第35話 基地探索
「あっついねー。流石ニトログリセリンを取り込んだだけあるよ。基地の被害甚大で攻撃された場所に兵士を送る所じゃ無かったかな?」
「元々グプ人に侵略されてるんだ。僻地の基地で、大した防衛力が無かったんだろ」
「補給物資のある場所を橋本さんに詳しく聞かなかったな。燃えてないと良いけど…損害の少なそうな右から回ってみよう」
3人は車を降りて倉庫の壁際から基地の敷地を覗くと、レーダードームと航空機があった場所はボォォォォッ!と10数メートルの火柱を上げ続けていた。
「あーあー熱いし、暑い筈だよ。本当に凄い威力だったんだね…」
「サウス…」
「おう、液体窒素弾な」
サウスからドドンッ!と放たれた球体は火柱の中にフヒョンと力無く飲み込まれたと思われた瞬間にコォォォォッと冷気を撒き散らし、基地の敷地内を今度は冬に変えた。
「さっぶ……サウス、威力の強弱は無いの?」
「済まん…次からはもう少し考えて撃つ」
「昼間の陽気で少ししたらマシになるだろう…先に見回れる場所に行こう」
レーダードームと航空機の爆心地から離れた倉庫や格納庫を巡り、3人は食料や医薬品を無事に確保出来た。
「ふぅ…破壊しなくて良かったよ」
「フフッ。本当だよ。車があるから沢山積めて戻れるね。ついでに車内で昼ご飯食べようよ」
昼食を摂り終わり更に30分程冷気が収まるのを待って、ヒロシはサウスをレイカは小銃を構え破壊箇所の多い基地の左側に足を踏み入れた。
「官舎が半分吹き飛んでる…ドゥメルク大丈夫かな?」
「やり過ぎた身だから何とも言えん…」
「後は盾脇中将や護衛、橋本さんがいっていた教団の幹部が生きているかもしれない。油断しない様にしなければ…」
建屋の半分が跡形も無く吹き飛び、文字通り半壊した3階建て官舎の中に入った3人は各部屋を慎重に、丹念に見回った。
「誰もいない…爆風にやられたか…?」
「ん?ヒロシ君、サウスちょっと来て」
レイカが非常口と書かれた扉を開けると、地下へと続く階段があった。
「ドゥメルクと盾脇中将はこの下の可能性が高いな」
人1人が通れる通路の最奥には真ん中に大きなハンドルが付いた、一目見ただけで極厚と想像出来る扉があった。
「げっ…コレは開けたら不利を容易に想像できるねぇ…」
「やれるだけやってみるか…ヒロシ、扉に近付いてくれ」
サウスは管を自分の限界までぺったんこにして、扉の先を見ようと侵入を試みた。
「…………少し見えた。入って左に2人いる。液体が入った容器にドゥメルクがいた。但し右側の状況は全く分からない。中将の護衛とやらが待ち伏せしている可能性もある」
「サウスが撃ったら、怖がって出て来ないかな?」
「扉の強度を見る上でも良いかもしれないな」
「2人が言うなら、階段の手前まで下がって撃ってみるか」
ドドンッと放った球体はバゴンッ!ドゴゥンッ!と上部に当たりジョワッシュッ!と燃え溶ける音がしたが、やや凹んだだけだった。
「マジで頑丈だな。人間やグプ人に撃つと骨まで焼けるレベルのモノなんだが…」
「さっき言ったみたいに強弱を上手く調整出来ないかなサウス?」
「あの扉は燃えそうに無いから、理想を言えば扉のみを凍らせて割るかな…」
「あの場所限定で…凍らせて割る。イメージの世界だがやってみるか。ヒロシ、俺がヤバい威力で撃ったらレイカを抱えて逃げろよ?」
「了解だ」
サウスはニョキッと銃の口径を小さくして、ビー玉サイズの球体をプンッ!と扉に向かって撃った。球体はパンと弾け、円を描く様にピキピキと天井、壁、床と凍って行く。
「ヒロシ、レイカ階段を上がれ!」
ヒロシはレイカを抱えて、猛ダッシュで非常口と書かれた扉の横の部屋まで逃げた。
「さっぶい…けど、ヒロシ君の抱っこ嬉しい。
サウス、割とコントロール出来てたんじゃない?地下だけ凍らせた感じだよ!」
「そうだが、もう少し上手くならないとな。敵が凍えて出てくるかもしれないから警戒しようぜ」
ヒロシはレイカを降ろし、非常口と書かれた扉に向けてサウスを構えた。
「…………来ないな。まさか、あの凍結にも扉は耐えたのか?」
「見に行くしかないね。多少の寒さは我慢してさ…」
「地下に降りたら、威力を抑えた熱いのを1発撃っても良いな。どうだ?」
ヒロシとレイカは頷いた。地下に降りて、サウスはビー玉サイズのプンッと扉に向かって撃つと、ボアァァッ!と小さな火柱が立ち、周りの冷気や寒気を吹き飛ばした。直後にバッキィィィッ!と扉に亀裂が入り、室内が見える様になった。
「攻撃をして来ないね…」
「中を覗いてみよう。レイカは警戒してくれ」
サウスは亀裂から管を伸ばして中を見た。
「人は6人中にいるが全員倒れている。ドゥメルクは容器のお陰で無事だな」
「おー良かった!」
「サウス、ハンマーやバールになってくれないか?俺達が通れる様にしよう」
15分程、扉の亀裂の入った部分を叩いたり引き剥がしたりして何とか屈んで通れる様になった。
「ふぅ……全員、凍死かな?」
「そうみたい。皆んな脈が無いよ」
「人から情報が取れなくなったな。さて、このドゥメルクが日本語を理解しているかな…
よぉ、お前聞こえるか?」
サウスが話掛けると、ドゥメルクは黒い身体をグニャグニャと動かした。
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