第43話 堀端襲来
「うん…綺麗にしてるわ。これなら盾脇中将と他の教団幹部も安心して視察をして頂けるわね」
「ありがとうございます!あの…お茶でも如何ですか?」
「今日は遠慮しておくわ。私も予定が詰まっているの。気持ちだけ受け取っておくわ」
「では、御見送りを…」
誠一と南田は若干早足で施設を出て、車に乗り込んだ。信者達が見守る中、エンジンを掛けて発進したが、門の手前で入って来た国防軍の四輪駆動車や装甲車、輸送トラックに道を塞がれた。空には2機の小型攻撃ヘリも飛んでいた。車を降りた誠一は四輪駆動車から降りた兵士達に一斉に銃口を向けられ、後ろから制服を着崩してニヤニヤとした男が誠一に鼻っ柱が当たる寸前まで近寄った。
「あっれー?高沢大尉じゃないっすかぁ。ここで何を?」
「…ボサツの幹部を次の場所へ送り届ける最中だ。道を開けろ、堀端中尉」
「はぁ?体制が気に食わねぇと軍を飛び出した人間がねぇ。どうせパパの元少将と手を組んで、教団施設破壊でも企んでるんだろ?って事は車に乗ってるのはパパの愛人と噂されてた南田少尉かなぁ!?」
「貴様…ッ…!」
「全部バレてんだよアホが。おい、始末しろ」
誠一は兵士達に囲まれ、太い木の下に連れて行かれて銃殺刑に処されようとしていた。
「チルド3からチルド4、出番みたい!ヘリをお願い!
「チルド4、了解だ。サウス、ヘリからだ」
「あいよ。派手にカマしますか」
「狙え……うギャッ!?」
堀端が兵士達に誠一を撃ち殺す合図を送る寸前にパパパパパパーンッ!とライフルの連射音が鳴り、兵士達と堀端は指が吹き飛んだり掌に穴が空いた。誠一はその隙に小銃を拾い、体術で兵士達を蹴散らした。
「俺の指ィィィィッ!装甲車ッ!アイツを殺せ殺せ殺せェェェェェェェッ!」
装甲車の大口径の銃座が誠一にウィィンと向いた瞬間、ビー玉サイズの球体がカンッと当たってドゥグァァァンッ!と爆発炎上、宙に吹き飛びゴッシャァァァンと落ちて、四輪駆動車を2台横転させた。それと同時に県道にヘリ2機がドッシャァァァンッ!と堕ちた。
「ひ…ヒィィィッ!な、何だコレは!?俺の部隊が…こんな…こんな…アッサリとブベジャッ!?」
誠一が堀端の顔に回し蹴りをキメた。
「テメェにはまだ聞きたい事がある…オラァ!ボサツ関係者と兵士達は跪け!チルド2、チルド3は捕縛を手伝ってくれ。チルド4は最重要パッケージと避難民の安全に気を配ってくれ。チルド1からファーザーへ、見えているか?」
『ファーザーからチルド1へ。見えているぞ…
御苦労だったチルドレン。ワシもそちらへ向かう。現地で会おう』
「南田さん銃を…大丈夫か?」
「ありがとう誠一君。大丈夫だから、さっさとコイツ等を捕縛しちゃおう!あーでも!…少将の愛人とか言われて、スゲームカつくわ!私も後で堀端を殴ろう!」
「あ、ああ…大丈夫そうだな…」
「誠一さん、南田さん!」
「レイカ!…ありがとう助かったよ。お前等こんなに凄かったんだな…」
「フフッ。お役に立てて何よりだよ。チルド3よりチルド4、そちらはどうですか?」
「チルド4よりチルド3、最重要パッケージは無事。避難民にケガは無い。そちらを手伝おうか?」
「手は足りてるよ。チルド4は引き続き警護と警戒をお願いしまーす!」
「了解。チルド3…加奈さん、大体片付いた様です。間も無く、高沢元少将もこちらに来られます」
「そうですか…ありがとうございます。あの…貴方は父の部下ですか?覗くつもりは無かったのですが、左腕から…」
「お父上には偶然出会って、皆さんの救出を手伝っただけです。左腕の件は周りの方達には喋らないで頂ければ……」
「兄ちゃん、凄いカッコ良かったよ!名前を教えてよ!」
「こ、こら紗奈!」
「コイツはな、田中ヒロシって言うんだぜ。そんでもって俺はサウスだ」
(えっ!サウス…子供に…)
「よろしくねヒロシ兄ちゃん!サウスは凄いの撃てるんだね!ドンッ!ドンッ!って!」
「おう!ありがとうな。後は色んな物に変身出来るぜ」
「おー!見せて見せて!」
サウスはご機嫌にグニャグニャと色んな形に変身して紗奈を喜ばせた。避難民達がいる建物裏の勝手口前で、ヒロシと加奈はお互い軽く会釈して、微妙な顔でお互い笑い合った。
ヒロシ達の近くに大型バイクが止まり、高沢少将が降りて来た。
「田中君、お疲れ様だな。流石はワシの孫だな…もうサウスに慣れているか」
「爺ちゃん!」
紗奈は思い切り高沢に抱き付いた。
「父さん…ありがとう」
加奈はポロポロと涙を流し、再会を喜んだ。高沢は2人を引き寄せ、きつく抱き締めた。
「貴文君に、お義父さん2人をお願いしますと言われた約束を破る所だった。本当に無事で良かった…さぁ、避難民のちゃんとした行き先を決めたり、ボサツの信者からも話を聞かなければな…ヒロシ君、南田と持ち場を交代してくれるか?適材適所と言う事でな」
「…はい。了解しました」
「ヒロシ兄ちゃん、サウスまたね!」
ヒロシは右腕で手を振り、サウスは管を掌に変身させてヒラヒラと振った。
南田と交代して捕縛した信者や兵士達、気絶した堀端を誠一とレイカと共に教団施設内の瞑想室に放り込み、小さな液体窒素の球体をサウスとレディが放って車両の炎上を鎮火させた。
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