第12話 旗艦へ

 ガンッ!ゴンッ!ボンッ!ドジッ!ドゴッ!と偵察機にサウスが放った球体が次々に命中した。コントロールを失った偵察機は一斉にゴッシャアアッ!と墜落して、炎上しながら黒煙を噴き出し暗くなって来た空を更に黒くする様だった。


「全弾命中!…したが、低空から堕としたから乗っているグプ人は生きてるっぽいな。思わぬ反撃を受けない為にも確かめる必要がある…ヒロシ、大丈夫か?」


「ああ。思ったより平気だ。…しかし、あんなリズミカルに撃って良く命中させたな。正直ふざけているかと思ったよ」


「ハハハ!気分が高揚してたのもあるが、発射音はヒロシの好みに合わしているからな。狙いはちゃんと定めていたさ!」


「器用な事で…さて、見回るか」


「堕ちた偵察機の周りは火災で明るいから、負傷したグプ人よりも早く撃てるが油断するなよ?」


「ああ。しっかりサウスを構えておくよ」


 2人は偵察機に近寄り、虫の息のグプ人の頭を撃ち抜いてトドメを刺した。数人のグプ人は偵察機から降りていて、ドゥメルクを構えて応戦しようとしたが発見次第、容赦無く撃つサウスの敵では無かった。


「これで全機回ったな。黒煙を浴びない場所まで下がって少し休憩しよう、ヒロシ」


「考えたら可哀想…いや、少し違うな…哀れだなグプ人は…偵察機に脱出装置も無いなんてな…」


「上位の異星人から本当に使い捨てにしか見られてないんだ。あの損害を何とも思わない考えが地球上にとっては脅威だな…」


「その上位存在様は自ら攻めて来る事はあるのかな…?何だか、自分の手は極力汚したく無いって感じるな」


「あぁ成程…ヒロシの社会経験から、そう感じる訳だな。下請けや孫請けに仕事をやらせて、トラブルが起きても知らぬ存ぜぬの一点張りってヤツか?」


「幾ら俺の記憶を読み取っているとはいえ…

よくサウスはそこまで言語化出来るな?」


「異星人、グプ人だって常日頃戦争をしている訳じゃ無かったからな。案外、人っぽい者達が社会を形成すると色々似るモンさ。グプ人って下請けが地球侵略をしくじって上位存在が諦めてくれたらラッキーだが、なる様にしかならんだろ?俺達だけで対抗する訳にもいかんしな」


「そうだな。休憩中の与太話だと思ってくれよ…」


「おうよ。楽しい与太話は大歓迎だ!」


 2人は喋りながら建物の中に移動して、ヒロシはリュックを降ろして壁にもたれていた。


「…偵察機はもう飛んで来ないな。どうやって旗艦に近付く?やっぱり船か?」


「御名答。ヒロシが地図を見た時に港の端が舟置場と書いてあるのは目に入っていた。モーターと舵だけの仕組みのボートだったら、ヒロシでも動かせるだろ?」


「やっぱりか…今気にする事じゃ無いが、サウスはどうやって周りを見てるんだ?」


「身体の至る所から視覚は作り出せるよ。これでもヒロシに気味悪いと思われない様にしているんだぞ?左腕から人間の目玉がギョロギョロしていたら…ヤバいだろ?」


「…キッツいな。気遣いに感謝するよサウス。じゃあ舟置場に行くか」


 すっかり辺りは暗くなったが、2人は極力建物や瓦礫に隠れながら目的地に到着した。


「着いたな…。旗艦に動きは無いし、偵察機も飛んで来ない。手軽なボートがあれば……お…アレなんかどうだ?」


「小さくて明るい塗装をしていない…バッチリだな!早速、燃料と動くかどうかをチェックしようぜ!」


 そのままボートに飛び移り、ヒロシはライトを点けてモーターのキャップを開け燃料を確認。


「タンマリと入っている。ロープを外して、スターターを引っ張ればいつでもイケるぞ」


「出発だ!」


 サウスはヒロシの左手を操りロープを外してエンジンを始動、アクセルを捻った。ビィィィィンッ!と音を出して、真っ暗な海を走り旗艦に近付く。


「操縦上手いなサウス!?」


「ヒロシの朧気知識とカンでやってる!……

 そろそろ近いな…代わってくれ、銃に戻る!楽しかったぜ!」


「おう!どの辺に止める?」


「港と逆、旗艦の後方に止めよう!」


「分かった!」


 出航して10数分後、旗艦の後部に2人は到着した。


「攻撃は一切無かったな…何処から入る?」


「いざとなったら、1発ぶち込んで穴を開けるが…先ずはライトを照らして凹凸のある部分を探そう」


「分かった。……この半月状の部分、指を引っ掛けられそうだが引戸か?アナログ過ぎるだろそれは…」


「モノは試しだな。俺を構えながら、引いたり押したりしてみてくれ」


「ああ………!…開いたな…引くが正解だったよ」


「内部も敵の姿無し。ボートのロープを引っ掛ける場所は……このドアノブにしようか」


「シンプルな内部だな…地球人が作ったみたいだ…」


「グプ人も広義的に見れば、他所の惑星に住む人類だからな。生活様式は似るもんさ」


 旗艦の内部は天井に明かりが点いていて、ドアは持ち手を下げて開けるタイプで廊下の造りもシンプルに見えた。


「俺達が侵入したのに誰も来ないな…どうなっている…?」


「まさか旗艦に地球人が攻め込むなんて夢にも思わないだろうな。俺達にはチャンスだな

行こうぜ、ヒロシ。身を低くして…」


「サウスを構えるのを忘れるな。だろ?」


「おう!行こうぜ相棒!」


 2人は旗艦の中央に繋がる扉を開けた。



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