第18話 偵察
ヒロシはスッと目覚めてサウスに挨拶。昨日の内に桶に溜めていた水で洗顔を済ませ、朝食に選んだ洋菓子を食べてコーヒーを飲んだ。
「ヒロシ、まだ薄暗いぞ?ゆっくり準備しても
良いんじゃないか?」
「目覚めが良かったからな。身体が動く内に準備するさ。明るく無い内に潜水艇を動かす方が良いだろ?」
「そうだな。ヒロシが食い終わったら行動開始だな」
ヒロシは外に出て、軽く準備運動。リュックを背負って猛ダッシュで腐臭のする住宅街を駆け抜け、線路を飛び越えて砂浜に到着した。
「はぁ…ふぅ…視界が…スローモーションにはならなかったな…」
「ある程度、命の危機を感じないとダメなのかもしれないぞ、あの力は。それよりもだ…ヒロシ、自分で気付いているか?砂浜まで走り抜けた速度は常人を超えていたぞ…しかもリュックを背負ってだからな…」
「おお…生きていく為の武器が増えたと思っておこう。潜水艇を呼ぶのはコイツのスイッチを押せばいいのか?」
「ああ。押してくれ」
約30メートル先からサザッと潜水艇が出現して、2人の前に止まった。
「ヒロシ、運転するか?」
「やらせて貰うよ。……このパネルの窪みが?」
「そうだ。そこに差しておくと充電出来る。ヒロシ的に言ったら、コレはキーレスだな。タブレットはその辺に転がしておこう」
「了解だ先生。2回目の運転だからフォロー頼むな」
ヒロシは操縦桿を操作して潜水艇をバックで海の中へ。水中でギュルンと方向転換後に旗艦が沈没した場所を目指した。
「上手いじゃないか!基本操作はバッチリだな!」
「計器類も追々覚えていかないとな…深度はどうだ?」
「極力深くだな。見つかるリスクが少なくなる。地表に合わせて潜ろう」
「了解」
順調に航行して、3時間後に旗艦が沈没したポイントに到着した。
「よし。浮上して港方面に動きがあるか確認しようか?」
「了解サウス………モニターに出すぞ」
映った光景は貿易センタービルのあった、今は更地の場所に大型ヘリが数台止まり、戦車や兵士が展開していた。
「国防軍だな…今まで何処にいたんだか…」
「ごもっともな意見だが、もう少し近付いてみよう」
「発見されないか?」
「そんな時はこのスイッチを押す。周りの波と一緒の波長を周りから出す装置だ。所謂ステルスだな。国防軍のレーダーには引っ掛からない」
「本当に潜水艇のレベルは異常だな…」
ヒロシは操縦桿を操作して、港まで20メートルの場所まで近付けた。
「海の前に立って、双眼鏡を覗いているのはお偉いさんだな。パリッとした軍服を着ているよ」
「ヒロシと同類ぽい人間は…見当たらないか…国防軍の所属では無いか?」
「サウス、ここからでも見分けが付くのか?」
「ある程度はな。ヒロシを見てると上手くは言えないが、地球人の脆弱さみたいなのを感じ無いんだ。雰囲気っていうのかな…」
「へぇ…御同類が国防軍と行動していないかもだから、カメラを動かしてみるか?」
カメラを移動させたり潜水艇その物を移動させたりして、あらゆる角度から港を監視して数十分後に半壊したコンテナの上に寝そべった姿勢で国防軍を双眼鏡で見ている人影を発見した。
「…ズームしてみよう……いたな。黒髪長髪の女じゃないか?」
「ここからじゃ性別までは分からんが、俺の同類かサウス?」
「間違い無い。感じる感覚が人間のそれじゃないな。個人で動いているのか?立ち上がって全身を見せて欲しいな。黒髪長髪しか特徴が分からん。服装も黒っぽいな…」
「動きは無いな…国防軍の何を熱心に見ている?カメラを少し引いて全体を見てみよう」
ヒロシがモニターを操作するとボートが港に接岸して何かを地上に降ろしている様だった。
「あの兵士が抱えている袋は何だ…?」
「あの袋の形は遺体だな。この周辺から拾ったとしたら…」
「グプ人か!?侵略者の解剖でもして弱点を探るとかか?」
「そうだろうな…あ、ヒロシ…アイツ武器を構えているぞ」
ヒロシがカメラを黒髪長髪の人物にズームアップすると同時にコンテナ上からヒュバッ!とロケット弾を放った。国防軍の作業していたボートに命中して、ドッバァァンッ!と兵士とグプ人の遺体を吹き飛ばした。
「振動と音がここまで伝わって来たな。アイツ何処行った?」
「コンテナの後ろの小型ボートに乗ったぞ!ヒロシ追うぞ!」
「ああ!」
ヒロシは急いで操縦桿を握り、青い小さなゴムボートを追う為に潜航させた。
「速いなアレ…見失うぞ」
「問題無い。発信機発射!」
サウスが管を伸ばしてボタンを押して数秒後にレーダーに黄色が点いた。
「相手にも気付かれにくい超小型だ。のんびり尾行しよう」
「本当に有能な潜水艇な事で…国防軍は追って来ないな」
「現場が混乱してるし、追跡に適した乗り物はパッと見なかったな。輸送用の大型ヘリに積んで来たのは戦車。ボートは知っての通り破壊された。指揮官が戦場を知らない感じだな」
「国防軍も有能な人間はグプ人にやられたのかな?」
「それか研究班だったとかかな?ボートはまだ動いているな。この先は…小島が4つあるなどれかがアイツのアジトかな…」
「そうみたいだ。1番小さい島に……止まったな。さて、どうするサウス?」
「ヒロシの会話スキルが必要なパターンになったな。地球の銃やライフルなら、ボディスーツを着ていれば1、2発は問題無い。あまりに敵対的なら俺が撃つ」
「頭を撃たれない事を祈るよ」
2人は小さな青いボートの反対側から上陸する事にした。
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