第22話 港攻略

 何も気にせずに会話を出来る者達と会えたからか、レイカははしゃいでいた。潜水艇の機能や操縦方法をサウスに質問責めにして、施設で一緒の時に元々好意があったヒロシにはボディタッチ多めでアレコレと話をして、彼に寄り掛かり電池切れを起こした様に眠った。


「…人恋しかったんだなレイカ…」


 ヒロシは隣で眠る彼女の頭を撫でた。


「眠るのに良い時間だ。ヒロシも眠れ。港までは俺が操縦して、緊急事態の時は起こすからさ」


「ありがとうサウス。少し眠らせて貰うよ」


 数時間後、サウスが夜明けの港を監視中にレイカが目を覚ました。


「んん…寝ちゃったか…ごめんねサウス、一方的に喋って寝落ちしちゃって…」


「レイカおはよう。構わないぜ、俺達も心強い味方が出来て嬉しかったからな」


「ヒロシ君もそう思ってる?」


「勿論だ。ヒロシと俺は繋がっているからな」


「…あー成程ね。フフッ…ヒロシ君、私頑張るよ」


 眠っているヒロシの頬にレイカはキスした。


「お熱い事で…港を監視しているが、今の所動きは無い」


「見張っててくれたんだ…ありがとうサウス。まだ表に誰も出ていないね…食料をサッと奪って離脱出来たら良いけどなぁ…」


「夜明けに隠密行動は難しくないか?おはようサウス、レイカ」


「おはようヒロシ」


「ヒロシ君ごめん。起こしちゃった?」


「いや、自然に目覚めた。朝飯を食べながら作戦会議をしようか。レイカ、バームクーヘンで良いか?」


「最高!コーヒーもあったら尚最高!」


「あったりするんだこれがまた。サウス、濾過した水を飲んでみて良いか?」


「ああ。コーヒーに使ってみてくれ」


「この潜水艇にいたら水には困らないんだ…

凄いね!」


 ヒロシは湯を沸かして、農家で頂いたバームクーヘンとコーヒーをレイカに渡し、モニターに再び向き直った。


「食料のある場所は目星が付いてるのか、レイカ?」


「うん。戦車の裏にあるテントで、エセ国防軍の兵士達が固まって食事をしていたからね

…町側から上陸して、ヤツ等の食事前か後に忍び込めないかな?って思ってた」


「今ならヤツ等の昼食前に行動したいな。迂回して、目立たない上陸ポイントを探してみるか」


 サウスが操縦桿を操作して、貿易センタービルがあった方向に潜水艇を動かした。


「大型ヘリや戦車の後方に来たね。さっき言ったテントも近いよ。どう動く?」


「島でそれなりの実力があった兵士を倒したから、あそこにいる兵士や指揮官は俺達の脅威にはならないと思っている。戦車を先に潰せば楽だな」


「サウス…夜に潜入する気は無いな?」


「ああヒロシ。レイカの話を合わせて考えるとアイツ等は俺達にも害を為す集団だ。潰せる内に潰した方が良い。夜まで待って、不確定要素が出来る前に今から仕掛けよう」


「ライフルは弾数が心許無いから、私は島で拾って来た小銃を使いたいけど大丈夫かな?」


「レイカは兵士を、俺とヒロシはヘリや戦車を破壊する。ザックリだが、こんな感じの作戦で良いだろう。レイカ、気配を感じさせないのは能力か?」


「そう…なのかな?一応施設で軍事訓練は長く受けたからなぁ…分かんないけど、ヒロシ君の人間離れした動きは間違い無く能力だよね?島でスコープ越しに見てたけど超絶速かったよ!」


「発動条件を探りながら使っているが、命の危険がある中に突っ込めば使用出来るみたいだな」


「…それはまた…リスキーだね。せっかく再開出来たんだから、死なないでよヒロシ君?」


「サウスもいるから大丈夫だよレイカ。俺達の上陸は、あそこのコンクリートが壊れた場所からだな?」


「ああ。あそこに潜水艦を横付けする。後はリュックやバックを空にしとけよ?食料とあったら医療品なんかも頂かないとな」


「あっ!そうだね。流石はサウス!」


 レイカは鞄からドサドサと島で確保した弾倉を出して、数個を腰の弾帯に入れ小銃にジャカッ!と弾を装填した。


「準備オッケーだよ!ヒロシ君は?」


「………オーケーだ。上陸しようか」


 3人は港に上陸した。ヒロシがキーレスのスイッチを押して、潜水艇を海に隠した。


「よし。気付かれて無いな。ここから放物線を描く様に球体を発射する。レイカは射撃し易い場所から遊撃してくれ」


「了解サウス。テントを破壊しない様にね?」


「分かってるよ。ヒロシは発射後に俺を構えて、ゆっくりテントを目指せ」


「了解だサウス」


「作戦開始だ。撃つぞ!」


 やや上空に構えられたサウスからドドドドンッ!と連発して球体が発射され、ボボボンッ!と輸送ヘリや戦車に命中した。


 それを見てレイカは港の中央に走り、ヒロシはサウスを構えてテントに向かう。時間差でヘリの1台がドオォォンッ!とメインローターを吹き飛ばしながら爆発炎上して、兵士達が港の中央に逃げた。逃げた先でバララララッ!と音が鳴り、レイカの小銃の餌食になった。


「サウス、コレを狙っていたのか?」


「いや、偶然だ。レイカの戦闘経験が成せる技だな」


「全く…頼もしいよ…」


 ヒロシはテントに到着して中を覗き無人を確認、物色を始めた。


「レーションに医療品、小銃の予備に弾丸…ある所にはあるもんだな…」


「レーションと医療品を中心に頂こう。武器はレイカが選ぶだろ」


 ヒロシがリュックに物資をパンパンに詰め終わった時に、レイカが国防軍の制服を着た人間に銃を突き付けてテント前にやって来た。





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