第42話 救出作戦開始
高沢のアジトから黒塗りのセダンを走らせて約30分後、教団施設の2キロ手前で簡単な符牒や暗号を教えて貰い無線テストを行う。
『こちらファーザー、聞こえるかチルド1?』
「チルド1良好だ」
「チルド2良好です。カメラはどうですか?」
『問題無い。メガネ、ドローン共に良好だ。チルド3とチルド4はどうだ?』
「チルド3良好です。これよりフロントヒルに向かいます」
「チルド4良好です。これよりバックフォレストに向かいます」
『よし、行動開始だ。必ず成功させよう』
「よっしゃやろうぜ!」
チルド1誠一の声と共にチルド3のレイカ、チルド4のヒロシは車を降りた。
「後でね……」
チルド2南田の緊張した声の後に車は教団施設へと向かった。
「配置に付こうか…ヒロシ君とサウス、また後でね!」
「ああ、レイカとレディも気を付けてな」
ヒロシとレイカは駆け足で自分の持ち場へ向かった。10分後にファーザーの高沢から通信が入る。
『ファーザーから状況を確認。報告せよ』
「チルド1、チルド2はこれより施設内に入る。チルド3、チルド4は追えてるか?」
「チルド3、追えてるよ」
「チルド4も追えています」
『メガネとドローンの映像も良好。接触開始せよ』
国防軍の制服姿の誠一が、運転席から降りて後ろのドアを開けて南田が降りた。独特の光沢がある、白の上下に身を包んだボサツの信者数人が、南田を幹部として出迎えて1人が歩み出た。
「佐藤様、遠路遥々ようこそお越し頂きました。さぁ、中を御案内致します」
「ええ、ありがとう。その前にこの施設はボサツの教えに従い、沢山の避難民を受け入れていると聞いているわ。何処にいるのかしら?」
「はい。この敷地奥に見える、3階建ての建物に一部屋5名から8名程で生活して頂いています。先に御覧になりますか?」
「……いえ、後で盾脇中将ともう1人教団幹部の方がここに訪れる筈だから、施設内を先に視察するわ。粗相が無い様にしておかないと。案内をお願い出来るかしら?」
「はい勿論です!どうぞ……」
誠一と南田、信者達は施設内部に入って行った。
『ファーザーよりチルド4、避難民がいるとされる建物は確認出来るか?』
「こちらチルド4。確認できますが、窓は磨りガラスで中は見えません。周りに人の気配無し、近付いてもよろしいですか?」
『……充分に気を付けて探ってくれ。チルド3、フォロー頼む』
「チルド3了解です。チルド4、気を付けて」
「周りに人の気配は無いよな、サウス?」
「ああ間違い無く。建物の中にしか人はいない。あそこに見える勝手口から入ろうぜ」
建物の側面の扉をサウスがグニャンとオープンフィンガーグローブに変身してヒロシがノブをしっかりと握り、ゴキャリと静かにこじ開けた。無人の廊下を確認して建物に入った。
「静かだが、各部屋に人の気配はするな。ん?1階の5部屋は殆どが女子供だな。高沢の娘と孫に1発で会えればな…あっヒロシ、そう言えば朝に写真を見せて貰ってたよな?イメージしてくれ。管をドアの隙間に入れて探す」
「了解だ。相棒」
最奥の部屋からサウスはドアの隙間に管を伸ばして中を確認した。
「いないな。次だヒロシ………いた。この部屋だな、どうする?」
「こちらチルド4、最重要パッケージを確認。
接触はどうしますか?」
『こちらファーザー。金曜日の件を話し合いたいと会話をしてくれ。通じる筈だ……頼む』
「チルド4、了解です」
サウスが腕に擬態したのを確認して、ヒロシはドアをノックすると女性が出て来た。
「はい。何か?」
「教団の者です。高沢さん親娘に金曜日の件を話し合いたい事がありまして」
「あっ、はい!高沢は私達です」
ショートボブの女性と三つ編みでメガネの女の子が立ち上がった。
「すみません。外によろしいですか?」
ヒロシは勝手口から親娘を連れて外に出た。
「高沢元少将の使いの者です。娘さんの加奈さんとお孫さんの紗奈さんですね?」
「はい…態々来て下さり、ありがとうございます」
「流石お爺ちゃんだね、ママ!」
加奈は目に涙を浮かべ、紗奈は笑顔で喜んだ。
「今、誠一さんと南田さんが施設内を護衛とボサツの幹部に化けて潜入中、もう1人が外から監視しています。…他の方達の様子はどうですか?その…洗脳なんかは…?」
「兄と南田さんが…殆ど全ての人が安全を求めて教団のこの建物に入っただけです。特に洗脳等は無いと思います。しかし、既に教団に反抗的な男性は他所に連れて行かれました」
「…他に変わった事はありましたか?」
「変わった事…ああ、今日の昼から子供達が他の施設に連れて行かれて予防接種があると聞き、人々に不安が拡がってましたが…」
「!…予防…接種…!」
高沢から緊急連絡が入った。
『ファーザーからオールチルドレン!施設に国防軍の武装した隊列が、15分の距離に接近中!チルド1と2は離脱の準備!チルド3と4は事態に備えてくれ!』
誠一と南田は返事の代わりにコンと音を立てた。
「チルド3、了解!」
「チルド4、了解。最重要パッケージは1度ボックスに戻します…加奈さん、紗奈ちゃん敵が来ました。建物の中へ戻って下さい。必ず救出しますので…!」
「はい…お気を付けて…!」
「兄ちゃん頑張ってね!」
高沢親娘が部屋に入ったのを確認して、ヒロシは雑木林に身を潜めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます