第28話 謎のグプ人

(…心地良い耳鳴りも無く、時間もゆっくりと感じなかった…サウスの狙いは正確だったが、既にグプ人達4人は後退している。クソッ

…役立たずだ…!)


「ヒロシ落ち着け。心の声と感情がダダ漏れだぞ?戦いは始まったばかりだ。レイカは隠れて攻撃を仕掛けるタイミングを待ってくれてる様だし、ヒリヒリしようぜ相棒」


 ヒロシは深呼吸して冷静になった。


「ああ相棒。所であのグプ人達は何だ?ドゥメルクを持たず、サウスが撃つと後退…洗脳が解けている!?」


「よし、ちゃんと周りが見えているな。何故洗脳が解けたか分からないが敵は敵だ。後退も出来て連携してくる分、手強い相手だ。怪我を恐れず戦うぞ!」


「ああ、ヒリヒリしようか!」


 ヒロシがサウスを構えながら柱を出るとキーン…と心地良い耳鳴りが聞こえ、ズ・ド・ド・ドッとグプ人達の武器の発射音が聞こえた。サウスがドゥゥンッ!ドゥゥンッ!と2発撃ったのを確かめて、ベルトコンベアの下に隠れた。


「よぉぉくやったぁぁぁぞヒーローシー!後2体だ!」


「ああ。向こうが殺す気で撃って来たから、周りがスローに感じられた様だ!」


 パーンッ!パーンッ!と斜め後方からライフルを撃った音がして、グプ人がその方向にズドドドドッと撃ち返している。


「レイカがグプ人を足止めしてくれてるな。音が止んだら出るぞ………今ッ!」


 ヒロシは身体を起こしてベルトコンベアの上を飛び越え、2体のグプ人がいる場所に真っ直ぐに突っ込んだ。レイカに銃口を向けていた2体のグプ人は慌ててヒロシに構え直したが、周囲がスローモーションに見えていて照準を合わせたサウスには遅かった。ドゴンッ!バガンッ!とグプ人2体は頭を吹き飛ばされ絶命した。


「いぃぃじょょおぅぅぅだぁぁヒーローシーお疲れ!レイカ、援護に感謝だ!」


「ふぅ…何とかなったな。ありがとうサウス」


「真正面から突っ込むとは恐れ入ったよ」


「本当だよ!一瞬、ヒロシ君て分からなかったから間違って撃つ所だったよ?」


(!?)


 後ろから抱き付かれたヒロシとサウスはレイカが近付いた気配が分からなかった。


「あ、ああ。撃たれなくて良かったよ」


「…レイカは本当に気配を断つ能力が凄いな。グプ人も見当違いの場所を撃ってたんじゃないのか?」


「フフッ。そうだね…割と安全に2人の援護が出来たかな。…それよりも、グプ人が来ているボディアーマーと服、それに銃は日本製だね。国防軍の精鋭が使っているヤツだよ」


「えっマジか?」


「うん。大マジだよヒロシ君。兜とフェイスマスクはグプ人のだろうけど、他は黒いけど間違い無く日本製。銃は私が使ってるヤツの発展型で威力がちょっと高いヤツだもん」


「あ、本当だ…俺が身に付けているボディアーマーと素材が違う感じだ…最初に倒した2体が本当にグプ人か確かめておくか」


「うげっ…アレ外すの?気持ち悪い顔が出てくるんじゃ…?」


「レイカには細かく話さなかったな。グプ人は人間の顔…と言うか殆ど人間だぞ」


 最初に胸元を貫き、上半身が燃え溶けた1体の兜とフェイスマスクを外すと以前、ヒロシが学校で見た褐色の眉毛と毛髪が無い顔が現れ、サウスの言った通り耳が無かった。


「あら、本当にほぼ人だね。サウス、間違い無くグプ人?」


「ああレイカ。地球の、日本製の武装をしたグプ人か…また謎が増えたな」


「奥の方を探ってみよう。何か手掛かりがあるかもしれない…」


「そうだね。あっ、武器は貰っておこう!弾も前のと互換性あるし、私もちょっとだけ戦力アップだね!」


 武器を拾いながら3人は奥に向かうとロッカールームや備品室があり、その隣の机や椅子がある多目的ルームはプラスチック性の空の弁当箱やパンか菓子を包装していたビニール、飲み掛けのペットボトルが散乱していた。


「グプ人が食べたり飲んだりしたのかな?」


「だと思う。箸を使った形跡が無いし、弁当箱を齧った形跡がある。何処までが食べ物か分からなかったんじゃ無いのか?」


「下に落ちてるペットボトルも真ん中から捩じ切ったヤツがあるな。ヒロシの言う通りかもしれないな」


「んん?そんな連中が日本製の装備を身に付けて、銃を使い熟した?なんかチグハグだね

…本当に謎だね」


「今ここで議論してもしょうがない。夜も更けて来た筈だ。今日はここのオフィスで休んで、明日ボサツの施設に行こう」


「あっサウス、液体窒素は?」


「おお忘れていた。取り込めそうな場所は何処だ?」


「言っておいて何だが、調べた方が良いな。確か気化したら相当危ない物質だった筈だからオフィスで調べて明日の朝に動こう。もうプラント内も暗闇に近くなる」


「うん。早く晩御飯を食べて、明日に備えよう!」


 オフィスの角部屋でヒロシとレイカはランタンの灯りでレーションを食べて、睡眠は所長室の豪勢なソファで取る事にした。


「サウス、見張りを頼むな。おやすみ」


「よろしくねサウス!おやすみなさい」


「任せておけ。また明日な」


(行動する度に謎が増えるな…退屈しないのは良い事だな。生き抜く目的が楽しむに変わって来てやがる…)


 サウスは少し考え事をして、ご機嫌な気分で部屋いっぱいに管を伸ばし2人の安眠を守る為に警戒した。

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