを食べてみるか、レイカ?」


「私は食べ慣れてるんだよねー…まぁヒロシ君の初体験に付き合うよ」


 長期保存が効くにしては不味くないレーションの食事セットを興味深そうに一品ずつ味わうヒロシをレイカは微笑んで見ながら食べた。


「ご馳走様。誰かと食べるとレーションも美味しいね!サウス、操縦させて?」


「ああ。K県まで5時間位だな。途中でヒロシに交代しろよ?」


「了解!ヒロシ君は仮眠してなよ?」


「2時間半経ったら操縦代わるからな?」


 レイカは陽気に話しながら操縦した為、ヒロシは仮眠出来なかったが悪い気はしなかった。予定通り5時間後にK県の浜辺の手前に到着して、モニターで周囲をチェック。


「夜だけど静かだね…物資は豊富にあるけどK県には上陸する?」


「思わぬ物や安全な避難所があるかもしれないから上陸してみよう。まぁサバイバル観光かな?」


「アハハハ!サバイバル観光って!面白い造語だねヒロシ君!」


「じゃあサバイバル観光に行きますか」


 3人はK県の砂浜に降り立った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る