第39話 H県上陸

「おはようサウス、レディ。H県の海岸か…」


「おはよう相棒。朝食を食べたら話をしようぜ」


「ん…おはようレディ。ヒロシ君、サウスおはよう」


「おはようレイカ。私が寄生して、短時間で強化したから疲れが残っているわね。ご飯をいっぱい食べてね」


「うん…そうする……あっコーヒーありがとう、ヒロシ君」


「ああ。レディが心配しているが、身体大丈夫か?」


「へーきヘーき!いっぱい朝食食べるから!豆煮の缶詰を開けてくれる?」


「………はい、どうぞレイカ」


「ありがとう!」


 朝食と洗顔後にヒロシとレイカはモニターを見て、何とも言えない顔になった。


「左右の港と国防軍の基地は激戦の後だな…

グプ人の偵察機や戦闘機に戦車の残骸だらけか。上陸に適したポイントがここだったって感じかサウス?」


「それもあるが、現実を一望出来る場所がここだったって感じだな」


「んー…なんか違和感があるね…何だろ?」


「水際で交戦している事かしら、レイカ?」


「それだレディ!H県はこの景色を見る限り、迎撃が早いよね?他の都市は無防備に街中まで攻撃されて、慌てて反撃しようとした後を見たから…」


「…H県の国防軍は余程優秀か、グプ人の侵略を知っていた事になるな」


「現状じゃ何とも言えないが、俺の勘は後者だな。グプ人の侵略前からヒロシやレイカにグプ人の血を接種させたりしてたって事は、侵略のタイミング予測もしていたかもな…さて、随分前から人影は無いが上陸するか?」


「ああ。何にしろ国防軍の基地やボサツの施設を見てみないと何も分からないからな」


「そうだね。先ずは海沿いの基地から行ってみよう!」


 ヒロシ達は物資を多めに持って、砂浜に上陸した。木陰や兵器の残骸に隠れながら移動して、海沿いの国防軍の基地の正門前に到着した。


「兵士はいないな。サウス、人の気配は?」


「ここでは何も感じないな。かなりやられているから、他所に移ったか?」


「中を探って何かあれば良いね。最低でも動く車があればなぁ…」


 基地内の地面は窪みだらけで、対空砲等の迎撃兵器の前には人の残骸が多数放置されていた。


「酷くやられているな…侵略を知っていた線は無しかな?」


「何ともだな…国防軍の練度はお世辞にも高く無い。知っていたとしても、グプ人の球体一斉射撃を食らえば無事に済まないだろうしな」


「グプ人の偵察機も結構墜落してるから、頑張った内かな…そういえばグプ人って、偵察機しか持って無いのかな?」


「レイカ、それはサウスが偵察機って言ってるだけよ。見た目は黒くて性能が良さそうだけど機動力や旋回能力が本当にイマイチだから揶揄してるのよ、でしょサウス?」


「ああ。攻撃力はそれなりだが、地球の制空権を取れるような代物じゃ無いな。それを知っていたから盾脇中将はあの航空機で移動してたのかもしれないな」


「そんな装備で侵略させられているグプ人て

…国防軍もそんなに強く無いし、何とも言えない気持ちになるね」


「…そうだな。気を取り直して探索しよう」


 格納庫や各種倉庫の後ろの位置にある官舎は攻撃を受けていたが原型を留めていた。司令室には目ぼしい物は無かったが、レイカが車両小隊の控え室で車のキーレスを発見、格納庫の車に翳すと黒塗りのセダンが反応した。


「おー!お偉いさんが乗るヤツだね!」


「快適に移動出来るな。有り難く使わせて貰おう」


「運転は私がしても良いかしら?」


「ああレディ。ヒロシと俺は後部座席で警戒だな」


 ヒロシ達は基地から海岸沿いを走り、港に到着した。


「迎撃兵器を展開してるね。やっぱり侵略を知っていたのかな?」


「どうだろうな…後は街中を見て教団施設に行こうか。大分内陸にあるがレディ、運転代わろうか?」


「レイカのサポートもあるから平気よ。昼食後に交代して頂戴」


 街中は殆ど破壊されていなかった。多くの高層ビルや商業施設が無傷のまま残り、道路も陥没や割れが無かった。


「海に近い場所が被害に遭ってる位で、何にも壊れてないね。あ…でもデパートやコンビニの前は汚いね」


「略奪行為があったんだろうな…人はやはりボサツの施設に避難したんだろうか?いや、こんな都市部の人間まで幾ら世界的宗教でも受け入れられないだろ…」


「そういう事も教団施設で明らかになれば良いがな。そろそろ住宅街だな、警戒しておけよヒロシ?」


「ああ…」


 3時間程移動して、ヒロシ達は小さな町の立体駐車場に車を止め昼食を食べた。


「御馳走様でした…っと…山から煙が出てない?」


「ホントだな。攻撃とかじゃなくて、焚き火や料理の類いか?」


「ヒロシ…聞くまでもないか。行くんだろ?」


「ウフフ。レイカもでしょ?」


「ああ、行ってみよう」


「うん。行こう!」


 立体駐車場から20分の距離に煙を確認した山はあった。登山口に車を止めて、ヒロシ達は足を踏み入れた。


「ヒロシ人の気配、敵意は無さそうだ」


 サウスとレディは腕に擬態。直後に3人の男女と遭遇した。


「貴方方も避難者かしら?」


「ええ、まぁ…煙が見えたものですから立ち寄ってみました」


「そうか…高地野菜のごった煮位しか無いがゆっくりしていけ」


「わぁ野菜ですか!ありがとうございます」


 レイカが人懐っこい笑顔を3人の男女に向けると警戒を解いてくれた様で、ログハウスに案内してくれた。














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