第7話 VSグプ人
どうやって階段を降りたか分からないが、ヒロシは壁に寄り掛かって呼吸を整えた。
「ヒロシのんびりしている暇は無いぞ!リュックはどっかの教室に放り込んで、急いで反対側の壁に行け!走れ!」
ヒロシは1ーAと表示された教室にリュックを投げて、ガチャンッ!とガラスを割った。その音を探知したのかキュンキュンと音を立てて、グプ人の黒い三角の偵察機が教室の窓の外に現れた。ヒロシは廊下をダッシュ。彼を追って偵察機がバチャチャチャチャチャ!と砲撃を加え、1ーAから1ーEの教室の窓と廊下は破壊された。ヒロシは何とかシャーッ!と滑り込んで、壁に身を隠した。
「サウス!アレは撃ち落とせるか!?」
「可能だが辞めとく!ヒロシの消耗が半端ない事になる!それよりもグプ人が来る……」
サウスが言葉を言い終わる寸前でバチャチャチャチャ!と音が鳴り、2人がいる反対側の壁を壊した。
「パッと見5人…ヒロシ、左の階段の踊り場へ行け!待ち伏せして倒す!」
ヒロシは走り出しと頷きを同時にしてしまった為にガクガクと躓きながら、踊り場へ行きサウスを構えた。
「俺を構えたまま呼吸を整えろ……よし良いぞヒロシ。俺が3発撃ったら、また下の踊り場へ行け」
「…ああ」
シャリ…シャリとグプ人の足音がして下から黒い身体が見えた瞬間、サウスはドンドンドンッ!と撃った。
「ゴビャァッ!?」「ラバャビュッ!?」
2体に命中した様だった。ヒロシは下の踊り場へ。
「大丈夫かヒロシ?」
「ああ…生きてやる…アイツ等、階段を降りて来ると思うか?」
「上位の異星人からすればグプ人は使い捨ての存在だ。多分、攻撃を食らうと分かっていても、命令されて俺達に真っ直ぐ向かって来る筈だ」
サウスの言う通りシャリ…シャリと音が聞こえた。再び、黒い身体が見えた瞬間にドンドンドンッと3発撃った。
「ザダャリュッ!?」「マジャラダッ!?」
また2体に命中した様だったが、1体のグプ人がズァッ!と姿を現わしてヒロシに銃口を向けた。が、撃たずにマスクをバシュウウウ!と音と共に外した。
その顔は褐色。目と鼻、口は人間その物で違いは眉毛が無い事と額の広さから、毛髪が無い位だった。ヒロシは思わず呟く。
「人間じゃないか……」
「オマエ…ナゼチキュウジンガドゥメルクヲアヤツレル?」
「ドゥメルク?…サウスの事か?」
「このヒロシってヤツは、お前達の血を吸収しても生きている。人間に寄生した俺は最早ドゥメルクでは無い。どうする、殺り合うのか?」
「オマエ…ミタイナ…ヤツヲチキュウデカクニン…ワタシタチハ…ホロビ…ニゲロ」
グプ人はカタカタと震え始め、ヒロシに行けと言っている様に手を振った。
「ヒロシ走れ!!」
サウスの一喝にも近い言葉にヒロシは猛スピードで階段を降りて、1階の校長室へ隠れた。
「アイツ…上位存在の支配に抗っていたな。だが、抵抗虚しく敵になるな。外には偵察機
が飛んでいる…腹を括れよ、相棒?」
「ああ…ドゥメルクってどう言う意味だ?」
「全く…こんな時に気にするかね…ドゥメルクはグプ人の言葉で便利屋の意味だ。今、俺はサウスだ。忘れてくれ」
「了解、相棒。会話をして大分落ち着いた」
「成程な…良い自分の取り戻し方だ」
「何か作戦はあるのかサウス?」
「あまり作戦と呼べる物じゃ無いけどな、これだけ派手に戦闘しても相手の増援が来ない
…だから、先ずはまた4階に戻ってヒロシのリュックを取る。置いてある場所の床は抜けなかったから、まだ元の場所にある筈だ。栄養補給をして最大火力で偵察機を撃ち落とし、あの支配に抗ったグプ人を倒す。順番は遭遇が早い方としか言えないから栄養補給を確実にして欲しい」
「分かった。気配探知をよろしく」
「ああ。左腕を下げるなよ?」
2人は物音を立てない様に階段の端を這う様に歩き、4階の1ーAの教室前に辿り着いた。
「第1関門突破だな。床が脆くなっているから慎重にな?」
ヒロシは床に寝そべり、身体を目一杯伸ばしてリュックの紐を掴んで廊下で背負った。
「後は何処で食事をするかだな」
「気休めだが、窓の無い部屋や地下があればな…」
「窓の無い部屋はある…理科学室横の実験準備室だ。2階に行こう」
「よく覚えていたなヒロシ?」
「俺も学生をやっていた時期があるからな。覚えていたと言うより、記憶にあるって感じだな」
「その記憶は読めなかったな。まさか、この学校に限って準備室とやらが無いとか…無いよな?」
「…それも含めて確かめよう」
「全く…勇敢なんだか無謀なんだか…」
2人は喋りながら理科学室へ。この学校に実験準備室は…あった。ヒロシは一息吐いて薬品臭のする、この部屋の机の下に隠れる様に座り早速バランス固形食を齧って水を胃に流し込んだ。
「よし。それなりに栄養補給出来たぞサウス
…伝わっているか?」
「ああ。コンパクトで便利な食事だな、そいつは。そしてここは薬品保管庫って事か…」
「そうだな。教師が授業で使う薬品を割と厳重に保管している部屋でもあるな」
「あの簡単な鍵が付いた黒い箱がそうか?」
「ああ。サウス、興味があるのか?」
「まぁな…鍵を壊して中を見ようか」
サウスは銃口の先に付いたナイフで太い南京錠をキンッ!と切断した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます