第27話 強化の続きと…

「この地域の案内板だ。医薬品系の工場は…

あるな。サウス、冷凍施設やコンテナを作るプラントはどうだ?」


「…成程な。液体窒素ってヤツか。極端な低温も有効そうだな。近い場所から回ろうぜ」


「現在地は道の真ん中だから…先に医薬品を作ってる場所だね!」


 3人は医薬品プラントに向かう。


「建物が低いからかもしれないが、街中が徹底的に破壊されてるのに工場地帯が殆ど無傷なのは奇跡だな」


「グプ人がこういった施設を人間に代わって使いたかったとか?」


「多分、何も考えて無いと思うぞグプ人は。洗脳されて操られているし、上位種が目立つ建物やインフラを破壊しろと命じただけかもな。その後、パニックになって逃げる人間達を殺した…とかだな」


「うわ…思考してない存在に殺されるなんて嫌だね…」


「そうだな……会話してたら着いたな」


 ヒロシはオフィス内にあった部署一覧表やプラント内の生産ラインを照らし合わせて、厳重にロックされた薬品保管庫を見つけた。


「心不全や狭心症の研究室横だから、ニトログリセリンがある可能性が高いな」


「おーヒロシ君の名推理だね!分かりにくい場所にあるねぇ…」


「劇薬で貴重な物だからな。外部の人間に探られない様にしているんだろう。しかし、保管庫がまるで金庫みたいだ…サウス、開けられそうか?」


「…ヒロシのやりたい事は伝わっているよ。隙間からこじ開けるのを試して、駄目だったら撃つ。だろ?」


「ああ。お願いしますよ相棒」


「やってみますよ相棒」


 サウスは厚みのあるドアの隙間に薄くした管になって入り、金庫内の鍵を解錠した。


「ヒロシの想像通り、電子ロックが掛かっているな。ここを破壊して今からこじ開ける」


 サウスは保管庫内で回転鋸に変身して、強力な磁石になっているデッドボルトを高速回転でギャリリリリッ!と破壊を試みた。


「……硬いな。通電しないと開きそうに無いぞ。内部から撃つか…ヒロシ、ドアに身体を近付けてくれ。隙間の部分には立つなよ?」


「えっ!?それ大丈夫なの?ヒロシ君が焼けるんじゃ…」


「サウスが上手い事やってくれるよ。レイカは離れてくれ。良いぞサウス」


 保管庫内からトトトンッとサウスが撃つと、ドアの隙間から煙と若干の火花が上がり腐食臭がした。数分後、グギィィィとドアが開いた。


「ゴホッ!ゴホッ!…くっさ…サウス何をしたんだ?」


「いつもの球体を雫を垂らす様に撃ったんだ。ちょっとずつ焼き溶かした感じだな」


「…ねぇ、サウスが細くなって内部に入れるなら、そのままニトログリセリンを取り込めば良かったんじゃないの?うー…涙でるし、くっさいな…」


「それがなレイカ…ヒロシも容器の表示を見ないと分からないだろうし、中にもう1つ厳重な金庫があったりするんだこれがまた…」


「流石大企業の劇薬保管庫だな。厳重が過ぎるぞ…この金庫は上手く開けないと、サウスが撃てば誘爆する可能性大だな」


「この大きさなら慎重にこじ開けたら大丈夫そうだな。…ヤスリになってゆっくり作業をするか」


 サウスは管を伸ばして金庫内に入り、ヤスリに変身して時間を掛けてかんぬきを削った。途中、ジリリリリッ!と警報装置が鳴って、レイカが通路を警戒したが誰も来る事は無かった。


「開いたな……コレは凄いな。表示を見る限り、原液に近いぞ…よくこんな物を一般企業が持っていたな」


「ヒロシ君、ヤバいって事?」


「一言で言うなら正にそれだなレイカ。俺は医療分野は素人だが振ったり、掻き混ぜたりしたら忽ちドカン!となるのは知っている…サウス、慎重に容器開けて取り込んでくれ」


「ヤバさは伝わったよヒロシ。ゆっくりと開けて取り込むから、感覚が来た時に暴れるなよ?」


 サウスは管の先を数本、鍋つかみの様な形にしてキュキュキュと蓋を開けた。瓶の中央から周りに触れない様に管を降ろして、ニトログリセリンを取り込んだ。


「……甘い?…ヒリヒリもする…不思議な感覚…だ…」


 ヒロシがニトログリセリンの感覚を直立不動で耐えたのを確認して、サウスは慎重にいつもの銃とナイフの形に戻った。


「強化完了だ。次に行こうか?」


「…考えたら、冷凍施設のプラントは予備電源とか入ってればいいがな…」


「急ぐ旅じゃ無いんだし、行くだけ行ってみようよ。思わぬ発見があるかもだよ!?」


「そうだな。行こう」


 3人は医薬品プラントを出て道路を歩く。


「……2人共、俺達が向かう場所に気配がする。人間かグプ人か分からんが警戒しろ」


「了解サウス」


「うんサウス」


 道路の端に寄って入口やオフィス、プラント内の壁を伝いながら3人は慎重に行動した。


「中に入れたな。サウス、気配は?」


「動く感じじゃ無いな。待ち構えている…のか?」


 冷凍コンテナの生産ラインの柱に身を隠した瞬間、ズドドドォッ!と音と共に周辺の機械が破壊されて、柱のコンクリートが飛び散った。


「ドゥメルクを持って無いグプ人4体だ!レイカは援護してくれ!ヒロシ、俺達で倒すぞ。姿勢を低くして前に出ろ!」


 レイカが頷き柱を盾にして、バラララッ!と小銃をグプ人達に連射している最中にヒロシは前方の自動車大の機械に走り、構えられたサウスはドドドドンッ!と球体を連射した。





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