第11話 ゲリラ活動2

「ヒロシの記憶にあったグローブを形にしてみたがどうだ?」


「オープンフィンガーグローブか…掴みやすいし、拳も握れて指もサウスがカバーしてくれている。人間にはパッと見、手袋に思ってくれて威圧感を与えない…最高だよサウス」


「気に入ってくれて何よりだ。近い内にヒロシが手を振れば、瞬時に変身できる位になるよ。さて…周りを見てみようか」


 言いながらサウスはグニャグニャと銃口にナイフが付いた形へと戻った。ヒロシが身を潜めていた瓦礫と壁の隙間から慎重に出て身体を起こし正面を見ると、貿易センタービルは消滅していて周囲も更地になっていた。


「とんでもないな旗艦の砲撃は…サウス、次の一手はどう考えている?」


「栄養補給して雑談をして、時間もそれなりに経ったからな…ヤツ等は敵を排除したし、何らかが原因で火災が起きたビルも破壊したから、問題はもう起きないと思っているだろうな。旗艦に直接攻撃しよう」


「本気か?堕とした偵察機はまだ3機だし、海に浮いている旗艦はここから遠い…破壊力のある物を撃てるのか?」


「偵察機をたった3機堕としただけで、海を正面に見て右側は更地になったぞ?次に同じ事をすれば左側も更地になる可能性大だ。だから一旦、港の入口位まで下がり旗艦を狙撃する。俺も銃身を伸ばして、精一杯撃つが威力はしょうもないだろう。しかし、そんな微々たる物でも攻撃は攻撃だ。きっとヤツ等は町に偵察機を多数差し向けてくる筈だ。それを叩いて旗艦の守りを丸裸にする…ヒロシの体力と機動力が成功の鍵になるがやるか?」


「旗艦が町に主砲を放つ可能性は?」


「無いと踏んでいる。ヤツ等の仕事は資源を集める事だ。主砲3発撃った時にガスなんかを大量に使っている。あの攻撃は、要は威嚇の意味もあった。俺達を怒らせると広範囲が更地になるぞ…とな。遠距離からの軽微な損傷では主砲は撃たず、偵察機を大量に寄越す可能性が強いな。貴重な資源を使っての乱発は上位種の異星人からグプ人が大目玉、というか殺されるだろうなぁ…。ぶっちゃけ、ある程度は賭けにはなるんだがどうする?」


「やろう。リスクを何も背負わない選択肢は無いだろ?取り敢えず町に戻るか?」


「よし!さっきのグローブに変形する。ヒロシは俺を使って、倉庫やオフィスの壁をブチ破りながら町に戻ってくれ。騒ぎを起こした後だから慎重に素早く行こう!」


「慎重に素早く…ね。了解した」


 ヒロシは壁をリュックを背負ったままでしゃがんで通れる穴を丁寧に作り、道に姿を晒さない様にして町と港の境目まで戻った。


「はぁ…はぁ…急いだつもりだが、大分時間を食ったな…もう夕方だ…」


「お疲れヒロシ。ここは焦らずに栄養補給だ。その後、適度に高い場所に行こう」


「ああ…」


 ヒロシは倉庫の階段に腰掛け、羊羹を食べてジュースをガブ飲みした。


「おお、糖分大量補給だな!俺も気合が入るよ。ここの倉庫は屋上に登れるな。ちょっと見てみようぜ」


「3…4階建てか………どうだ、サウス?」


「旗艦は…見えるな…よし、ここから銃身を目一杯伸ばして撃つ。ヒロシは俺が撃ったら

…そうだなぁ、斜め後方の青い看板のビルの入口に隠れよう。既に適度に壊れているから偵察機の標的になりにくい筈だ」


「あそこだな…分かった……」


「何だ?ここから飛び降りて、あそこに向かうつもりか!?」


「サウスには分かるか…その位、思い切らないと自分の能力を引き出せないだろ?」


「…そうだな。リスクを背負ってやっている事だもんな…任せるよ。ヒロシ、片膝付いて俺を構えてくれ」


「……これでいいか?」


「上出来だ」


 サウスはグニャグニャと変形して、普段の3倍程度に銃身を伸ばした。


「俺が撃ったら、即走れよ?……走れッ!」


 サウスの銃口からバスッ!と音が鳴り、合図と同時にヒロシはダッシュ。倉庫の屋上から飛び降りる時にキーンと心地良い耳鳴りがした。


(よし!賭けだったが自分を追い込めばスローに見える!ビルの入口の瓦礫に滑り込んで身を隠す…!)


 ズサーッ!と瓦礫の隙間に滑り込み、左手を見るとサウスがグニャーグニャーとゆっくりと通常サイズの形に戻っていた。


「ヒーローシーよーくーやーっーたー…!メチャクチャ速かったぞ!」


「そりゃ良かった。後は偵察機が来るかだな

…」


 ヒロシが言い終わると同時にキュンキュンと鳴る音が重なって聞こえ、多くの偵察機がこちらに飛んで来ている事が分かった。


「サウス、何機か分かるか?」


「10機以上だな…ヤツ等がこの周辺を見回って旗艦に戻る時、俺達にケツを向けた時に纏めて撃ち落とす!」


「ハハッ!下品な言い方だな相棒。キライじゃないがな」


「悪いな…俺も気分が高揚している様だ!」


 偵察機は2人がいた倉庫周辺を飛び回り、バチャチャチャチャチャ!と攻撃を加えていた。


「ヒロシ、偵察機の銃撃が終わって音が遠退き始めたら飛び出すぞ」


「分かってる…」


 数分経って銃撃音が止み、偵察機のキュンキュン鳴る音が少し遠のいた。


「今だヒロシッ!」


 ヒロシは勢いよく飛び出し、上空に向けたサウスからドドンッ!ドンドンドンッ!ドドンッ!ドンドンドンッ!とリズミカルに球体が連発して撃ち出され、2人にケツを向けた偵察機を襲った。



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