第10話 ゲリラ活動
「何から始めようか?」
「昨日、学校で使った戦法…何かに火を付けて、誘き寄せるってのが使えそうだな。その前に海のある南側の地理を把握したり、寝床を見つけないとな」
2人は昨日入った一軒家で1泊した後に学校に行く前まで寝床にしていたデパート近辺まで来ていた。
「流石に思い出深いデパートまでは壊されたくないな。もう少し、奥に入って仕掛けようか…」
「ハハハ!何ともおセンチな宿主様だ!まぁ
…気持ちは分かるな。ヒロシ、海側を訪れた事は?」
「仕事の取引で2、3度足を運んだだけだな。所謂、貿易港で観光地でも何でも無いからな
興味無かった所為か、地理が全く思い出せないんだ…済まない」
「自信なさげな気持ちは伝わっていたよ。謝る事じゃないさ…地図上で目立つ建物は何だ?」
「…やっぱり、ここからでも見える貿易センタービルじゃないか?既に半分折れているけど、円柱状の特殊な形のビルだしな」
「アレか…斜め後方か前方に身を隠せる建物があれば最高何だがなぁ」
「周りにあるのは倉庫やオフィスだな。破壊されてなきゃ良いが…」
「希望は全壊寸前の倉庫が良いな。まさかそんな場所から人間が攻撃してくるとは思わんだろうからな」
道路の端を歩き、瓦礫や壁に隠れて会話をしながら進んでいると貿易センタービルの10メートル手前まで来ていた。
「喋ってると、ここまで早かったな。ヒロシ真っ直ぐ2件目の建物の破壊具合が良い感じじゃないか?」
「……確かに折れた柱と壁の間に身を潜ませれば分からないし、これ以上攻撃が加えられる事は無さそうだな。で、どうする?」
「貿易センタービルの1番上を撃って、相手の反応を見よう。グプ人のみ、偵察機のみの少数なら全滅させる。大軍を展開されたら身を潜めてやり過ごす。ここから正反対に行って撃とう。撃った後にヒロシは全速力で、ここに戻って隠れる。やれるか?」
「勿論だ。早速始めよう」
建物の隙間を通り2人は射撃ポイントへ。ヒロシはサウスを上に構えて貿易センタービルをドンッ!撃った。
円柱のビルから火がボアッ!と燃え上がると同時にヒロシはダッシュして瓦礫の下へ。
「良い動きだ相棒!さぁ…どうだ?」
海側からキュンキュンと偵察機の音が聞こえた。
「偵察機が……3機だな。全部撃ち落とす。ヒロシ、合図で飛び出してくれ………今ッ!」
ヒロシが飛び出すと同時に間髪入れずにドンッドンッドンッ!とサウスは撃った。ドッ!バガッ!ゴシャッ!と3機の偵察機に全て命中した。
「隠れろヒロシ!」
サウスの言葉の後にヒロシにはキーンと心地良い耳鳴りがして、全てがスローモーションに見えた。瓦礫の隙間に素早く隠れたつもりだったが、時間をゆっくりと感じたので自分は鈍いと思って俯き少し落ち込んだ。
「よーくぅーやったぁぁーヒロシ!」
ヒロシの感覚が戻ると同時にトゴォォ!バゴォォッ!ズドゥンッ!と偵察機が堕ちる音がして、爆風がズアッ!と吹き瓦礫の粉を被った。
「…俺、速く動けていたかサウス?周りがスローに見えたら分からなくてさ…」
「ああ…それで一瞬落ち込んでいたのか!問題無い。とても素早い動きだったぞ!俺の声も遅く聞こえたんじゃないのか?」
「聞こえていたよ。まだ使おうと思って使える訳じゃないのと、自分が感覚をよく分かって無いから…要訓練だな」
「これから死線を何度も一緒に潜るんだ。すぐに自分の物に出来るさ…さて、偵察機は撃墜した。旗艦の出方をしばらくここで伺うとしよう」
「ああ。今の内に栄養補給しておくよ」
ヒロシが瓦礫の粉を手で払い、リュックから水を取り出そうとした時にボンッボンッボンッと腹に響く音がした。
「旗艦の主砲だ!口を開けて耳を塞げ!」
サウスに言われた通りにヒロシはすぐに動いた。瞬間、ススズッとめり込む様な音がした後にバァッオオオォォォッ!と強烈な爆音が鳴り、吹き飛ばされそうな爆風が吹いた。ヒロシは身体を丸めて耐えた。
「………生きてるな。良かった…」
「偵察機をここと逆の場所で堕としたからな…あっちの方に主砲を撃ったんだな。こっち側に撃たれたら死んでたなアレは…」
「しれっと怖い事を言ったな…どうする、周りがどうなったか見るか?」
「破壊された地形はいつでも見れる。先に埃を払って、さっきやり損ねた栄養補給をしてくれ。間を置いて、違う場所からまた攻撃を仕掛けるぞ」
パッパッと埃を払いながらヒロシは頷き、リュックから水と固形食を口にした。
「ああサウス、耳を塞ぐのは分かったが口を開けさせたのは何でだ?」
「近くで爆発が起るとな瞬間的にだが、周りの気圧が高くなるんだ。そうすると鼓膜の内と外の気圧差が大ききなって、口を閉じたままだと鼓膜が破れてしまうんだ。地球の軍隊もやってる筈だ」
「ほー…覚えておくよ」
「爆風が吹いた時に身体を丸めた判断は良かったぞ」
「サウスを剥き出しにして悪かったな」
「気にするなって。俺は形を変えられるからいざとなったら単純に硬質化でもするさ」
「硬質化…俺の手に合わせて壊して良し、殴って良しのグローブになるとかは?」
「おおヒロシの手を包んで硬質化か!良いアイデアかもしれんな。俺も素早く色々な物に変形出来る様に訓練しよう!」
サウスはグニャグニャと数秒でヒロシの左手を漆黒に包むグローブに変身した。
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