第36話 新しい仲間
「反応はしたが液体と容器の所為で、意思が
分からないな…直接接触してみるか。ヒロシ、容器に近付いてくれ」
言われた通りにヒロシが縦長の容器に近付くと管を伸ばして、上部に小さな穴を見つけた。そこから液体に入り中のドゥメルクと接触した。数分経って、サウスがヒロシの左腕に戻った。
「…このドゥメルクが何を言っているか分かったのか?」
「ああ。日本の何処かを攻撃していたグプ人に寄生していて、爆発に巻き込まれ宿主は死亡。瀕死の所を人間に捕獲されて、この液体に放り込まれたそうだ。俺も体験したが、液体の中は中々快適で海洋深層水に生命維持に必要な栄養素を循環しているな。まぁそれはともかく、このまま何もしなければ朽ちて死んで行くのもヤツは理解している。レイカに寄生して、俺達と一緒にサバイバル観光をしたいそうだ」
「おーそうなんだ!えっと…どうすれば良いのかな?」
「この容器を叩き割ってヤツを外に出したい所だが、長い事生物に寄生してないから液体から出た途端に弱って死ぬ可能性も否定出来ない。容器の上の蓋にレイカの小指が入る位の穴があるから、指を入れてちょっとずつ腕に寄生して貰おう」
「オッケーサウス。ヒロシ君、肩車して?」
「はいはい……よっ…レイカ、届いたか?」
「穴は…これか。うん大丈夫!」
サウスが容器をコンコンと叩くと、容器の中のドゥメルクはブワッ!と花が開花した様に拡がり、細い管を無数に伸ばしてレイカの小指から少しずつ寄生して行く。
「長く掛かりそうだね。無防備な時間だよこれ…」
「レイカは肝が据わっているな…未知のモノが身体に寄生して来てるのに」
「そりゃあ、ヒロシ君とサウスと見てるからね。私にも相棒が出来ると思うとワクワクするよ!」
「レイカのそんな精神がヤツとの結び付きを強くするだろうな。寄生に時間は掛かるだろうが、俺が警戒をしておくから大丈夫だぞ」
1時間後ドゥメルクの寄生が終わり、ヒロシはレイカを肩車から降ろした。
「ヒロシ君ありがとう。さて、言葉は通じるかな?初めまして!レイカだよ!」
「こんにちは…私もサウスみたいに名前が欲しいわ。もうドゥメルクじゃ無い、貴女の相棒になったから…お願いね」
「おー!分かったよ…名前ね…私に寄生したから、何だか女性ぽくなったのかな…んー…
カッコ良い相棒、女性になって欲しいって事でレディはどうかな?」
「レディ……貴婦人って意味なのね?うん、とても気に入ったわレイカ。よろしくね」
「こちらこそよろしくね!ヒロシ君、サウス
…レディが仲間になりました!」
「ああ。よろしくなレディ」
「よろしくレディ。ここに人間やグプ人は来そうに無いから、今の内に俺が蓄えた知識や強化した内容をレディに繋がって伝えたい。レイカ、味覚や身体の感覚に様々な刺激が今から伝わるが大丈夫か?」
「うん平気だよ!」
「ヒロシ……」
「液体窒素も伝えるからアルミシートの準備だろ?リュックから出しておくよ」
「じゃあさ、最初から2人でアルミシートを被って抱き締めて欲しいな、ヒロシ君?」
「……これで良いか?」
ヒロシはアルミシートで自分とレイカを包み、そっと前から抱き締めた。
「うん……サウス、始めて良いよ」
「分かった。レディ、管を巻き付けるぞ」
「いつでもどうぞサウス」
サウスとレディは互いに巻き付いた後にレイカに様々な刺激が高速で伝わる。
「う…わ…甘…辛…苦ッ…そんな…急に…ん…ああ…熱ッ!…わっ来た…寒い…ヒロシ
く…ん…ギュッと…し…て…」
「レイカ大丈夫だ。側にいるよ…」
「う…ん…」
「……以上だ」
「無茶をして自分を強化したのね、サウスもヒロシも…レイカ、大丈夫!?」
「はぁ…はぁ…うん平気…お腹空いたよ…」
「無事で良かったレイカ。先ずは食事をして次の行動を皆で話そう」
新しい仲間、レディを加えたヒロシ達は車内で食事を摂った後に今後の予定を話す。
「もう1度地下に戻って、盾脇中将とボサツのお偉いさんと思われる遺体を確認しておかないとな」
「しばらくは腐ったりしないから、直接持ち込んで橋本に確認して貰ったらどうだ?」
「サウスは配慮に欠けてるわね。ヒロシが常識人なのに貴方は少し粗野な面があるわよ?先ずは遺体袋を探さないとって提案しないと
…ねぇレイカ?」
「うん…まぁ…車の中に食料を満載しているからどの道、遺体を載せるのはどうかと思うんだけどねレディ…」
「座席に食料を移して、遺体をトランクに載せよう。橋本さんに確認して貰って彼の故郷に行き、潜水艇でH県に向かうで良いか?」
「食料は先に潜水艇に入れておこうよ」
ヒロシ達は車内で話し合いをザックリ済まし、補給倉庫に遺体袋は無かったので毛布数枚を代用する事にした。地下に戻り白髪でオールバック、国防軍の制服を着た男性と短髪で上等なスーツを着た男性の遺体を毛布に包み、トランクに積んで潜水艇に食料と医薬品の大半を降ろした。その後、橋本がいる民家に戻った。
「橋本さーん!戻ったよ!」
「おお!君達戻って来たか…無事で何よりだ」
「ありがとうございます。早速ですが、遺体の確認をして頂けませんか?」
「…分かった。……間違い無い、盾脇中将だな。もう1人は…知らない人間だな。いや、待てよ……」
橋本は2つの遺体の持ち物を探り始めた。
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